【第87話:最後の円環】
黄金の時間で固まっていた三姉妹が動き出す。
「ゆあああ?!!」
「あれ?いないよ?」
「ユア?!どこお?!」
エイシスはこっそり回り込み、セリシアを抱き上げ下がっていく。
アミュアの瞳がアルディオスを捉える。
ぶらんぶらんしている辺りをビシっと指さした。
「そこにいる!!」
指さしたアミュアの瞳にすみれ色の光りが宿る。
「‥‥本当だ‥‥ユアどうしたの?」
ノアの髪は既に女神ノアの色。
白銀に燃え輝いている。
「‥‥あぁユアそこにいるのね?!」
ラウマは黄金の波を背に流し一歩を踏み出す。
女神二人が失われ、分霊であった三人が新たな女神となり変わっていた。
『原初の影ラウマの眷属‥‥いや‥‥引き継がれし魂の器か?』
漆黒の魔王アルディオスの前に進み出る三姉妹。
いや今ではそれは三柱の女神なのだった。
「ユアを返して!」
「ユア‥起きて」
「取り戻すのよ‥‥」
ごうごうと神意を撒き散らす三女神に魔王達ですら怯む。
「‥‥円環よ」
「わかった」
「ユア‥‥」
アミュア達は手を取り合う。
『まて?!何をするつもりだ』
アルディオスをして慌てる素振り。
オリジナルにより作られ、万年の時を超えた影は真なる女神へと至っていたのだ。
瞬時に黄金の円に溶け崩れる三人。
まばゆい光りがアルディオスを包もうとする。
「アルディオス!」
ゼルディアスが抱きとめ円環から引き出す。
神なる円環を断ち切る術すらこの魔王には有るのだ。
「させない!!」
天空のテラスに大空から舞い降りるもう一人。
レギオトゥニスから天空の権能を引き継いだカーニャだ。
黄金の翼を打ち振り、そとから円環に魔王を押し込む。
「これで終わらすのよ!幸せになるんだから!!」
黄金の翼が魔王二人を包み、女神の円環に収めた。
そして黄金の時間が再度訪れる。
//"綺麗なものだけで作られた世界は、美しいものになるかい?"
ーーーちがう‥‥綺麗じゃないものだってあたしは愛おしい!美しいと思うよ!
ユアの声がアルディオスの漆黒の下半身から響く。
//"私たちは追われてきたのだよ","そしていつの日か帰りたいのだ"
ーーーわかるよ!悲しく辛い旅の果だった‥‥最後の望みとすべてを犠牲にしたんだ!
ユアはアルディオスと一体となり、その記憶をすべて引き継いでいた。
その悔しさ、悲しみ。
星星の彼方に失った全てはユアの痛みとなっていた。
//"諦めるわけにはいかない”,"星々の合間に数多の想いをこぼしてここまで来たのだから"
ーーーいいよ‥‥あたしが引き受ける。その思いも全部背負うよ。
ユアの中にその使命がやどる。
ーーー共にあの彼方に行ってあげる。あたしが一緒に行けばこの世界は救われる‥‥
ユアはついにその決断をしようとする。
「いやよ‥‥いかないでユア!!」
ーーーアミュア‥‥
「ずっと一緒って約束したよ‥‥」
ーーーノア‥‥
「まだ‥‥わたしの想いをとどけていません‥‥」
ーーーラウマ‥‥
「ユア‥‥それでみなが幸せなの?これが結末だと言うの?」
ーーーカーニャ‥‥
アルディオスの下半身に黄金の輝きが発せられる。
黄金の世界が再び黄金の輝きに満ちていく。
ーーーごめんね‥‥あたしにはまだ行けない‥‥もう少し時間をちょうだい‥‥まだ答えを持っていないの‥‥探し続けると約束する‥‥
//"もういいのだ勇者よ”,”ありがとう我らの想いを汲んでくれて”
//"円環の中に雷が満ちる”,”時の果てでまた会おう”
黄金の時間が終わり、すべてが動き出す。
ごうごうとレギオトゥニスの崩壊が始まる。
核となるものが抜き取られて、姿を保てなくなるのだ。
暗闇を広げていた雲は速やかに力を失い散り消えていく。
落下していくレギオトゥニスの中から黄金の円環が浮かび上がる。
黄金の翼が描く円の中、三本の封印たる円環が閉じていた。
円環が守るのはユアの白い身体だ。
もともとユアの身体にあった三本の封印は失われ、アルディオスだったものはユアにもどった。
青い星を背景に浮かんだこの高さで、白いユアの身体が輝き新たな円を3本生み出す。
直行する三本の円が浮かび、ユアに光を与えられ力を増していく。
ーーーユアよくぞ成しました。
それは懐かしくも頼もしい女神の慈愛の声。
『おかあさま!!』
三本の水平の円環から声がそろって響いた。
ーーー娘たち‥‥ほんとうに頑張りましたね‥‥わたくしは嬉しく思いますよ。
ーーーわたくしからも祝福を、ノアよく頑張りました。
「おかあさま?」
ーーーそしてユア。よくぞ守りとおした我が雷を。
三本の円環に三本の円環が交わり球を成した。
黄金の羽がそれを包み地上へと下りていく。
「かえりましょう‥‥私達の世界に‥‥私達の家に‥‥」
カーニャの声が響き、黄金の一塊は地上を目指した。
ちょうど星をまわった太陽の最初の光りが届く。
久しぶりに光を受け輝くミルディス公国の地に朝日が届く。
失われたものが多すぎて、その新たな日の出を見られたものは限られていた。
その旭日の光も祝福に満ち下りていく黄金を霞ませはしないのだった。




