第14話:キュアリング完成とジミーナ村救済
グライザの技術とルカの魔法、そしてアイリスの怪力が結集した「キュアリング倉庫」は、ジミーナ村の誇りとなった。 数週間の熟成期間を経て、ついに僕は重厚な石造りの扉を開いた。
「さあ、開栓ならぬ『開庫』だ。熟成された『ベニ・ハルーカ』の真価、味わってもらおう」
中から溢れ出したのは、これまでの焼き芋とは次元が違う、濃厚で芳醇な甘い香りだ。 僕は完成したばかりの芋を二つに割った。
「なっ……なんだこれは!? 中から黄金色の液体が溢れているぞ!?」
アイリスが叫んだ。その断面からは、キャラメルのように粘度の高い「蜜」がじゅわりと滴り落ちている。
「これが熟成の力だ。デンプンが糖に変わり、中まで蜜で満たされている。……さあ、食べてみてくれ」
三人が一斉に口に運んだ。次の瞬間、広場に静寂が訪れた。
「……ん、んんんっ! あ、甘い! 甘すぎるわ! これ、本当にお芋なの!? まるで極上の高級菓子を食べているみたい……!」
ルカが目を回して、その場にへなへなと座り込んだ。
「こ、これほどの美味、王都の宮中晩餐会でもお目にかかれまい。舌の上で溶けていく……私は、私はもう、これを知る前の自分には戻れぬ……!」
アイリスは頬を押さえ、騎士としての威厳を完全に忘れて恍惚の表情を浮かべている。
「……へっ、これだけの施設を作らされた意味がようやく分かったぜ。この蜜の量は、適正な温度と湿度の管理があってこそだな。社長、あんたの設計は正しかった。これはもはや芸術品だ」
グライザも、職人として納得の笑みを浮かべて芋を頬張った。
僕はその光景を眺めながら、村長と村人たちに向き直った。
「いいか、これで仕組みは完成した。寒くなってきたらこの倉庫に芋を貯蔵する。そして春、暖かくなったらこのキュアリングされた種芋を出し、再び苗を取って植える……。このサイクルがある限り、この村の畑が絶えることはない」
「おおお……! 勇者様、ありがとうございます……!」
村人たちが歓喜の声を上げ、抱き合って喜んでいる。
僕は隣で満足げに芋を食べているルカの肩に、そっと手を置いた。
「……ルカ。見てくれ。ついに、ジミーナ村を完全に空腹から救うことに成功したぞ」
「……っ。……そうね、ツトム。あなたの執念が、本当にこの村を救っちゃったのね」
ルカは口いっぱいに芋を頬張りながら、僕を見て最高の笑顔を見せた。 経営者として、これ以上の「報酬」はない。
(不毛の地から、最強の輸出拠点へ。……さて、次は「外の世界」へこの黄金の蜜を届ける番だ)




