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【第68話:女神達のしんぱいごと】

ルメリナに戻りながら、ノアとラウマは泉の祠によった。

もう何度も試してきたが、諦めきれず女神ラウマと接続を試みに来たのだ。

ユアから夜霧を借り受けている。

祠のそとで夜霧を影に還してから、二人は手を繋いでラウマ像の前に来た。

「では試しましょう‥‥」

「うん、ちゃんとお話できるかな?」

繋いでない方の手で像の手を握る。

像と三人でつくる円環だ。

いつもだとこの時点でもう気配のようなものを感じるラウマだが、やはり先日来と同じで感触がない。

「いきます‥‥」

「うん」

ノアに声をかけて光を回してみる。

ラウマの右手から女神像に光を入れるが、反応はなかった。




「あれ?」

ラウマが始めると言った瞬間にノアは世界がシフトする感覚を味わう。

いつも女神ラウマの深淵に行くときの感じだ。

ユアがいる時とちがい、ノア達が移る時は一瞬の途切れもなく世界が切り替わる。

手は繋いだままなのもいつもと同じだ。

眼の前に女神ラウマの姿。

ただしその髪は黄金ではなく白銀に輝いてみえる。

ノアはその姿をかつて深淵で一度見ていた。

周囲は初めてきた頃のように暗黒に包まれて、足元には深緑色の大地が広がっている。

『よく答えてくれましたねノア‥‥はじめましてですねわたしが貴女の元になった女神ノアです』

ノアはびっくりして目を丸くする。

よくみれば右手に繋いでいたはずのラウマがいない。

両手とも女神ノアがにぎっているのだ。

「ええと?ラウマさまの双子のノアさま?」

『ええ、そうですよ。かつて分かたれた姉妹ラウマに作られたわたくしの写し身ノア』

ノアは不思議に思う。

「どうしてラウマさまの手を取って願ったのに?」

女神ノアは悲しそうな目をした。

『いまラウマはこの世界にいないようです‥‥完全に気配が消えてしまいました』

ショックをうけるノア。

「くすん‥‥どうしたらいいのぉ?」

ノアはただただ女神ラウマに会いたくなった。

アミュアとラウマに会えないと言われてショクは受けていたが、今日まで実感がなかったのだ。

ぽろぽろと泣くノアをそっと抱きしめる女神ノア。

『あぁ優しい子ねノアいい子』

ぎゅっと抱きしめるとノアの心に温かさが染み渡る。

ぽぅと胸があたたまるのだ。

それはいつも女神ラウマからもらう慈愛の温かさと等しかった。

ノアもそっと抱き返してぎゅっとする。

「どうしてラウマは一緒にこなかったの?」

『そうですね本来は一緒に呼びたかったのですが、ここは少し特殊な場所なのです。連れてきても帰せなくなる可能性が高かったのですよ』

ノアはきょろきょろと見回したが、何も解らなかった。

「ここは?どこなの?わたしも帰れないの?」

ノアは直感的に女神ノアの説明を理解していた。

『いいえ‥‥必ずノアは戻しますよ。ただ二人は戻せない可能性があるのです』

すこし説明しましょうと、ノアを抱いたまま事情を話す女神ノア。

ノアが内容を理解する前に変化が訪れた。

突然世界が震えだす。

ゴゴゴと重い響きを感じるノア。

振り仰いだ女神ノアが厳しい顔でノアを見つめる。

『ノア、時間が無いようです‥‥いまから貴女を戻します。ユアの側から離れてはいけませんよ。あの娘に施した封印が最後の可能性です』

世界の振動がどんどん大きくなっていき、ノアの身体も震えだす。

ぱあと光りが溢れ、ノアは体中にあつい熱が迸るのを感じた。

「ああぁぁ!!」

それはノアが未だ感じたことのない感覚で、全身を痺れさせる感覚を伴い声が溢れた。

そして光を感じたと思った瞬間に、女神像の眼の前に戻っていた。

両手を繋いでいる。

「ノア?!」

後ろからはしってくる気配に振り返るとラウマが抱きしめてきた。

「どこにいってたの!?ふぇええん!!」

ぎゅうと抱きしめてラウマはくずおれ泣きはじめてしまった。

よくわからないノアはよしよしとその金色の頭を撫でる。

「女神ノアさまに会ったの」

「??」

ラウマはぐりと抱きついたまま真っ赤な目で見上げる。

ノアのお腹にすがりついて膝をついているのだ。

抱きしめる強さがラウマの気持ちだと思うとにっこり笑ってしまうノア。

「色々話しを聞いたの」

ノアもひざを落としラウマを抱きしめた。

「心配してくれてありがとうラウマ」

きっと自分が居なくなって心配して探していたのだろうと、申し訳ない気持ちにもなったが、それ以上に嬉しい気持ちがある。

そうしてラウマが落ち着くまで、そっと抱きしめているのだった。


ラウマが落ち着いてからノアは女神から聞いた話を説明した。

「ノア‥‥さっぱり意味がわからないわ‥‥」

「うん、わたしもわかんないよ?」

がくっとラウマはうなだれた。

ラウマは一旦保留して、戻ってからアミュアやカーニャに相談しようと決めたのだった。




ルメリナまで半日という辺りで馬車に追いついたラウマとノア。

ちょうどこれから休憩と予定していたとのことで、ラウマはお昼ごはんの後で話すことにした。

食後のお茶を飲みながら、皆で話しを聞いてもらった。

ラウマから一通り接続時の説明をして、ノアが話し始めた。

「というわけで、ノア達はユアと一緒にいてと女神ノアさまは言ったの」

ノアの説明はあまり要点をとらえず、女神の髪の色や温かさなどの説明が多く、皆で難問のクイズでもチャレンジしている気分だった。

「‥‥ラウマどう思いますか?接続の様子は違ったわけですよね?」

「わたしもいつものように目を閉じたので‥‥ノアが消えたところを見ていないのです」

ラウマもアミュアも思案顔。

「ノア、その女神ノア様の空間は女神ラウマ様の空間とは違う場所だと思う?」

「うん、気配も温度も全然ちがったし‥‥多分すごく遠いとだけ感じた」

カーニャも質問し考えてみたがわからないことが多すぎた。

「うん、これは今考えてもわからないわ。女神ノア様の様子がノアの言う通りなら、きっと女神ラウマ様も無事ね。今は会えないだけと思ったほうがいいわ」

たのもしいカーニャの微笑みにアミュアもラウマも顔色を戻す。

「‥‥カーニャ‥解ったそうする‥‥ありがとう」

ラウマも微笑みに戻してアミュアとうなずきあう。

「そうですね‥きっとまた会えます」

アミュアも微笑んで視線を返した。




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