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【第40話:仲良しがそれぞれ】

水平線にもくもくと白い雲が浮いている。

かなり高くまでもりあがる雲が夏を示し、快晴のそらに添えられた。

白い航跡を引きコバルトブルーの海原を船は進む。

王都で魔法大学にも寄り、エーラから船を借りていた。

「どうせわたしが帰宅しないとドックに浮いてるだけだから、是非使ってあげて!」

とエーラも喜んでいた。

そして、全部片付いたらまた島に遊びに行こうね、とも。

その真剣な瞳には、成し遂げる意思が静かに灯っていた。

エーラは引き続きアンチカースパヒュームのデバイス開発を続けている。

大分ミーナもレティシアも自分のコントロールを高めているが、いまだに発作は起きるのだった。

エーラはこの呪をなんとかしようと研究を続けていた。

そして、実家のマルタ商会から船員ごとこのエーラ所有のスクーナー『シルフィーユ』を借り受けたのだ。

この20人はのれる高速船は、魔帆併用で動かせてかなり船足が速い。

マルタ商会の資産と技術を惜しみなく注ぎ込み、エーラ博士の改造が加えられていた。

「すっごい!はやぁーい!」

船首にあるシルフの船首像にのりあげてノアが叫んでいる。

実際そこいらの高速船では追従できない速度が出ている。

水と風の複合魔法が組まれているのだ。

船と水の抵抗を減らし、風魔法が船底のタービンを回し換気やスクリューの動力になる。

無風でも最大速度30ノットを超える。

今は美しい白い帆が二本マストに貼られ追い風を捉え、32ノット程度の船足だ。

操船は3人乗り込んでくれたマルタ商会の熟練の航海士達が担当している。

中央の丸いテーブルではエリセラを中心に皆で授業中だ。

エリセラはとてもやりがいを感じるのか輝く笑顔で指導していた。

ノアは逃げ出してあちこち探検中だった。

黒地にパープルの縁取りがかわいいショートパンツに、生成りのティーシャツを袖まくりで着ている。

「今日はいい風なんで暗くなる前に港にはいりやすぜ!お嬢!」

「ふむふむ。かぜでかわるの?」

「さいでさぁ!あの帆で追い風にのるんですよ!」

元気に前甲板で作業していた航海士のおじさんと話すノアは、作業にも興味津々。

あちこちを回って、船の仕組みや操船を教えてもらっていた。

基本的に沿岸の航路上を進み、3日置き程度に港がある。

これは交易路としてマルタ商会を含むポルト・フィラント全体が保守している沿岸貿易航路である。

その港間の距離をこのスクーナーは1日で走り抜けるのだ。

広大なユラ海の沿岸に引かれた、命綱のような細い航路。

かなり距離はあるが、沖合を軍船がすれ違っていく。

くろがねの艦影は巡洋艦ほどのサイズで、シルフィーユはすれ違う挨拶なのか霧笛をフィィ!と鋭く鳴らした。

ブォォと軍艦からも返笛が太く還ってきた。

ポルト・フィラント所属の沿岸警備であろう。

航路はそうやって守られているのだった。




一つ目の港は基本的には補給港だった。

資材や食料品の補給がメインで、入港しても普通は下船しないそうだ。

今日は区切りがいいので、この補給港のある小さな湾内に停泊し、夜を越すこととなった。

日中はノア以外は勉強して過ごしたので、夜は自由に遊んでいいとなり、6人はそれぞれに夜の海をたのしんだ。


「すごいです‥‥夜光虫ですか?砂浜が光っています」

エイシスはぽーっとその幻想的な風景に見入る。

ざざんと波の音にあわせて青白く幻想的な光を放つ。

今夜は月がないので、くらい海の先に波打ち際を彩る自然のショーが見れたのだった。

「きれいね‥‥」

ラウマもとなりでエイシスの腕をとり肩に頭をよせた。

青白い光りがうかんではにじみ消えていく。

儚くも美しい光にラウマは何をおもうのか、静かに見つめ続けていた。

ラウマの瞳に複雑な色合いを見つけ、エイシスも少し考えてしまう。

この姉がしあわせだと言いいる今の自分達の幸せを。

「ラウマねえさま‥‥もっとぎゅってして」

「うん‥‥エイシス‥‥あったかいな」

寄り添うだけで、言葉はそれ以上なかったが、だんだんとラウマの笑みは深くなり、エイシスも柔らかな顔を取り戻す。

(そっか‥‥これもすごく幸せなんだわ‥‥姉さまもいるのだしね‥‥)

エイシスの中にも新しい幸せが生まれていくのだった。


「ほらみて!ユア」

「おぉ!すごい!」

船首寄りの低い方のマストによじ登って二人が、ヤードの横木に腰掛けた。

ノアは片手でマストをもち横木に立ち上がっている。

航海長のガストンあたりに見つかると怒られそうで、夜にこっそり登ろうと考えていたノアが、ユアを連れてきたのだ。

それなりの高さになり、港全体が見渡せた。

今夜は風もしずかで、波も穏やかなので、港の灯りが全て湾内に映り込んでいた。

「きれい‥‥」

ユアはうっとりとながめていた。

ノアも隣にすわり、ユアの腕をとる。

「うん‥‥すごいね‥‥海から見るのは初めてだな夜景」

すりすりとノアがユアの二の腕にほおずりする。

ユアは上にノースリーブのシャツ一枚なのでノアはたっぷりすべすべを堪能した。

よしよしとユアもノアの髪を撫でてあげる。

「‥‥ねぇユア‥‥きいてもいい?」

「なにかなぁ?」

「どうしてユアはラウマを愛してあげないの?」

「‥ノア‥‥ラウマのことも大好きだよ?もちろんノアのこともね」

じっとユアをみるノア。

ノアもユアと似ていて理屈よりも直感で感じ取るタイプだ。

「ノアのことも好き?」

「もちろんだよ」

「じゃあキスして」

ノアはちゅーと口を尖らす。

ユアはこまった眉。

「‥‥ノアどこでそうゆうの覚えるのかな?」

「ノアとはしたくない?」

「したいけどしないよ」

「‥‥そっか」

ユアの瞳に何をみたのか、嬉しそうににっこりわらうノア。

「ユアはやっぱりユアだね!」

「‥‥へんなのぉ」

ぎゅっと腕にしがみつくノアはなぜかとてもうれしそうにするのだった。

ユアも最後はにっこりといつもの微笑みに戻って、すりすりとノアの髪に頬をつけた。




中央部にあるラウンドテーブルは、半周する座席が船体に据え付けてある。

柔らかなシートに大きくふわふわのクッションがいくつも置いてあった。

その一つをだきしめてカーニャによりかかり、せなかで押すアミュア。

カーニャもクッションを背負いすわっていたので、二人がクッションで挟まれた。

「おしおしするなぁ」

カーニャがおされて文句をいう。

「カーニャあったかいな」

アミュアはにこにこしている。

おしおしはアミュアの愛情表現でも有る。

むにゅっと押し返すカーニャ。

「もっとさ小さかった頃のアミュアはさ、体温たかかったなぁ」

「そうなの?」

出会った頃のアミュアは10才程度の容姿で、かなりカーニャより小さかったのだ。

「うんうんねちゃった後によくユアとシェアして楽しんだわ」

「ひゃあ」

「ほっぺとかやっこくてたまらなかったわ。ユアと両側からつんつんしてね、起こしたら負けゲームしたわ‥‥アミュア起きなかったけどね!」

「ひどい!弄んでたのね!」

「それわもぅ!」

「むぅ!」

ほっぺを昔と変わらずぷっくり膨らますアミュアに、愛おしいと思うカーニャだった。

それぞれが、それぞれの仲良しを知り、相愛を育む優しい夜になった。


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