【閑話:いろいろな答え合わせ】
涙にくれる時間はそれほど長くはなかった。
最初に立ち上がったのはラウマだった。
もっとも大きな声で泣いたので、悲しみを流すことが出来たのか瞳にはしっかりした光。
「みんな‥‥立ち上がろう」
ラウマの静かな声にユアも力をもらう。
ぎゅと一回だけ抱いてエイシスを放す。
アミュアとノアを抱き上げぎゅうと抱き締めるユア。
二人が自分で立ち上がれた所で手を放し、最後にラウマを抱きしめた。
力をこめ、ラウマの呼吸が止まるくらいの強さだった。
そっと放し見つめるユア。
ラウマもしっかりとユアを見つめ返した。
「この先にきっと魔王がいる‥‥ペルクールから聞いていた制限時間には間に合ったと思う」
すっとアミュアをみるユア。
「アミュア‥‥アグノシアを解けるだろうか‥‥」
「?うん‥‥時間は少しかかると思うけど‥‥どうして?」
ユアが指差す先でアグノシアにとらわれているのはレヴァントゥスだった。
「?!」
「きっと影獣達が吸い込まれた時にレヴァントゥスを覆っていた影も吸い出されたんだと思う」
ユアは皆が女神を見てその喪失に嘆いている間、目をそらした先にレヴァントゥスを見つけていたのだ。
「別に‥レヴァントゥスを助けたいわけじゃないけど‥‥セリシアがかわいそうだからね」
素直じゃないユアの言い方に皆がクスっと笑って、喪失の痛みを和らげた。
「アグノシアの解除には三種複合が必要です」
「えええ?!」
「まさか‥‥?」
アミュアはまた波動を起こすための印を指で結ぶ。
中指と薬指だけ垂直に曲げ残りの指は広げ、手のひらを上に向ける印だ。
アミュアの目がラウマとエイシスをねっとり見つめる。
「ヤりましょう!」
「‥‥うん」
「クスン‥‥はぃ」
すっと入ってきた方向に指差し、ユアとノアに告げる。
「少しあちらの階段の下までさがってください‥‥アグノシアの封印解除は繊細な作業なのでじゃまになるのです。呼ぶまで来てはいけません‥‥音も聞かないでください」
ユアとノアは目を合わせる。
「ええ‥‥またなの?」
「みてるとダメなの?音も?」
「ダメ!」
「みちゃいやです‥聞くのも‥」
「ユア‥ノア‥‥おねがいです‥‥繊細で大事な作業なのです」
「うん‥」
「わかった」
そしてユアとノアが見えなくなってから、アミュアはくるりと振り向いた。
にんまりと笑顔になるアミュア。
「安心してください‥‥今度はゆっくり時間をかけて同調しますから‥‥ふたりの魔力的負担は少ないです‥‥魔力的負担は‥‥」
「ええと‥‥魔力以外の負担は?」
「大丈夫です!」
「アミュアさん‥‥あの同じ方式で同調するのですか?」
「もちろんです‥‥あぁ‥‥エイシスは前後選べますね?どちらがいいですか?」
なぜか楽しそうなアミュアがそこには居るのだった。
シュピっと二本の指が印を結び、輝く波動が再びアミュアの指を揺らす。
ビイイィィィィィ!!
先程より元気な波動がみなぎるのであった。
思っていた以上に時間がかかり、ユアもノアもヒマになってきた。
階段を降りた所まで来ているので、上の気配はまったく解らない。
「ねえ‥ユア」
「なぁに?」
もじもじしたノアが階段に座るユアの横に来る。
「ただ待っているのはさみしいから‥‥ノアを可愛がるといいよ?」
ユアはびっくりした顔。
「ええと‥‥どうゆうに?」
ぽっと頬をそめるノア。
こっそりユアの耳にささやく。
「だっこして‥‥」
「いや誰もいないし耳打ちしないでもいいよね?!」
もじもじのノアが耳まで真っ赤になる。
ユアは微笑んで手を広げる。
「おいでぇノア」
「うん!」
ぽんと前抱っこになるノア。
手も足もユアに抱きついて牡蠣のようにへばりついた。
「えへへ」
ノアが嬉しそうにぎゅうっとユアに抱きつく。
「なんだよぉ‥そんなに甘えん坊さんだった?ノア」
よしよしと髪を撫でて上げるユア。
遠くからアミュアの呼ぶ声がした。
(もーいいぃーよーー!)
「おや?いいみたい」
ユアがノアを下ろそうとするが、ノアは必死にしがみつく。
これからいろいろおねだりしようと思っていたノアはぷっくりふくれていた。
「ノア?呼んでるからいってみよう?」
「うん」
ユアは悟った。
これは下りる気がないと。
ひょいと重さを感じさせず立ち上がるユア。
「じゃあそのまま連れて行っちゃうよ?」
「うん!れっつごぉ」
クスっとユアが笑う。
「もう‥みんなにわらわれちゃうよ」
そういいながらもとんとんと階段を登っていくのだった。
「レヴァントゥス?!」
そこにはアグノシアはもう無く、レヴァントゥスが青い顔で倒れていた。
アミュアが膝枕して横になっているレヴァントゥスが薄目を開けた。
「ゆ‥あ‥‥」
レヴァントゥスは相当まいっているようで、身体も動かないようだ。
「ユアがもどるまでに色々尋問しておきました」
なぜか不機嫌なアミュア。
ノアは反比例するようにご機嫌でへばりついている。
「どうやらこの先にいる魔王はオリジナルという、大昔のばけものらしいです」
そうして不機嫌ながらもレヴァントゥスから引き出した情報を共有していく。
なぜかラウマとエイシスは抱きしめあい、とても仲良しな雰囲気。
共同作業で親睦が深まった様子だ。
アミュアとも距離が近い。
(複合魔法は三人の仲をよくしてくれるのかな?)
などとユアは考えていた。
「なるほど‥‥それで魔王を騙して油断させると‥‥いい作戦ですラウマ」
ラウマがノアとラウマに女神の服を着せて、オリジナルを騙そうと考えた。
「レヴァントゥスがいうにはこーど?とか言うもので女神すら操るそうです」
「それはアミュア達には効かないの?」
「はい。オリジナルに作られたものは逆らえないそうです。セルミアのレプリカであるセリシアも逆らえなかったようですが、レヴァントゥスは平気だったようです」
「まあレヴァントゥスは捕まって、けちょんけちょんにされていましたが」
アミュアに続き、ラウマもレヴァントゥスには辛辣だ。
なにか女神に恨まれることでも過去にしたのだろうかと、ユアは心配になる。
「レヴァントゥス‥‥あとで拾いにくるから寝ててね」
そういってこてんとアミュアはレヴァントゥスを地におろした。
そして5人とも振り返ることはなく進んでいった。
さらばレヴァントゥスと心に唱えながら。
(さらばとかおもっていそうだな‥‥クスン)
レヴァントゥスの内心はかなり正確にことをとらえていた。
ちなみにレギオトゥニスの崩壊時に、セリシアに泣きつかれてレヴァントゥスを回収したエイシスが無事地上に二人を飛行魔法で運んだ。
もうレギオトゥニスの妨害がなかったので、問題なく飛んで降りられたのだった。




