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【第69話:ルメリナにてそうだんする】

あの日の夕方以来ミルディス公国には朝が来ない。

1日中夜が続くのであった。

ここ公都エルガドールも同じで、そして毎日が戦いの日々であった。

影獣が襲い来るのである。

公都周辺にある4つの大きな都市を防衛し続けているが、すでに3つを失い残すはカルナードと公都エルガドールのみとなった。

ミルディス公国の軍隊は神殿騎士団の流れをくみ、貴族たちが率いている。

今公都エルガドールには3つの軍がいたが、すでに2つが壊滅し残すは一軍となり公都をぎりぎり守っている状態だった。

レギオトゥニスは自在に雲の中を動くようになっていた。

今は公都エルガドール南西の海浜都市に来ている。

闇の中で街は燃え上がり、まもなく獣達は船に戻るだろう。

多大な戦果をもって。

玉座の前にある上部テラスに魔王は立つ。

眼下には燃える都市がまた1つ。

公都南方にある都市だった。

影獣達は数は多くないが戦力として非常に強く、次々と都市を滅ぼし、住人から奪ったエネルギーを船内にたくわえていった。

「レギオトゥニス‥‥進行状況は?」

背後の玉座の間に跪くレオニスが答える。

「目標にあと15%程です‥‥公都が落ちれば後は満たされると思われます」

報告にニコリともしない魔王だが、瞳には意思が宿る。

「そうか‥‥」

彼らには悲願が有り、そのためにミルディス公国に襲いかかるのだ。

魔王はテラスから夜の世界を見下ろしつぶやく。

「Viskas paaukojama, tampa auka‥‥」

いにしえの魔王達の言葉で終わりを宣言したのだった。

全てが捧げられ、供物となると。




一旦スリックデンにもどるエリセラに、エイシスが付き添い汽車に乗る。

色々と相談しながらここまで来たが、ユアはミルディス公国から逃げてくる人をまず助けたいとエリセラに相談したのだ。

「沢山は助けられ無いのかもしれないけど‥‥出来ることをしてあげたい」

ユアはまっすぐにエリセラに話す。

「力を貸してください」

ぺこりと頭を下げるユア。

顔をおこすと笑顔のエリセラに抱きしめられる。

「もちろんお手伝いしますよ。大切な娘の願いなのですもの」

きっといい返事はないと思っていたユアは、とても温かな気持ちで目が熱くなった。

「ありがとう‥‥わがままいってごめんなさい」

ぎゅっと抱きしめ話したエリセラ。

「いいえ‥ユアさんは誇りをもっていいわ。きっとご両親も鼻が高いことでしょう。私達もできる範囲の事をさせていただきます」

今回スリックデンまで戻るのは、ミーナ達が心配なのもあるが、人出を集めてくれるというのだ。

何を始めるにも人出がいるだろうとエリセラに言われたのだ。




ハンターオフィスに来ているユア達。

マルタスに相談と言ったら、二階の会議室に来ていた。

ユア達5人とマルタスの他に、オフィスの副所長ローデンさんと、先輩ハンターたち。

チャラ先輩もいる。

「王都からも連絡が来ていてな。ミルディス公国の件はある程度聞いている」

マルタスが宣し、会議を始めた。

王都にまでミルディス公国からの難民が流れ込んでいて、ポルト・フィラントから王都の間は大混乱らしい。

中には山越えをしてくるものまでいて、難民によってヴァルデン王国も危機なのだった。

人口が一割も増えたら、国民全てが飢える可能性もあると。

ヴァルデン王国だけではなく、通商のある南大陸や東方の諸国とも連携し支援を集めているらしい。

「まあ‥‥そういった事情も有ってな‥‥応援がほしいのはむしろ王都方面で、スリックデンやルメリナからも人を送っている」

ユア達はルメリナの北にも難民が溢れると警告もしたのだった。

王都周辺よりもさらに食料事情のよくないこの北部東部は余力がない。

「ローデンにも相談して、すでに人員の割り振りは決まっている‥‥すまんがオフィスからは人は出せない‥‥」

ふかぶかと頭を下げるマルタスに倣い、ローデン副所長もあたまを下げた。

「では‥‥わたくしの名前で応援を求める依頼をだしたいのですが、それはかまいませんこと?」

カーニャが提案する。

クラスAハンターのネームバリューを活かそうというわけだ。

「‥‥そうだな結果は約束できないが、できる限り遠くまで依頼を回そう」

「あちこちに貸しがあるので、ここいらで回収いたしたいのですわ」

そういってカーニャもにっこり笑った。

こうして長い会議は一旦終わりとなった。




ひまわりハウスに戻ると、来客があった。

イーリス達姉妹三人とアイギスとカルヴィリスだ。

5人も来客があるとさすがに広いひまわりハウスも手狭になる。

居間のソファとダイニングに分かれて皆でまずお茶をとなり、イーリスが手伝いますと笑顔でラウマを手伝った。

「そうなんだ‥‥もしも困ったことがあればマルタスさんはルメリナに残ると言ってたから、声をかけてみてね」

ユアがアイギスと話をしていた。

ルメリナに戻ってから、いよいよカルヴィリスのお腹が大きくなってきて、病院に近いアパートを借りたと言うのだ。

そのカルヴィリスをノアとアミュアが両側からおなかに触らせてもらっている。

あと2~3ヶ月で産まれるのだという。

「どうも医者が言うには女の子らしいのだ」

「わあ!すごい、そんなの解っちゃうの?」

ユアは驚きつつも嬉しそう。

「それでな‥‥ユアにことわっておきたかったのだ。名前を考えていてな」

「うんうん」

「もしユアがいやじゃなければ、エルナさんのお名前をもらいたいと思う」

「‥‥にいさん」

ぎゅっと抱きつくユア。

「いやなわけない‥‥とてもうれしい」

アイギスは頬を染め照れながら言う。

「気が早いかもしれぬが、ユアもあちこち出かけるのでな、会えたら聞こうとおもっていたのだ」

「うん‥‥なんだか幸せになったよ‥‥ありがとう兄さん」

にっこりと笑うユア。

そうして思いがけぬ話でユアはまた1つ幸せを知るのだった。


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