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【第49話:おもいがけぬ繋がり】

予定の日程を過ぎ、二日目の夜には全メンバーがエリセラの部屋に戻った。

ヴァルディア家のスタッフ二人は用事を頼み別の街に出張中である。

「まずは皆さんお疲れ様です。夫のために惜しまず働いてくれたこと嬉しく思います。必ず報いたいと想いますので、どうか今後ともお力添えをお願い致します」

硬い礼の挨拶のあと、にっこり笑うエリセラ。

「皆が無事で本当にうれしいわ‥‥決して危ないことや無理はしないでね」

そういって側にいたエイシスを心配そうにハグするエリセラ。

エイシスは真っ赤になり微笑む。

大き目ソファの揃えられた応接に座り、打ち合わせを始めた。

「エリセラさんやカーニャに聞きたいのですけど‥‥」

聞きづらそうにアミュアが口を切る。

「レオニスさんと影獣に接点はないですよね?」

レオニスの失踪時期と最近の影獣の動きが時期として重なっているので、関連を疑うアミュア。

アミュアの脳裏に浮かんだのはあの不気味な砂嵐だ。

エリセラが言いづらそうに話し出す。

「実は研究者として務めていた研究施設は賢者会の運営でした。後にマルタスさまの活躍であばかれた際に判明したのですが‥‥夫も私もそうとは知らず賢者会、ひいては影獣とつながっておりました」

研究所崩壊に乗じて実家に戻り、当時当主だったカーニャの祖母の尽力で、その過去は封じられ次期当主として生活し今に至ったと、エリセラは説明した。

「レオニスもその後は影獣との接触はなかったはずです‥‥」

そうしてエリセラは一旦口をつむぐ。

考え込んでいた皆の中、次はカーニャが発言する。

「お父様は‥‥どちらの出身かご存知ですか?お母様」

意外な質問だったのか、ちょっと考え込むエリセラ。

「ここ公都が故郷だとは何度かききました。とある家‥‥おそらくどこかの貴族家の出身だと」

エリセラは少し思い出すように、額にしわをよせる。

「家とはもう関わりがないと言われてそれ以上問うたことはなかったわ‥‥」

ショックを受けたようなエリセラの肩にそっと手を置くカーニャ。

「‥‥お母様‥‥お辛いでしょうけど、大事な手がかりですわ‥‥何か一つでも思い出していただけませんか?」

エリセラは目を伏せて答える。

「ごめんなさいカーニャ‥恥ずかしいのだけれど私はレオニスの事を調べることをしなかったの‥‥ただ人として出会い人として共に居ようと決めていたの‥‥たしか家名はヴァルケリオと聞きました」

「お母様‥‥決して責める気持ちはありませんわ‥‥」

カーニャはエリセラを抱きしめる。

貴族の婚姻で相手の家を調べないなどあってはならない失態だ。

研究所から身を隠し、立場を替えて隠れた身とは言え最低限は調べるのが普通だ。

「言いづらくて黙っていたのごめんなさい皆さん‥‥夫の言った家名はこのミルディス公国には存在しませんでした。私の聞き違いかと、今日も家人に調べに行ってもらって言いますが、似た名前の家すら無いのです‥‥」

エリセラを抱きしめながら思考を加速させるカーニャは、いつもの推理思考を続ける。

(ミルディス公国はかつて太古にあった王家に承認された神殿が元になる国)

(貴族といわれる家は神官の末裔‥‥そもそもの王家とはつながりは少ないはず)

(西部にあったという伝説がある王家‥‥ミルディス公国を従えていた帝国‥‥)

(砂漠に沈んだ過去の国は‥‥ゼフィルヴァルカ‥‥薄いが因はある)

(ユア達の見た異変‥‥影獣の被害から考えられる発生点‥‥)

(‥‥ゼフィルヴァルカ‥‥ヴァルケ‥リア‥‥どちらも古代語の翼の意をもつ)

纏まりそうでまとまらない思考をすべらせるカーニャ。

「こちらの貴族家でお話をきけませんかねえ?」

ラウマが思案顔で提案。

「繋がりのある家はございませんので‥‥つなぎを準備するのに少し時間がかかりますが‥‥」

エリセラもヴァルデン王国の貴族経由でミルディス公国との繋がりを思い起こす。

あっとアミュアが思いついてこぼす。

「ユアのおとうさまとおかあさまはミルディス公国の貴族でしたわ!」

『ええええ?!!!』

ショックを受ける一同。

ユアまで驚いている。

じとめのアミュアがユアを見る。

「ユア‥‥一緒にラウマ様にみせてもらいましたよ‥‥おとうさまとおかあさまの馴れ初めを」

ぽんと手をうつユア。

「ああ!そういえば」

じーっとユアを見つめる一同。

ありえないと顔に書いてあった。

「たしか‥‥ご両親さまの実家はエイルマルク辺境伯家とカリスフェン子爵家 と聞きました」

どちらもミルディス公国では中核ともいえる派閥の貴族だ。

神殿をいくつか傘下におさめる一大派閥の長家が辺境伯だ。

「でもぉ‥‥なんの証拠もないよ?あたしには」

考え込むカーニャが提案。

「今は一つでも繋がりにかけるしかないわ‥‥私も行くから明日尋ねてみましょう‥‥アポイントが無い方が言い訳が聞くかも?」

アポイントの伺いをすれば、調べる時間と疑い、避けられる時間も与えてしまう。

カーニャはそのように思考した。

「ユアさん‥‥お願い出来るかしら‥‥」

エリセラも気は進まないのだが、他に手がかりがなかった。

エリセラの瞳に悲哀をみつけるユアは決断する。

「はい‥‥あたし何も出来ないかもしれないけど一生懸命お願いしてみるよ!」

「わたしも一緒にいくよユア。そばにいるよ‥‥」

そういって手をとるアミュアに頷き返すユアであった。




エイルマルク辺境伯の公都エルガドールにおける公館があった。

中央通りの正面突き当たりにある巨大な城のひざ元に、広大な敷地を与えられた館がある。

大きな厩や練兵場、兵舎まで備えた館は、砦のような雰囲気。

守衛の兵に取り次ぎを頼み、三人の少女が立ち尽くしていた。

「で‥‥でっかいね」

「うん‥‥」

「辺境伯なら侯爵と同格よ、これくらい普通だわ」

カーニャは落ち着いているが、二人は手をつなぎあいカーニャに隠れている。

「堂々としていればいいの。貴族なんて偉そうにするのが仕事みたいなものよ」

にっこり笑いかけるカーニャが頼もしいユアとアミュアであった。


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