【第39話:港町で親交を深めます】
ヴァルディア家を出てから7日目。
エリセラ魔導女男爵はポルト・フィラントに至った。
マルタ商会から迎えの馬車が来ており、駅前に横付けされていた。
「奥様、こちらにございます」
「ユアお荷物をお持ちして、ノア後方警戒」
エイシスがエリセラの手を引きエスコート。
アミュアはテキパキと下男(?)に指示を出す。
エリセラの横でハテナ顔のラウマ。
「しっかり仕込まれている?」
「うふふ、次はラウマさんね。船でしっかりお勉強しましょうね」
「えぇ‥‥」
「お嬢様こちらです」
ユアがカーニャの手を引きエスコート。
エイシスとアミュアはメイドの格好なのに、ノアとユアは執事服。
非常にハマっていて違和感がないのだった。
ラウマとカーニャはカジュアルだがドレスを着せられている。
そうして家人(?)達にかしずかれ、マルタ商会へと向かうのである。
マルタ商会から来た下男の馭者は、普通に貴族の一行なのだと受け入れ、本店に向かった。
マルタ商会では普通に貴族の訪問を受ける想定で準備されていたので、一行は問題なく部屋に通された。
「はい、ご苦労さま。アミュアさんもエイシスさんも素晴らしいわ。次は交代して船ではドレスよ」
「エリセラさん本当にありがとうです。とても勉強になりました」
アミュアは私服に着替えて、しっかり御礼。
エリセラにたいする尊敬度がハンパない。
ハンター生活では学びようがない一般と貴族の知識、礼節まで勉強しつづけたアミュア。
「奥様、エイシスもとても勉強になりました。ありがとうございます」
そういってエイシスもお辞儀をする。
「ふふ、エイシスさんも船でドレスの動きも覚えましょうね、とても優秀な生徒でしたよ」
そういってエリセラはエイシスをハグする。
「エリセラさま‥‥もったいない」
「あらあらすっかり家人になってしまったわね、次はわたしの娘としてあつかいますからね」
そういってほほまで付ける深い包容にかわるエリセラ。
エイシスはすっかり真っ赤になるのだった。
ユア達もちゃんと女の子の私服に戻り、エリセラに甘える。
「カーニャママさんノアもだっこ!」
「ユアもだっこ!」
「あらあら」
左右から抱きつく二人をよしよしするエリセラもまんざらではない。
なにしろ6人も娘が増えた気分なのだから。
カーニャとラウマはアミュア達から引き継いで、メイド服を受け取っている。
船旅ではラウマ&カーニャのメイドがご奉仕係なのだった。
晩餐では全員でドレスに着替え、ロレンツォ達の歓待を受けた。
「すばらしい‥‥エリセラ様今度是非うちの娘にも教育をお願い致します」
ユアとノアは置いておいて、ラウマ以下4人の淑女の動きに感動するロレンツォ。
「とくにアミュアさんとラウマさんは去年の姿をみていますからねぇ‥‥」
じとっとみられて頬を染めるアミュア。
「おほほ‥‥」
片手で口元を隠すアミュアに全員の笑いが降り注いだ。
歩き方から座り方まで徹底した指導。
エリセラのそれは心構えから入る、まさに娘に向けた丁寧な指導だった。
こうして貴族子女4人+元気な女の子二人が出来上がったのだった。
「そうですか‥‥ご心痛のことでしょう。先日ラウマさんから伺っておりましたので、ウチの支部にも連絡入れて調べさせております」
ロレンツォは心配そうにエリセラに伝えた。
妻のシレーヌも年齢も近く共感するところが多いのか、ハンカチで涙を拭いていた。
「エリセラさま‥‥どうかお気をおとさぬよう‥‥わたしくしもお祈りしておりますわ」
そういって赤い目で見つめ合うのだった。
シレーヌもまた絶望の淵からユア達に救われた一人で、ロレンツォ共々ユア達に返しきれぬ恩義も感じていたのだ。
大人たちがそうして親交を深める中、まったましたと元気にお風呂の娘たち。
「ひゃっほぉお!!」
「こら!ノアはしっちゃだめ!!」
ざっぱあぁああん
アミュアの叫びもむなしく、時既に遅く全裸で湯船に飛び込むノアであった。
「あのときはもっと人数多かったよね」
「うんうん、さわがしさは同じレベルだけどね」
いつかの夏休みのように、マルタ家の女風呂にきている6人。
ノアとアミュアがじゃれて遊び、ラウマとエイシスも楽しそうに側でつかっている。
ユアとカーニャは奥の座れるところで今日もくつろいでいた。
「あれから‥‥一年もたつのか」
「‥‥すごい一年だったね」
懐かしむユアの肩にぺとっとよるカーニャはしみじみ答えた。
すいーとアミュアとノアが背泳ぎしているのが見えた。
エイシスは泳げないからと、ラウマが背中を手でもち背泳ぎさせる。
普通に泳げる大きさのお風呂なので、これから船旅だし泳ぎを練習などと4人で騒いでいるのだ。
「あはっなんだかプールみたいになってるよ?!」
「ほんとだぁ‥‥ユア!私達もいこう!」
「えぇ?!」
カーニャはにっこり笑ってユアの手を引く。
戸惑ったユアも直ぐににっこりになり、走り出した。
「よぉぉっし!ユアが教えてあげるよ!泳ぎは得意なんだ!!」
元気いっぱいに合流していくユアに慈愛の微笑みを向けるカーニャ。
「なんて幸せなんだろう‥‥絶対にお父様を連れ帰って、この幸せをまもるわ‥‥もうユアを泣かせない!」
カーニャは噛み締めた幸せの分だけ決意するのだった。
その夜は2つのグループに分かれて休んだ。
客室は基本的にツインかダブルしかないと言うので、ダブルを2つ借りたのだ。
ユアはアミュアとカーニャと三人で、ノア・ラウマにエイシスで一部屋だ。
客室のベッドは大きく、娘三人なら十分な大きさだった。
客室は広い廊下を挟んで向かい合わせ対称の作りだった。
すでにラウマ達のへやではノアが「よいでわないか!よいでわないか!」と、エイシスとじゃれあい始めているのがドア越しに見える。
「おやすみラウマ。あんまりエイシスを可愛がりすぎちゃダメですよ」
にっこりのアミュア。
「大丈夫よ、明日に備えて早く寝ないとね‥‥アミュアこそ夜ふかししないようにね!」
あはは、と声を残してラウマも向かい側の部屋に消えた。
「ひどいわぁアミュアを夜ふかしなんてさせないのにねぇ」
「ほんと、ちょっとお話したり、色々するだけなのにね」
「あうあぅ‥‥お手柔らかになのです」
両側からホールドされるアミュアが、真っ赤になってユアとカーニャに連れて行かれる。
何しろ新婚さん+新婚さんなのだ。
6人の長い夜がそれぞれに消化され、とても仲良しになっていくのだった。




