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【第74話:カーニャは飛べない】

テーブルには果物のよそってあるお皿と、水色の液体で満たされたみずさしがあった。

ガラスのコップが2つ出されて、水色の液体が半分ほどまで注がれた。

「そこの()()()です。身体が温まりますよ」

何故かカーニャを少しにらみながら、泉の水と強調する少女。

「‥‥はい」

肩をすくめ小さくなるカーニャと、にこにこのアミュア。

「いただきます」

アミュアは甘い香りに美味しそうと判断してくいっと飲む。

言われた通りじんわりとお腹が温まった。

アミュアはお酒かな?と思った。

カーニャもくいと飲んで、さっそくお願いする。

「師匠‥‥飛行魔法を教えてほしいのです‥‥必要なんです‥‥」

「ミルディス公国の件ですね?わたしも見てきましたが、雲の中は見ていません」

アミュアとカーニャが見交わし笑顔になる。

「あの雲の上をとんでも平気なのですか?」

アミュアが身を乗り出して聞く。

「あぁ、レギオトゥニスのジャマーですね。あれは浮力と言われる魔力で作る浮き上がる力を打ち消すのです」

うんうんと経験者二人は頷く。

「わたしの飛行魔法はオリジナルの技術ですので、レギオトゥニスも打ち消せないのです」

アミュアとカーニャ二人でコテンと首を倒す。

『オリジナル?』

「‥‥そこからですか。少し長い話になりますね」

そういって少女は説明を始めた。


ー最初に事を起こしたのは全てこのオリジナルと言う存在である。

 少女も詳しく知らないが、神々すらオリジナルが作ったと言われているらしい。

 ミルディス公国を襲っているレギオトゥニスはその時代の王だという。


ひとしきり説明が終わると

ぽいと少女は小さな赤い果実を皿からとり、かわいらしく口に放りこんだ。

カーニャも果実を2つとり、1つをアミュアの口に入れる。

「おいちい!」

アミュアはほっぺを両手で押さえて満面の笑顔。

「ね、おいしいよねこれ」

カーニャもぽいと放りこんで食べた。

「まずはこれを見て覚えてください」

そういうとカーニャ達の眼の前にぱぁっと白い光で、膨大な量の魔術式が空中に描かれる。

飛行魔法のものだろう魔術の展開式だ。

「こ‥‥これは‥‥」

「すごい‥‥3種複合に‥相互参照式が組んである‥‥」

「アミュアさんは魔法にくわしいのですね?」

アミュアの知識に少女も驚く。

この世界にはない術が多く使われているのだ。

アミュアもカーニャも記憶力が異常に良いので、この複雑な式を覚えることが出来た。

「いまジャマーを切るから試してみると良いわ」

そういうと、結界を操作したのか、式が組めるようになる。

二人とも発動手前まで構築できて、あとは本当に試すだけとなった。

「すごい‥本当にこれで飛ぶなら‥とても効率よく浮き上がる」

アミュアは自分の覚えている、異世界の師匠ソリスの使った飛行魔法より、洗練されたそれに驚いた。

カーニャも同じ様に発動手前ま動かした。

「いつもここまではできるのよね‥‥」

そうして発動した瞬間にカーニャの魔力はがりがりと消費する。

カーニャはつま先が浮いているが、このままでは速やかに魔力欠乏になるので式を破棄する。

とんと着地してアミュアを見る。

「すごいです‥‥半分近く、1/3以上は消費軽減されています」

アミュアも魔法を止め降り立つ。

「むぅん、どうして私だけ‥‥」

じっとカーニャを観察していた少女が、カーニャに告げる。

「カーニャの内部で魔力が消費されていますね‥‥どこに行っているのかわかりませんが」

うんうんとアミュアも頷く。

「そうなのです‥‥レビテーションでは問題ないのに」

何度も指導して眼の前で試してもらっているので、この問題に関してアミュアは専門家だ。

「飛行魔法の制御に入ると、急に魔力が消えていく‥‥行方不明なのです」

アミュアは首をひねる。

少女も瞳に魔力を集めているのか、白い光りの滲む魔力を帯びてカーニャを見ていた。

「‥‥ふしぎですね」

この少女をしてもカーニャが飛べない理由はわからずじまいだった。


一旦戻ることになったが、アミュアが新しい飛行魔法で飛ぶことにして、一旦最初に瞑想した地点におろしてもらう。

「師匠‥‥ありがとうございました。少しだけお話したいのですが‥‥いいですか?」

「‥‥ええ、かまいませんよ」

「ごめん‥‥アミュア」

「うん、ちょっと練習してくるよ」

そう言うと丁寧に詠唱して浮き上がるアミュア。

ひゅんと風を切って真上に飛んでいった。

「‥師匠は‥‥‥私のお祖母様なのですよね?」

「カーニャ‥‥」

自分に容姿がそっくりで、エリセラの生まれを知っているこの師匠は、カーニャには名乗れ無いと以前に言っていたのだ。

「‥‥母にはもちろん伝えませんので、お名前を教えてはくれませんか?」

「カーニャ‥‥エリセラには伝えずにいてくれますか?」

真剣に頷くカーニャ。

「‥‥私の名前はエリスティア‥‥カーニャの推察どおりエリセラの母です」

「ありがとうお祖母様‥‥抱きしめてもいいですか?」

にっこり笑いうなずくエリスティア。

自分より少し小さくなった祖母を、そっと抱きしめるカーニャ。

目が潤んでしまい、ふるふると震えた。

「お祖母様‥‥また会いに来てもいいですか?」

「ええ‥‥いつでもいらっしゃいカーニャ」

「そして‥‥数々のご無礼をお許しください‥‥」

「昔のことですよ‥‥忘れましょうカーニャ」

「はい‥‥今とても幸せなんです‥‥私の身体にはちゃんとお祖母様の血が流れている‥‥お母様よりお祖母様のほうに私が似ているなんて‥‥」

そっとカーニャの髪をなでるエリスティア。

「巫女の血が強くでたのですねカーニャには」

すんと鼻をすすったカーニャが照れくさそうにはにかむ。

「‥‥小さい頃、私お母様にあまり似ていなくて‥‥自分は本当の子供じゃないとすねていたんです‥‥」

エリスティアは無言で頬を付け抱く力を強める。

カーニャはやっと微笑んで告げる。

「また来ます‥‥今度は私の妻を連れてきますね」

「??」

「複雑ではないのですが‥‥今度です!」

そういって顔を赤くするカーニャ。

上空に向け両手をふると、アミュアがすいと戻って来る。

とんと着地したアミュアはすっかりコントロールを学んだようだ。

「すごいです!一度上がってしまうと消費がすごく減るのです!」

にっこにこのアミュアは楽しそう。

「そうですね、高度が上がると進行方向に合せて制御が変わる仕組みです」

アミュアは理解を示す。

「なるほど!交互参照式はそこを見ていると?」

「そうです。優秀ですねアミュアさんは」

「えへへへ」

てれてれでもじもじのアミュア。

カーニャがふくれて、むぎゅっとアミュアを抱きしめる。

「さ!暗くならない内に帰ろう」

アミュアも頷いてカーニャを抱きしめる。

「師匠!またきます!」

「お世話様でした」

二人は挨拶を残しぐんぐんと上昇する。

レビテーションの重ねがけ並の速度から滑らかに水平飛行に移った。

紺色を濃くした高地の空に真っ白な筋を午後の日差しに輝かせ、にぎやかなふたりが飛び去る。

じっと見つめていたエリスティアは微笑みのままこぼす。

「あのエリセラが子を成し‥‥希望(カーニャ)となって私を祖母と呼ぶ‥‥」

事実をただ言葉にしただけなのに、エリスティアの頬は染まり、はにかむ笑みを浮かべるのだった。

「私が間違っていたのかしら‥‥」

それは否定ではなく、すでに肯定の言葉であった。

幸せそうな笑みが全て示していた。









※実はエリスティアとカーニャは、外伝【カーニャの作り方】で一度会っているのです。

気になった方は是非ご一読を。ハンター編:第4章【少女とであう】がエリスティアの章です。

※ごめんなさいノクターンノベルだしR18です。https://novel18.syosetu.com/n6320lf/

第3章の最後からエリスティアがでます~

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