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【第50話:繋がりは縁となり】

門前払いだった。

「まあ、普通はそうよね」

まだ冷静なカーニャ。

「ユア‥‥ここは力押しで行きましょう。雷神を見せるのよ」

「ええ?!‥‥たたかうの??」

ユアはすごく嫌そうにふるふるしている。

カーニャはにんまり笑顔。

「ちがうわ。雷神を知っているユアのお父様の家族が居ることに賭けるの」

「なるほど‥‥」

カーニャの説明にアミュアは理解を示す。

ユアはきょろきょろ二人を見比べる。

「でも‥‥どうやるんですか?」

アミュアとカーニャの間で話が進んでいくので、ユアは考えるのをやめて、ふたりの美しい顔を鑑賞することにした。

(カーニャもアミュアも綺麗だなぁ)

そんな事を腑抜けた顔で考えるのだった。

今日は二人もユアも、貴族家を訪問するということでフォーマルな装備だ。

アミュアとカーニャは足首までの質素だが豪華な衣服だ。

ユアはなぜか男装で、執事服を着て短剣を装備している。

「特別なことは必要ないわ。ユアのお父様を知っている人が居ればわかるはず。ただペルクールの雷を天空に放てばみえるでしょ?それでダメなら‥‥全力で逃げるわ!」

「‥‥なんかカーニャらしいです」

アミュアはちょっと心配そうにするが、ちらとユアを見る。

カーニャもユアをみると頬をそめてくねくねしていた。

「ユア‥‥聞いてた?」

「聞いてない顔です‥‥」

「き‥‥きいてたよぉ」

ユアはあわてて表情を引き締めた。

まだ門前で話し合っていたので、不審そうな門番二人は警戒している。

「じゃあ‥‥やってみるね」

ユアの目が戦闘モードになり、二人から離れ門の中央に進む。

ジロリと館をにらみ、鋭い目線になる。

警戒する門番に動く時間を与えず、ユアは抜剣して天を突いた。

同時に両目は赤光を放ち、短剣は黄金の光に包まれ天に向け聖なるいかづちが放たれた。

ズバァアアン!!

晴天の空に黄金の柱が立ち上り、ビリビリと大気をふるわせた。

素早く納刀したユアは、念の為と門番を警戒し、二人の前ににじり出る。

門番二人は腰がぬけたのか、ひっくり帰って地面からユアを見つめ口をパクパクしていた。


結果としてはカーニャの作戦は功を得た。

応接に通され当主だという中年の男性が会ってくれたのだ。

「おどろいた‥‥エルナそっくりだな‥‥」

向かい側に座った上品な男性はユアをみて、微笑んだ。

「私はカルディス=エイルマルク。現当主にしてラドヴィス兄様の弟だよ。初めましてユア‥‥君は私の姪にあたるね。エルナとも幼い頃から一緒だったのだよ」

すこし淋しそうに微笑むカルディスは、ユアにエルナの面影を見ていた。

にっこり笑うユアも返事をした。

「今日は突然きたのに会ってくれてありがとう。おかあさんとおとうさんの事覚えていてくれてありがとう」

カルディスの微笑みに涙がそえられる。

「‥‥まちがいない‥‥兄様のえがお‥そっくりだ‥‥」

うっと、嗚咽をもらし顔をうつむかせるカルディス。

ユアはおろおろとするのだが、アミュアとカーニャはもらい泣きで目を赤くした。


落ち着いてからお茶を出してもらい、話しをすることとなった。

「すまない‥‥取り乱してしまい。恥ずかしい所を見せたね」

やさしそうな笑顔はとてもユアにも似ていて、アミュアはどきっとした。

「いいえ‥‥不躾な訪問をお許しくださいエイルマルク辺境伯さま。わたくしはこれなるユアの伴侶でアミュアと申します。お見知り置きを」

アミュアはここの所のエリセラの教育が生かされている。

カーニャも背筋を伸ばし続ける。

「ご配慮によるお時間ありがたく存じます。わたくしも伴侶たるカーニャと申します。どうぞお目汚しをおゆるしください」

ふたりともユアがちゃんと紹介しないので自分で宣言した。

「あの‥‥そうなのです‥‥失礼があったら色々ごめんなさい。あたし村の子として育ったので礼儀をしらないのです」

ちょっとびっくりしたカルディスだが、理解は早かった。

「なるほど。お二人にも姪の伴侶としての配慮をさせていただいてもよいかな?私こそ無礼があったら許されよ奥様方」

そういって会釈してくれるカルディスは、かなりできた人物だろうとカーニャは判じた。


今までの経緯をかいつまんで説明するだけでも、かなり時間を要した。

辛抱強く聞いてくれるカルディスは、途中でお茶を追加する配慮まで見せる。

態度は一貫して親戚の相談を受けていると崩さない。

あまり貴族ぶらないその言葉と、ちらりと見えるやさしい表情はユアにとても好感を与える。

(きっと‥‥おとうさんはこんな雰囲気だったのかなあ?)

そう思いちょっと頬を染めていた。

「残念だけどカーニャさんの言う通り、現在のミルディス公国には繋がりのありそうな家はないね。うちの子爵家でヴァオルクスと言う家があるが、記録に残る範囲で起きた家だから関連はないだろう」

派閥内の貴族家の親族関係は、廃嫡されてさえ記録に残るし、カルディスは真面目に4世代程度まですべて諳んじている。

話を聞けば自分と同年代ほどの男性と思われ、他派閥まで記憶を手繰ったが該当はなかった。

ふと思い出したように話し出すカルディス。

「そういえば‥‥昔読んだ本に西の帝国の話があった。たしかゼフィル・ヴァルカ帝国と聞いたな。首家はヴァルクリオと書いてあった‥‥ヴァルクも翼を表す古代の言葉だ」

カーニャは自分の推論に少し支えと掛かりを覚える。

「ありがとうですカルディス叔父さま‥‥今日はお時間をありがとうございました」

ユアはあまり真面目にエリセラの授業を受けておらず、ちょっと後悔したが、誠意は見せようと思い深く礼をする。

あわてず礼にのっとり、少し遅れてアミュアとカーニャも揃って頭をユアよりも下げた。

微笑ましく見つめたカルディスはそっと右手の指輪を抜き、ユアに与える。

エイルマルクの紋章の入った金の指輪だ。

「これを見せれば私の意思となるよ‥‥いつでも訪ねて来てほしい。ユアは私の姪なのだからね」

そういって両手でユアの手を包む。

ユアは頬を染め、はにかむように笑った。

こうして縁の薄いユアに、血の繋がりを認めてくれる貴重な人物に出会ったのだった。

アミュアも涙ぐみ手をもみ、カーニャも目を赤くして微笑んだ。

ラドヴィスは一度エイルマルク家を廃嫡されたが、のちに国を救った英雄として名を残している。

エイマルクではなく、ルクス・シルヴァの性とともに。





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