2話:駄女神が仲間に!?
ご覧いただきありがとうございます。
本作は全年齢対象の[異世界ファンタジー]です。
短いお話ですが、お楽しみいただければ幸いです。
「ルカ……さん。いや、ルカ!」
呼び捨てにすることに一瞬の躊躇を覚えたが、交渉の場では対等、あるいは優位に立つのが鉄則だ。
僕は、事故の衝撃から奇跡的に握りしめていた黄金色の塊――茶色の包みを、スーツのポケットから取り出した。
「条件がある。この『べにはるか』の最新品種の焼き芋を君に一つ譲る代わりに、付与する能力を二つに増やしてほしい」
「えぇぇぇぇぇ!? ダメよ! 神様のルールなんだから……そんな簡単に変えられるわけ……って、何その良い匂いは……」
包みを開けた瞬間、蜜が溢れんばかりの焼き芋が姿を現した。 ルカの鼻がピクピクと動き、今にもヨダレが零れ落ちそうだ。
「これはただの芋じゃない。日本さつまいも学会でも激震が走った、究極の糖度を誇る逸品だ。一口食べれば、君の神としての格すらも上がること間違いなしだ」
たまらず、ルカの手が茶色の包みへと伸びた。
「ほ、ほんとに……? もぐもぐ……ふぁっ!? 何これ、甘い! 甘すぎる!! もはや飲み物よ! 美味しすぎる!!」
女神の威厳はどこへやら、ルカは頬張った芋の甘さに目を回している。 気のせいか、彼女の周囲に黄金色のオーラが立ち昇ったような気さえした。
「さあ、決まりだ。包みに入った芋を全てやろう。それで付与する能力を二つに。……これならルカも損をしない、最高の提案だろ?」
「わかったわぁ! 二個にするから、早く、早くその焼き芋をちょうだいぃぃ! ツトム、交渉成立よ!」
「……よし、交渉成立だ。僕が求める二つの報酬を伝えよう」
焼き芋の蜜で口をベタベタにしながら、ルカが何度も頷く。 「ふんふん! なんでも言って! 今の私なら、だいたい叶えてあげられる気がする!」
これぞ食の力だ。僕は確信を持って、異世界での事業展開に必要な『リソース』を提示した。
「まず一つ目だ。――ルカ、君自身を僕に貸し出してもらいたい」
「……へっ?」
ルカの手が止まる。その顔はみるみる赤くなり、口元に残った芋の欠片がポロッと落ちた。
「え、えええええ!? わ、私!? それってつまり、愛の告白……!? い、いくら焼き芋が美味しいからって、神様を愛人にしようなんて、そんな……! でも、ツトムさん渋いし、不潔じゃないし、無しじゃないかも……」
「勘違いするな。僕が求めているのは『役員』としての君だ」
僕はこめかみを押さえ、ビジネスの基本を説くように言葉を重ねた。
「見知らぬ土地で事業を興す際、最も重要なのは『現地に精通したパートナー』と『社会的信用』だ。この世界のルールに詳しく、かつ『神』という絶対的なブランドを持つ君が横にいれば、窓口業務や土地の交渉がスムーズに進む。……違うか?」
「ま、窓口……業務……? 愛人じゃなくて、秘書とかマネージャーみたいな扱い……?」
「そうだ。君という『神のリソース』を僕の経営下に置く。これが一つ目の条件だ」
一瞬でルカの妄想が打ち砕かれたようだが、構わず僕は続ける。 経営者にとって、人材確保こそが最大の投資なのだから。
「さあ、焼き芋の続きが食べたいなら、契約書(その書類)にサイン……いや、承認してくれ。それで二つ目の能力の話に移ろう」
「うぅ……なんか納得いかないけど、この焼き芋の誘惑には勝てないわぁ……! わかったわよ、契約成立! 私は今日から、ツトムの専属女神兼、事業パートナーよ!」
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次回更新は一週間後の予定です。




