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【第75話:はやく帰ってこないかな】

暗闇の中をノアが駆け抜ける。

ラウマをおぶって、身体強化まで使い高速で街道を走り抜けている。

先程ドレクハイムの手前で雲に至り、馬車にエイシスを護衛として残し先行偵察しているのだ。

ノアはとても夜目が効くのだが、流石にこの月もない闇夜を見通せないので、ラウマが魔法の光で周囲を照らしている。

ピーンと魔力が走りディテクトの魔法も使う。

「反応なし‥‥」

ノアはとっととと停まり、尋ねる。

「どうする?結構町からもはなれたよ?」

ドレクハイムからかなりの距離を公都方面に走ったが、猫の子いっぴきいない。

ルヴィーナの街までの半分は進んでみた計算だ。

「‥‥ディテクトのマップによると‥‥こっちがルイム・ザニカ・ザヴィリスブルク城ね。戻りながらそっちも見てみよう」

「りょうかい‥‥なんだって?ぶるくじょー?」

「ルイム・ザニカ・ザヴィリスブルク城です」

「くぅん‥‥」

ノアには覚えられない長さだった。

「古城でいいですね‥‥いこうノア!」

「うん!コジョーにゴー!」

ノアも元気になり走り出す。

今度は街道を外れ南東方向に進む二人は、暗闇をものともしない斥候バディであった。




雲の端までもう少しの街道上。

まもなくドレクハイムといった坂の上だ。

馬車の運転席で長い黒鉄のスタッフを握り、じっと前方をにらむエイシス。

(ちゃんとみていなくては‥‥馬車をおまかせ頂いたのです!)

気合は十分だが、前方以外は疎かになっているようだった。

ストンと隣にアミュアが降りてきて悲鳴をあげる。

「きゃぁあああ!!」

悲鳴にびっくりしてアミュアも目を丸くした。

「ごめんねエイシス‥‥そんなにおどろくと思わなかったの‥‥」

「あぅあぅごめんなさい、アミュアねえさま‥‥緊張していたのですぅ」

しょんぼりするエイシス。

アミュアはにっこりして、ぽんぽんと肩を叩く。

「教えてなかった、わたし達がわるかったよ。見ていて」

そう言うと立ち上がって両手の指を一本づつ顔の横にだす。

「こうして指と指のあいだを見るよ」

「はい?」

「それで次はこう」

右手の指の位置に身体を回し左手を持っていく、そうして範囲を決めて索敵するとユアに教わったのだ。

「前方監視なら左右と正面で3面、全周ならそれを四方向にするってことね」

理解を示すエイシス。

「なるほど‥‥範囲を絞って集中すればみつけやすい」

「そそ‥‥慣れたら指はいらなくなるよ」

同じ様にアミュアの真似をするエイシス。

「不思議です‥‥さっきまでより色々見えます」

とんっとレビテーションを一瞬入れるジャンプで、馬車の屋根にでるアミュア。

「交代して見張ってるから、練習してみると良いよ」

「はい!ねえさま」

アミュアは馬車の上に座り、時々周囲監視しながら、覚えたての新しい飛行魔法を部分展開して復習していた。




ユアがいなくなり3日が経っていた。

実はアミュアやカーニャはかなり焦りを覚えるのだが、皆の手前普通にしなくてわと頑張っていた。

カーニャはエリセラと打ち合わせて、物資の補給手配を見直していた。

昨日までの偵察で、予想していたよりも状況が悪く、ドルクハイムで補給が受けられなそうとなった。

通常便はカーニャの赤い馬車を、イーリス達姉妹が護衛を兼ねて一日おきに往復して運んでくれている。

急遽明日にでも夜霧で一往復ルメリナまで走るかと、相談していた。

「生鮮食品は諦めて、果汁の入った缶詰瓶詰めをメインに仕入れましょう」

「はいお母様‥‥あとは‥‥ふつうの非常食をもう少しほしいですね。値段はだいぶ上がってますけど」

ハンター用の携帯食料は高価なので、一般向けに日持ちのする食料をある程度積んできていた。

ルメリナでも食料品不足から物資の高騰があり、補給の難しさを感じていた二人は、品目の見直しから入っていた。

「‥‥カーニャさん、少し休んでもいいのよ?ここはお任せなさい」

そういって、隣りに座るカーニャをそっとハグするエリセラ。

目を閉じてそのあたたかさを受取るカーニャは、答える。

「平気です‥‥動いていたほうが楽なの」

「だいじょうぶ‥‥ユアさんなら心配ないわ」

「うん‥‥」

娘にもどって甘えたカーニャは、ちょっと照れて赤くなる。

「ありがとお母様‥‥ちょっとキャンプの方も見てくるわ!」

そういって元気に大型馬車の指揮所から出ていくカーニャ。

見送るエリセラの瞳に影が差す。

「ユアさん‥‥どうか早くお帰りになって‥‥」

カーニャの無理は普通の人では解らないレベルの隠蔽だが、母には見通されているのであった。




ぱちっと音がするような目覚めのユア。

がばっと起き上がる。

一瞬で周囲確認と自分の状態確認を済ます凄腕ぶり。

「にゃあ?!なんで裸!?」

あわてて見えてはいけない所を隠すユア。

ブンと音がしてペルクールが現れる。

「おお、目が覚めたなユア?身体に異常を感じないか?」

「はだかだよ?!」

「ああ‥‥服はちょっとまて、確認したい。手がじゃまだな?万歳しろユア」

真っ赤になるユア。

「なに?そのはずかしめ!」

「なにをいう‥‥医療行為みたいなものだ‥‥手をあげるのだユア」

「隠してるんだよ!」

「なぜ?」

「‥‥もういい‥‥わかったよお」

女の子座りでばんざいするユアはもう首まで真っ赤だ。

不思議なことに映像のはずのペルクールが手で触ると、そこに感触がある。

指で押されると押された感触があるのだ。

「くすぐったいよお!」

「がまんせよユア、大事な確認だ‥‥ここも痛くないな?」

ぽちっと押しては行けない所を押すペルクール。

「ふみゃあ?!」

また飛び下がり手で隠すユアに笑うペルクール。

「くくく、すまんすまん、最後のはジョークだ」

「ゆるさん!」

ぼっとユアの目が赤い光を放つ。

「おお!完璧だ。今接続を切っているのだが、雷神が発動するな?」

目の光を消すユアが右手をにぎにぎする。

金色の粒子が漏れていた。

「うん‥‥いつもの様にできそうだよ?」

「うむ、体内に装備した魔導フィルムコンデンサにも容量の限度があるので、魔波動プールにフルチャージしていっても最大出力一回分と思ってくれ。今またチャージしておいたからな。無駄遣いは厳禁だ」

ユアは表面上の理解を示す。

理屈は最初から聞かない。

「じゃあ‥‥今まではどこかよそから雷が来ていたの?」

「いやこちらと接続できるところはそうだが、ユアが単体で撃っていたときもあったぞ?」

ユアは感触だけ確かめ、一旦納得する。

「じゃあ服ちょうだいよお!」

「わかったわかった」

ペルクールが手を伸ばすと、空中からユアの服がでてくる。

空間収納のようなものだろうかと、ユアは受け取る。

器用に色々隠したまま、ユアは着衣していくのだった。





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