【第72話:お出かけは突然に】
夜遅くなり、火の番は必要もないのだがユアは一人で焚き火を見ていた。
アミュアとカーニャにはすぐ行くから少し一人にしてとお願いした。
お茶を自分のために入れ直し、そっと炎を見つめている。
(こうして静かにしていると、不思議と心が休まる‥‥すぐ側にアミュア達がいるのも心強い)
にっこり微笑んでお茶を飲むユア。
左手をじっと見る。
(ラウマさま‥‥きっと全部おわったら探しに行きますね、大事な‥‥ともだちだもの)
不敬かなとも思うが、女神ラウマとは付き合いも長いし、とても大切な友達だといまでは思っていた。
次に右手を見る。
最近あまり意識していなかったが、そこには雷神ペルクールとのつながりもある。
(ペルクールはどうしているのだろう?ラウマさまとノアさまが不明な中だし、会うことはできないか‥‥)
ピンとなにかが頭に響く。
(そんなことはない‥‥ユア久しいな。その右手に繋がりが有るからな、探せばこうして話すこともできるのだ)
(ええと?ペルちゃん?)
(ひどいいわれようだな?‥‥ラウマはさまを付けるのに‥‥)
(うふふ‥‥じょうだんだよ。どうしたの?)
(大事なことを‥‥つたえねばならん)
重々しい神威が伝わってきて、ユアも姿勢を正した。
ここからは冗談はなしだと。
(右手に集中してくれると、気配が来るのだよ。ユアを探していたのだ。この先にすすむと話せなくなるのだ)
(‥‥あの雲の中では話せないってこと?)
(そうだ‥‥話せないだけではないぞ、雷神の力も使えない)
(ええ‥‥本当に?そういえば使ってなかったから気づかなかった)
(この先に進むのならユアに渡したいものがある‥私の空間に来てくれないか?)
(それは‥‥必要なことなの?)
(そうだな‥‥あとでこちらに来たら詳しく話すが。雷神を単独で使えるようにするのだ。あの雲の中では必要となることだろう‥‥あまり残り時間がない‥‥準備ができたら呼ぶのだ)
スンと頭から気配が消えた。
ユアはじっと自分の白い馬車を見る。
そこに大切なものが沢山有るのだと、確認するように見つめる。
薪にする予定の枝で地面に字を書く。
ユアは大分文字を覚え、書くのも上達していた。
満足そうににっこりするユア。
「これでよし!」
ポイと枝を捨てると、強く右手を意識する。
(いいのか?ユア)
(うん、もう大丈夫だよ。伝言を書いておいた)
パァンと細い黄金が天に舞い、そこにユアはもういなかった。
一瞬のことなのか意識を失っていた時間を測りかねるユア。
目が覚めると暗い窓をもつ明るい部屋に座っていた。
「ここ‥‥どこ?ペルクール?」
(よく来ましたユア‥‥ここは私の空間です。危ないことはないので安心しなさい)
きょろきょろしてしまうユア。
「どこにいるの?ペルクール」
周りをみても白っぽいソファのような椅子と白い床、あとは窓しかなかった。
ブンと音がなり、ユアの直ぐ側にペルクールが現れた。
以前見た黄金の鎧姿だった。
じっとユアが見つめる。
「ふむ?もしかして‥‥その姿は本物じゃないの?」
触れそうな質感を持ちそこにあるペルクール。
影すら描かれ追従して動く。
「するどいですねユア‥‥そうですこれはユアが落ち着くと思い投影した姿です」
納得顔のユア。
「こないだっからアストラル・プロジェクションを習って使っているからかな?本物と偽物の違いがわかる気がするよ」
「なるほど‥‥巫女の技術ですね。聞いたことはあります」
すっとユアは姿勢をただした。
ペルクールの気配を察してここからは真面目な話だなと思ったのだ。
「ユア‥‥いまとても危ない状態なのです。詳しく話してもわからないでしょうから、結論だけ全て伝えます。いいですか?」
こくと頷くユア。
ここからは聞き逃すまいと集中する。
「あの雲の中に飛行する大地があり、そこに魔王がいる。あの雲は私の雷を通さないので、直接内部で滅ぼす必要があります」
「‥‥はい」
ユアが理解できたようなので続けるペルクール。
「そのためにユアに渡さなければいけない力があるのです。いまからそれを渡しますので、一旦意識が途切れますよ‥‥いいですか?」
「‥‥はい、お願いします」
そういってユアは目を閉じた。
「なになにぃ!?」
慌てた様子で外に飛び出してくるカーニャ。
落雷の音で飛び出してきたのだ。
すんすんと臭いを嗅ぐカーニャ。
ユアが雷神を使った臭いが漂っている。
焦げ臭いような薬のような特有の臭いなのだ。
「どうしたの?!」
アミュア達も遅れて馬車を降りてきた。
カーニャは焚き火の側で地面をじっとみている。
アミュア達に気付いたカーニャが手招き、自分の足元を指差した。
ちょとでかけるしんぱいないよ
ゆあ
地面に枝か何かでガリガリ書き置きが残されていた。
ユアは文字が書ける様になったが、書くのが得意ではなく、いつも最低限の言葉になるのだった。
カーニャの横に三姉妹とエイシスが揃う。
「家出?」
カーニャが心配そうに言う。
「いえ、これは色々省略されているのです‥‥読み解く必要があるのです」
アミュアが難しい顔で冷静に判断。
皆で考えてみたが、要するにわからんとなるのだった。




