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39歳の平凡な中小企業(さつまいも製造販売)の社長!農業スキルで異世界無双!(1000PV越えありがとうございます)  作者: 一年目の平凡な中小企業の社長


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第22話:ルカと王都のマーケティング調査

「(……アイリス、愛する……アイリス……愛する……)」


 アイリスは完全に思考が停止し、その場に棒立ちのまま。脳内では、ツトムが放った殺し文句が爆音でエンドレス再生されている。


「おい、アイリス! しっかりしろ! 王様の前だぞ!」


 グライザが横から「ゆさゆさ」と彼女の肩を揺らすが、アイリスの瞳は虚空を見つめたまま、頬からは絶えず湯気が立ち上っている。もはや、物理的な揺さぶりでは帰ってこれない深淵にいた。

 そこに、さらなるカオスが追い打ちをかける。


「陛下、お話中に失礼しますわっ!」


 ルカがツトムの腕を力一杯抱きしめ、凄まじい眼力で彼を睨みつけた。


「さて、ツトム……。先ほど約束しましたわよね? 『埋め合わせ』。まずは二人で王都デートよ! 言ったわよね? 言ったね!? 証人はここにいる王様よ!!」


「え、あ、いや、デートって……今ここで!?」


「当たり前じゃない! 私の心をこれだけ揺さぶっておいて、ただで済むと思ってるのかしらぁ!?」


 王都の貧困を救いたい王様。 恋の魔法にかかったまま帰ってこないアイリス。 そして、デートの約束を盾に猛攻を仕掛けるルカ。


「…………グライザ。俺、やっぱり村に帰って畑を耕してたい」 「諦めろ。お前が撒いた種だ、ツトム」


 グライザの非情な宣告が、カオスな王の間に虚しく響いた。

 波乱に満ちた謁見が終わり、その夜。 一行は国王が手配した、王都でも指折りの三ツ星ホテルに身を寄せていた。 ふかふかのベッド、豪華なシャンデリア。これまでの過酷な旅や畑仕事からは想像もできない贅沢な空間で、ツトムは明日の予定を反芻する。


「……さて。明日はまず、王都での『ベニ・ハルーカ』のマーケティング戦略を練らないとな」


 独り言のように呟きながら、ツトムは隣にいるルカに向き直った。 約束した手前、ここで彼女を蔑ろにするわけにはいかない。彼は精一杯の「公的な響き」を込めて提案した。


「ルカ。明日、埋め合わせも兼ねて……二人で王都の視察に行こう。市場の動向や民の様子を見ておきたいんだ」


「視察」――ツトムなりに照れ隠しを含んだ言葉だったが、ルカには全く別の意味に変換されたようだ。


「ツトム! それって、デートよね。デート!!」


 ルカの顔がパッと花が咲いたように輝く。先ほどまでの嫉妬の嵐が嘘のように、彼女は子供のような無邪気な笑みを浮かべてツトムの手を握った。


「埋め合わせなんだから、仕事の話は抜きよ? 王都で一番おしゃれな場所で、一番甘いものを食べさせて……期待してるんだから、デート!」


「いや、だから視察……」


 ツトムの反論は、ルカの弾けるような笑顔にかき消された。

 こうして、王都救済の足がかりとなる「マーケティング(という名のデート)」の幕が開こうとしていた。


「……うーん。まぁまぁ美味しいけど、やっぱり甘味は足りないな……」


 王都で一番と言われる菓子店でスイーツを口にしたツトムは、わずかに眉を寄せた。

 魔王の呪いで貧困に喘ぐこの街では、砂糖はかね以上の貴重品なのだろう。


「そうね。これなら、私たちの『ベニ・ハルーカ』の方が、ずっと濃厚で甘くて美味しいわ!」


  ルカも力強く頷き、二人は確信を深めて顔を見合わせた。この街に足りないのは、この一口で幸せになれる「甘さ」だ。それなら、あの黄金色の芋は、間違いなく王都を救う至宝になる。

「よし、次は卸売市場の方を――」 ツトムが視察を続けようとした、その時だった。

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