第55話「新たな爆弾」
美鈴ちゃんに、責められるように釘を刺された翌日のこと――。
「むぅ……!」
公園に現れた佐奈ちゃんが、頬をパンッパンッに膨らませていた。
いつもは笑顔で現れるので、俺は少し戸惑ってしまう。
「佐奈ちゃん、どうしたの……?」
ベンチに座っていた俺は、佐奈ちゃんの体に手を伸ばして抱き上げ、自分の膝の上に佐奈ちゃんを下ろす。
「おにいちゃん、ごはんたべにこなかった……!」
すると、佐奈ちゃんはペチペチと一生懸命俺の胸を叩いて抗議をしてきた。
どうやら、昨晩佐奈ちゃんたちの家に食べに行かなかったことで、拗ねてしまったようだ。
いや、でもあれは……美鈴ちゃんと、凄く気まずい空気になったから……。
あそこまで熱がある状態で迫られた後に、家にお邪魔する度胸なんて俺にはなかった。
――俺としては、家に行かなかったのはそれなりの理由があったわけなのだけど、寝ていた佐奈ちゃんはそのことを知らない。
そして美鈴ちゃんも、わざわざ話してはいないようだ。
というか、説明できない、というのが正しいのかもしれないが……。
そんな美鈴ちゃんは、現在顔を赤くしながら、チラチラと俺たちの様子を窺っている。
普段に比べて少し距離が空いているので、昨日のことを引きずっているらしい。
昨日彼女は普段の落ち着いた態度からは考えられないくらいに、熱がこもっていたので……冷静になって、恥ずかしがっているのだろう。
いや、ほんと昨日の彼女は……鬼気迫るものがあったからなぁ……。
「ごめんね、用事があったんだ」
事情を説明すると、佐奈ちゃんのヘイトが美鈴ちゃんに向く可能性があるので、俺は笑顔で誤魔化してみた。
「むぅ……! やくそく、やぶったら、だめ……!」
当然、ちゃんと説明をしていないせいで、佐奈ちゃんは納得してくれない。
それどころか、更にペチペチと俺の胸を叩いてきている。
よほど根に持っているようだ。
まぁ、拗ねられているところはちょっと困るけど、それだけ懐かれているということでもあるので、嬉しくもあった。
一つ言えることは、やっぱり佐奈ちゃんはとてもかわいいということだ。
「ごめんね」
「んっ……」
謝りながら頭を優しく撫でると、佐奈ちゃんは途端におとなしくなる。
撫でられるのが好きみたいだから、これで溜飲が少し下がったのだろう。
「…………」
佐奈ちゃんの頭を撫でながら甘やかしていると、美鈴ちゃんが無言で隣に座ってきた。
しかし、距離はやはり空いており、チラチラと俺のほうを見ている。
昨日が昨日だっただけに、気まずそうだ。
「ねぇねぇ、おにいちゃん」
美鈴ちゃんの様子に気を取られていると、佐奈ちゃんがクイクイッと俺の服を引っ張ってきた。
「何かな?」
甘やかしていることで機嫌が直ってきたな、と思いながら俺は膝の上にいる佐奈ちゃんに再度笑顔を向ける。
「ごはん、まいにちさなのおうちでたべよ?」
だけど、油断していたのもあり、とんでもない無茶ぶりという名の爆弾を放り込まれて、俺は思わず固まってしまった。
ついにここまで求め出したか、この子は……。








