表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/109

【第83話:太古の昔から継がれるもの】

どれくらいそうして何も出来ず見守っていただろう。

セリシアの涙は止まったが、思考も止まってしまっていた。

レヴァントゥスは動くことはなく、ただ影を揺らし目を赤く光らせているだけだった。

プリズムのリボンは何重にもレヴァントゥスをくるみ、そこで何が起きているのかうかがい知ることは出来なかった。


突然また女神ラウマの神威が届く。

(いけない!逃げなさいセリシア!)

女神ノアの神威ももれてくる。

(そんな‥‥どうやってレギオトゥニスの結界を通るの?)

ビシシっと空間ごと悲鳴を上げて、パァアンとガラスが砕け散った。

ガラガラと破砕されたカラスの音に靴音が交じる。

セリシアの入ってきた入口と反対側から歩いてくる者がいる。

コツコツと音がして、背の高い男が現れた。

長く裾を引き、ひるがえるマントの裏地は真紅。

全身を黒い甲冑とチェニックで覆い、ぶんと長い尾が振られた。

漆黒の王冠から流れ落ちるのは黄金の波打つ髪だ。

セリシアに背を向けた男は女神達を見ていた。

「なるほど‥‥探しても見つからないわけだな‥‥すでにここに隠されていたのか」

間の分厚いガラスが全て砕け散り、女神達を始めて直視するエリシア。

やはりその容姿はエリシアのよく知る二人に似ていたが、瞳の輝きと神威が違う。

「ただの‥‥魔王ではありませんね?」

りんとした女神ノアの声が聞こえた。

声までセリシアの知る、あのノアのものだった。

「くく‥‥聞いた通りか?‥‥女神様らしいな?ノア」

はっとする気配が2柱の女神からする。

「そ‥‥そんなはずは‥‥」

女神ラウマのふるえる声が流れる。

「‥‥まあいい‥‥お前達はレギオトゥニスでいただくとするか」

そう言うとくるりとセリシアをみる男。

「おやおや‥‥探したよセルミアのレプリカよ‥‥」

こつこつと近づいてくる男。

「私はゼルディアス‥‥最後の魔王。もう魔王はいらぬからな。最終魔王ゼルディアスとなるわけだな」

そういうと、このイレギュラーの魔王はセリシアの腕を取った。

「立て‥‥セリシアといったか?個体名は」

ビクンとセリシアの身体に電気が流れたようなショックがある。

「あ‥あ‥」

それは調整や再調整の強制力とも違う、決して逆らえぬ力。

魂の奥に押された烙印の強制力。

「ついてこい‥‥お前の役目を教えてやる」

手を放されてもセリシアには逆らえない力が働く。

「あ‥いやぁ‥な?」

勝手に手足が動き魔王に追従して歩き出すセリシア。

それ以上セリシアをちらりとも見ずに、女神の前にくる魔王ゼルディアス。

「ノア‥‥ラウマ‥‥お前たちはすでに一度役目を果たしただろう?覚えていないのか?」

くいと不敬にも女神ラウマのあごをもちあげる魔王。

「や‥‥やめて‥‥」

真っ赤に顔を染めた女神ラウマの瞳に涙が流れる。

「ふふ‥‥ちゃんと覚えているではないか‥‥」

くくくと笑い声を残し立ち去る魔王ゼルディアス。

セシリアは表情で逆らうが、身体は勝手にゼルディアスに追従して歩き出す。

「あ‥いや!?‥たすけてえ?レヴァントゥス!!_」

セリシアは恐ろしい予感を体中で感じた。

あの神威にあふれていた清浄な女神ラウマが、まるでただの少女のように泣いているのだ。

女神ノアも驚愕の瞳で魔王を見送っている。

「いやああぁああ?!」

セリシアの悲鳴を残しドアが閉じた。

残された女神ラウマは真っ赤な顔でぶるぶる震え泣いている。

「だいじょうぶ?ラウマどうしたの?」

ふるふると震える顔を女神ノアにむける女神ラウマ。

「あれは‥‥魔王などではありません‥‥‥‥私達の‥‥」

ぱくぱくと口は動くのに、声を出せない。

女神ノアはそれだけで理解してしまう。

「ば‥‥バカな‥‥全て滅んだはずでは?」

女神ラウマはぶんぶんと首を振り続ける。

ちいさな涙の粒が飛び散った。

「間違い‥‥ありません‥‥コードに直接触れてきました‥‥声も封じられるところでした」

やっと女神ラウマの声が出るようになった。

「名前を呼べなくされたようです‥‥ノアは大丈夫ですか?」

「ええ‥‥まさか‥‥そんな‥‥」

こくんと女神ラウマは頷いた。

女神ノアもまた封じられたように言葉を出せなくなった。

あまりに予想を越えた事態に。

女神ラウマのかすれた声が漏れてくる。

「だめだわ‥‥来てはだめ‥‥ユア‥‥」

女神ラウマの瞳にまた雫が結ばれた。




そっとソファに座らされたカーニャは、父たるレオニスに視線を据える。

「お父様‥‥危ない所をありがとうございます‥‥ご説明いただけるのですか?」

カーニャはこのレオニスが本物だと疑わない。

容姿だけではなく、魔法士であるカーニャは魔力も読み解く。

それは間違いなくレオニスの魔力の延長線上にあるものだった。

「だいぶ回復出来たようだね‥‥よかった」

カーニャは自己分析を急ぎ行う。

(たしかに‥‥痛みも神経のダメージも治っている)

結界を強制崩壊されるまで維持したので、破裂したショックをそのまま自身で受けてしまったのだ。

落下するカーニャは、常人ならばショック死するだけのダメージを負っていたのだ。

「時間はあまりないようだ‥‥かいつまんで説明しよう」

そういってレオニスは自身の生い立ちから始まる長い旅を、僅かな言葉に乗せ語った。

太古の昔にオリジナルと言われる存在に作られた6人の王。

その一人が自分で、天空の支配を権能として与えられ、その本体はレヴァントゥスというこの船だと。

敵の攻撃で滅びかけたオリジナルは、最後の手段としてレギオトゥニスを隠した。

レギオトゥニスが居れば星を渡り、新たな世界を目指せるからと。

特殊な空間魔法で本体をレオニスの中に封じ、人の世に紛れて隠したのだ。

レオニスは長い時の果で、エリセラに出会い恋をしたのだと。

「エリセラは巫女だと知っているかい?」

カーニャは祖母から聞いているので頷いた。

「そうか‥‥エリセラと二人で過ちを犯しカーニャとミーナを得たのは‥‥私の存在を隠すためなのだ」

カーニャは断片から結論を見出してしまう。

「直接お母様とお父様の子として生まれれば、レギオトゥニスの気配を持つから?」

レオニスはどう話そうかと悩んだことを先に娘に言われる。

「カーニャ‥‥済まなかった‥‥その通りだ。私はエリセラに赤子を抱かせてあげたかったのだよ」

カーニャはぽろぽろと涙を流す。

「お父様‥‥ではお母様への愛は偽りではないのですね?」

レオニスは沈痛な面持ち。

「そうだ‥‥それだけは真実だと約束しよう‥‥わが権能レギオトゥニスの名にかけて」

カーニャはにっこりと笑う。

涙はこぼしたままだが、安心したような微笑みになる。

「うれしいですお父様‥‥カーニャはやっとすべて腑に落ちました」

そう言うとそっとレオニスに抱きつくカーニャ。

「愛してくださって‥‥私をお作りいただけたのなら‥‥どんな手段でも私は嬉しいです」

レオニスの胸でそっと涙を落とすカーニャ。

12の歳から8年かかって親子に戻れたと感じたのだ。

落ち着いてみると色々納得できた。

「私の身体が丈夫だったり魔力が異常に多いのも‥‥お父様の影響もあったのですね?」

「その可能性は高いな」

カーニャはレオニスの目をみて真っ直ぐ告げる。

「かつて囚われていた時に七星賢者のエルヴァニスに不思議がられたのです。ありえないほど強靭な肉体と精神だと」

はっとカーニャはまた気がつく。

「それで私は飛行魔法が使えない?」

「‥‥そうなるな‥‥天空の権能が移譲可能な状態を保とうとするのであろう」

レオニスはこれが本題と言った顔で告げる。

「今から権能をカーニャに移す。私の娘として受け取ってくれるか?天空の権能を。今のお前にはきっと必要な力となるであろう」

レオニスの瞳には、わずかな誇りが光っている。

大切な娘を取り返した誇りだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ