【第7話:女神と姉妹とユア】
カーニャは2~3日に一度発作を起こす。
あの半年間の責めと魔王の傷跡だ。
一人でも耐えられるようだが、とても長く苦しむようで、いつもはユアがそばで慰める。
今日も朝から発作で苦しむカーニャをイーリスが抱きしめる。
「カーニャねえさま‥‥」
あの研究所で三姉妹も調整・再調整の日々の合間に。
カーニャも責められる合間に二人は慰め合って互いを支えたのだ。
あの地獄の中で、エーリスとエーシスは外部の作業が多かったので、結果イーリスがカーニャの担当のようになっていたのだ。
少し年上で優しいカーニャに、イーリスは妹と呼ばれ互いの心を慰めたのだ。
その記憶は確かにイーリスを支え、カーニャを耐えさせたのだ。
そうして一時間ほど苦しむカーニャを抱きしめ続けて、疲れ果てながらもお役に立てた喜びを持つイーリス。
今は疲れ果てカーニャが眠りについた。
少し汗をかいてしまったイーリスはこの隙にと、シャワーをいただく。
イーリス達三姉妹はマルタスに、姉のエイシスはユアに救い出された。
本来は4人とも無かった人生を、新たに与えられたのだ。
「お力になりたい‥‥御恩をおかえししたい‥‥」
そんな強い思いが姉妹にはあった。
マルタスを父と三人で呼び、20年以上孤独に痛みに耐えた彼を支えたいと二人は残ってくれた。
一番仲のよかったイーリスにカーニャを任せてくれたのだ。
妹達の信頼にも答えたいと、意気込むイーリスであった。
ベッドにもどると、カーニャはまだ毛布にくるまり眠っていた。
「‥‥ゆあぁ‥‥」
吐息のようにユアを求めるカーニャに、イーリスは涙がこぼれる。
(あんなに優しくて強いカーニャ姉様が‥‥)
かつてを知るものには今のカーニャはあまりにも憐れだった。
明け方に4人で片付けをする。
手分けして手際が良い。
ユアとアミュアはもちろん、ノアとラウマもだいぶ旅慣れた。
キャンプは元通りサドルバックの収納に仕舞い、焚き火の火の始末もした。
消えて埋められる焚き火をじっとラウマが微笑みで見つめる。
持て余す何かを共に埋めるかのように。
東の空が明るさを帯びる頃、ラウマが途中で交替しようと言ったが、大丈夫眠れないんだとユアが言うので、二人で朝日が登るまで焚き火を見ていたのだ。
どちらも言葉はなく、見た目上は微笑みを交わし合ってすごした。
「よし‥‥じゃあ行こう」
ユアがそう言ってラウマ像に向かう。
三人も無言で後に続く。
女神の手を取るユアの左右の腕にノアとアミュアが付き、ラウマは像の開いた手を掴んだ。
まばゆい黄金が降り落ちて、4人を包むと全員が光の粒子になり吸い上げるように天に消えた。
あとには残された白い馬車だけがぽつんと残った。
一旦ラウマの黄金に満ちた場所で4人は目を開けた。
「最近おっこちないよね?」
ユアの冗談にふふっと三人が笑う。
『ふふ、皆よく来ましたね』
ノアがぽふっと女神ラウマに抱きつく。
『うんうん、ノアもよくきました。げんきですね』
「うん、とても幸せだよ毎日」
目を細めるノアを優しく撫でる女神ラウマ。
そっとノアを押すと、ラウマに視線をあわせる女神。
『ラウマおいでなさい‥‥』
「はい‥‥」
そっと抱きしめる女神の慈愛がラウマの心にしみる。
頑張ったねと褒められたきがして嬉しいラウマ。
すっと肩を押しじっと見つめる女神。
『ラウマ‥時々でいいのでお話しに来てくださいね』
ああ、お見通しなのだなとラウマは微笑みを消した。
よしよしとノアと同じ様に髪を撫でられるラウマ。
なんとか微笑みに戻し下がった。
『アミュアもおいでなさい』
手を広げる女神。
そっと胸を借りるアミュア。
「私も毎日幸せです」
にっこり笑うアミュア。
よしよしと女神も微笑みを深くした。
最後にユアに目据える女神ラウマ。
『ユア‥‥三人をお願いします‥‥』
すっとお辞儀をする女神ラウマ。
あわてるユア。
「ちょ!?女神様?!頭をあげてください!」
にっこり笑う女神ラウマ。
『いまのは女神ではなく、三人の母としてお願いしました』
「もちろん‥‥必ず幸せな日々を過ごして見せます」
ユアの瞳に新たなる決意の炎。
アミュアは少しだけ不安を覚える。
見通した様に抱き寄せる女神の手は、温かさをアミュアの肩に与える。
『それでは天を渡りわたくしの世界の一つにいざないましょう。ユアを中心に3人で円環を』
女神ラウマの指示でアミュアとノアとラウマが輪になりユアを取り囲む。
右手と左手を三人で結び輪になる。
右手から左手に光が動きすぐに円となる。
女神ラウマの瞳が閉じられ、神代の言葉が流れる。
上空から空間を満たす黄金を押しのけ、さらなる光が降り注ぐ。
ーーラー・ウマ・シェル=ナヴァリエ・オルド
System Call: [Lauma_Primordial/Transit.v1.0]
Args: {target_group=“YuaParty”, destination=“WorldLayer-07”}
ExecuteAuthority: Root_GoddessLauma
[initiate. Return to the source coordinate.]
ーーソ=イエン・ラ=トゥア
三姉妹が黄金に解け円となり、その外側にラウマの降り出す光が円を描く。
ユアはもう目を開けていられず固くまぶたを閉じた。
最初と最後だけがこの世界の言葉だったが、意味は解らず。
言葉と言葉の間に流れた声は、言葉なのかも理解できなかった。
そうしてユアを囲んだ三姉妹が世界を越えて、知識を求めた。
カーニャを救う知識を。




