【第60話:それぞれがしたい事】
偵察から戻った翌日。
エリセラもカーニャもなんとか立ち上がり、ご飯をたべて元気を出した。
「ご飯をたべたら元気になったわ‥‥ありがとうねエイシス」
「奥様‥‥よかったです‥うれしいです」
ハグっと抱いて耳元に囁くエリセラ。
「何度も言うけど‥‥エイシスのことも私は娘だと思っていますからね。恥ずかしかったら二人の時だけでいいからお母様と呼んでね」
エイシスは真っ赤になり俯いてしまう。
もごもごと口の中で「もったいないです‥‥」等と言っている。
こんなに愛情をもらったことが無いので、反応できずにこうなってしまうのだ。
エリセラもだんだんとエイシスのそういった事に気付いてきて、先のようにささやくのだった。
「ふふ‥‥今日は少しお花のお勉強をしましょうかね」
「はい奥様‥‥とてもうれしいです‥‥」
エイシスの態度はエリセラをも癒やすのであった。
カーニャもにっこにこで朝からもりもり食べたので、元気いっぱいであった。
「あ!セリシア!」
ぎゅむっと抱きつくカーニャはテンションが高い。
「昨日はありがとうね‥心配してくれて‥お茶もありがとう!ちゃんとお礼言ってなかったごめん」
「カーニャ‥‥よかった元気になったね?」
セリシアもエイシスと一緒で、レヴァントゥス以外から好意をもらったことが無いので、スキンシップもてれてれで苦手だ。
(この母娘はやたらハグしてくるわね!べ、べつに照れてなんかないんだからね!)
と心のなかでつんつんするセリシアであった。
「ねえ今日はお休みってなってるし、一緒に買物行こう?ユアも出かけちゃったからひまだったんだ!」
「う‥‥うん、いいよぉ。どこいく?」
「ふふ!私は下着みたいのよね~なんだか胸がまたきついのよ!」
ぼよんぼよんとゆらすカーニャ。
「え?!貴女まだ大きくする気なの?!」
何故かはずかしくなり胸を隠すセリシア。
セリシアもユア程度にはあるのだが、相手が悪い。
「いや勝手におおきくなるのよん」
きゃいきゃいと意外と相性のいい二人であった。
ユアとノアはハンターオフィスの演習スペースに来ていた。
ノアが指導を求めたのだ。
「そうそう‥‥左手は前で下から、右手でそう‥‥」
2刀の指導であった。
ユアもマルタスのを観て覚えた動きだが、マルタスの剣理がなにぶん練られたものなので、さわりでも有効だった。
「この聖剣っていうもの‥‥なんだか手になじまないな」
聖剣はルメリナに戻るアイギスが使っていたもの。
影獣に決定打がないとカルヴィリスに相談した所、アイギスから貸し出してもらったものだ。
ラドヴィスやエルナの使った聖剣と同じ性能を持っていて、魔力を通すと聖属性のエンチャントが入り、影獣に特効なのだ。
形が東方風の曲刀なので、ノアが慣れておらず手こずっている。
「もうトドメ専用だと思ったら楽かも?基本教えた動きで、左でこうしてこうみたいに」
ユアの説明は直感的で理論を通さない。
天才のユアなので使えている動きなのだ。
ノアも実は同じ直感タイプなので、なかなか勉強になっている。
「わかった!こうしてこう?」
「そうそううまいよ!ノア」
といった感じで、意外と伝わっていたりする。
レヴァントゥスの前には今でも付き従う部下たちの姿。
もちろん全員影獣で、実力的にはよそなら幹部クラスの者たちである。
「なあ‥‥何度も言うけどさ‥‥もう自由にしたらいいよ?他所から誘われているんだろ?」
6人の影獣の家令達。
かつてのセルミア時代から、レヴァントゥスに忠義を貫く者たちだ。
「レヴァントゥス様‥‥不穏な噂もですが‥‥どうやら東方からも続々影達が流れてきております。一度探りを入れてはどうですかね?」
レヴァントゥスは苦虫を噛み潰しまくり。
「あのさぁ‥‥話しきいてる?僕について回ると影獣にまで狙われかねないよ?」
6人とも何度も同じ話しをされて残っているものなので、今更と思っている。
代表してか年嵩の男が言う。
「レヴァントゥスさまこそ、そろそろ諦めてください。我らは最後までお供しますよ」
真剣にそう言われるとレヴァントゥスとしては困ってしまう。
「ありがたいけどさ‥‥正直うれしいけどさ‥‥君等にも自分の幸せを考えてもらいたい‥‥僕と来れば間違いなく地獄行きだよ?」
くくと先ほどの男が笑い、残りの5人も苦笑いだ。
「こちらの台詞ですよレヴァントゥス様。大変嬉しく思います。どうかその果までご一緒させてください」
全員がうなずき、レヴァントゥスもニコリと笑った。
「ありがとうね‥‥じゃあ早速で悪いけど、その東方の件だが‥‥」
そうしてレヴァントゥスは部下にも恵まれ、セリシアにも出会いとても充実した日々だったりするのだった。
ラウマとアミュアはユアに借りて夜霧で駆けていた。
アミュアが騎乗し、ラウマが前席で伏せている。
公都エルガドール東部の山岳に来ている。
そろそろラウマちからが減ってきているので、補充とついでに彼の地の事を相談しようと思ったのだ。
公都エルガドールから最も近い祠がそこにあるのだった。
以前に祠の位置をすべて教わっているアミュアが居れば、いつでも祠を探せるのだった。
とっとっとと言った感じで、機敏に山登りをする夜霧は、半日もかけずに山奥の秘所に立つ祠にたどり着いた。
既にミルディス公国とヴァルデン王国の境にある山脈の山頂付近だ。
「ありがとうです夜霧、あとでお肉あげますね」
よしよしと首を撫でるアミュア。
夜霧も気持ちよさそうに伏せている。
「すこしだけ待っていてね」
アミュアが微笑んで告げ、ラウマの後を追い祠に入った。
「どう?接続問題ないかな?」
アミュアがラウマに声をかけた。
「よさそうですね」
にっこり笑ったラウマは嬉しそうに手を出してくる。
アミュアは手を取り、反対側の手をラウマ像につなぐ。
ラウマも同じ姿勢。
「では行きますね」
にっこりアミュアも告げ目を閉じた。
会話とエネルギーの補充だけならこの状態で出来るのだが、せっかくなので甘えて来ようと現地まで赴く予定だった。
二人の身体が黄金に輝き、ラウマ像に重なる。
黄金の虹が掛かりラウマ像にふれれば、一瞬で雪月山脈手前の旧ダウスレム城地下のラウマ空間にでるのだった。




