【第76話:二方向三面作戦による強襲打撃戦術】
アミュアがラウマを抱き低空を飛行している。
「ラウマもう少し高度上げよう」
「おっけぇ」
縦長の二等辺三角形に形を整えた風結界の後端を操作し、機首を上げるラウマ。
新しい飛行魔法を試していたのだ。
今日はとりあえずルヴィーナ方面に偵察しに来ている。
新しい飛行魔法は術式が重く、ラウマ達はまだコピー出来ていない。
今はアミュアだけが使える状態だ。
今日の偵察で問題なければ、明日は公都エルガドール近辺まで足をのばす予定だ。
「‥‥見えた‥‥ルヴィーナだ」
アミュアの声は重い。
「うん‥‥燃えているね」
ラウマも苦しそうに答える。
結界が新バージョンになり、二人並んでうつ伏せになり、正面俯角を見ながら飛んでいる。
飛行魔法が問題がでても、瞬時に結界を変形して滑空に移れる仕様だ。
滑空時は二等辺の両端が前方に変形し、揚力を稼ぐ仕様だ。
下方に広がる炎の街を、風結界がただ音もなく滑っていく。
炎の反射がアミュアの頬を染め、ラウマの瞳の奥に赤い光を宿した。
影獣の予想数と動きの確認を、視認以外にもディテクトマジックで確認していた。
「急いでもどろうアミュア‥‥助けにいかなきゃ」
「うん!ちょっととばすよ」
新しい飛行魔法の出力は通常でも亜音速まで上がる。
キィィィ!
風切音を鳴らし旋回しながらも加速していくアミュア。
左右の翼状になった結界の端にも水蒸気の雲を引き赤々とした闇の中を戻る。
時間を置かずに索敵結果を踏まえた作戦進行をと急ぐのであった。
ユアが戻り、イーシス達姉妹も丁度合流したので、ルヴィーナの救出作戦が実施される。
アミュアとラウマの強行偵察で、新しい飛行魔法に妨害が入らないことを確認できた。
通常の飛行魔法を併用し、そちらに邪魔が入ることも確認できたのだ。
これにより地上と上空の連携する立体的な作戦が組まれた。
ルヴィーナで破壊活動をする影獣はおよそ100体前後と推測された。
強行偵察の成果である。
地上から本体が進みながら、上空を輸送した打撃部隊が指揮系統打撃後に、後方撹乱するのが基本戦術となった。
影獣達は高度に連携しており、指揮者が居ると想定したのだった。
後方からそれを特定し、直接指揮者を倒し混乱に乗じて殲滅する戦術となる。
正面からの本隊はカーニャが指揮をとり、ノア、エーリス、エーシスと前衛を並べる。
4枚の前衛で押さえ、後方からイーリスとエイシスの火力で殲滅する構成。
打撃チームはアミュアの飛行魔法でユアとラウマを運ぶ。
本体はカーニャとノアのツートップとし、それぞれが2名を率いて2分隊、6名の小隊とした。
これにより挟撃等の選択肢も取れるのだった。
カーニャもノアも配下の動きをコントロールしながら、互いのチームの動きまで予測する。
カーニャはノアの作戦能力に、また驚かされる。
カーニャとエーシスの二枚で止め、エイシスはサポートに周り結界で支える。
ここに当たってくる影獣が12体。
カーニャが2体仕留めながら下がると、少し押し上げたノアチームから十字砲火の魔法が来る。
「いいタイミングだわノア!」
カーニャもにっこりの連携だ。
影獣の防御意識がノア達に傾いたところで、カーニャとエーシスの突撃。
カーニャは全身に黄金をまとい身体強化、レイピアにも最大限のエンチャントが入り3mほどに伸長した剣身を横薙ぎにふるう。
4体ほど半分に切り分けたところに、エーシスも直剣をひるがえし2体を葬った。
残りの4体にはエイシスの上級闇魔法エンヴィ・ロトシュトラールの紫に輝く光線が突き立つ。
弾速が早く3体を仕留め、一体も半死にしたところにノアが上空から落下してきて切り下ろし止めとなった。
「いいね!」「うまいよノア!」
パチンとハイタッチのノアとカーニャ。
初連携だが問題はないようだ。
次の影獣の塊はもう少し数が多いようで、押し返してくる圧が高かった。
素早く察したノアとカーニャは先程稼いだ距離を惜しげもなく使い、撤退戦を仕掛ける。
可能な限り各個撃破を目指すのだった。
一方の打撃部隊は、隠蔽した飛行魔法で高空侵入。
街の全景が見える高さだ。
「ディテクトイビルの動きを見れば、あそこが指揮を取っているね」
「そうね‥‥ディテクト・マギの動きではそこが一番動きがある」
物理・魔法両面の索敵結果から、目的地を推測した3人が急降下から作戦開始する。
目標は高所に構えているようで、ビルの屋上に大型の人形影獣がいた。
(近づくと気配が尋常じゃない‥‥スヴァイレク並だよ‥‥)
ユアは内心ぞっとする。
今回は自分でする縛りだが、雷神なしでの制圧を目指している。
これはゆくゆくレギオトゥニスに突入する際のシュミレーションを兼ねているのだ。
アミュアが飛行魔法を制御し、急制動。
ボン!と大気をならしラウマも風結界でブレーキをかける。
直後に勢いを残したユアが強化魔法を使い、雷をまとわせた両手持ちの長大なクレイモアが切り下ろされる。
ゴゴゥウン!!
影獣の左手にあった巨大な盾が真っ二つになり左右に落ちる。
ユアの剣先はビルをクレイモアの剣身分切り裂いていた。
盾を犠牲にバックステップした影獣の背に2条の光魔法が左右から打ち込まれる。
『アインツェルシュトラール!』
ラウマとアミュアが減速を終えて、左右上空から光魔法を放ったのだ。
巨影もそのクロスファイヤは躱しきれず、左腕を吹き飛ばした。
影獣の赤い目からレーザーのような真紅のビームが射出され、アミュアを捉えるが、光魔法の結界をピンポイントに貼り斜めに逃がし避ける。
再度アミュアを捉えようとした影獣の頭が真下から光に貫かれる。
ビルごと切り上げたユアのクレイモアが頭を下から貫いていた。
「アミュアをいじめるな!」
ユアの怒りの叫びとともに左手が直接あてられ、吸収する。
「くぅ‥‥」
久しぶりの痛みにユアが苦鳴を漏らすが、すぐラウマとアミュアも吸収を手伝い処理し終えるのだった。
「ありがと、大物だったね‥‥」
「うん、あれをかわすとは思わなかったぁ」
ラウマも冷や汗を拭った。
あの人形影獣は、完全にユアがヘイトを取った状態で、死角からの光線を避けてみせたのだ。
「カーニャ達を応援に行こう!まだわたし飛べるよ」
アミュアは本隊が気になるようで、しきりに入口方面を背伸びして見ている。
「そうだね!挟み撃ちだよ!」
ユアはちょっと元気に戻り、気合を入れた。
「‥‥ユア達やってくれたね。明らかに動きが悪くなった」
カーニャの呟きにエーシスも同意。
「はい、下がらなくなりました。‥‥やりやすい」
「きました!」
エイシスの報告と同時の魔法攻撃を先手に、二人が切り込んでいく。
ノア達が右手から回り込んでおり、後方からユア達が届けば、勝利殲滅は確定となるのだった。




