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【第35話:すぐにスリックデンに行こう】

「あたしが前ですぅ!」

「ずるいわ!私だって前が良い!」

ひまわりハウスの庭先で、ユアとカーニャの間に火花が散っている。

「どっちでも良いから早くして!」

ぶんぶん腕をふるアミュアは急いでいた。

青空がもくもくと大きな雲を従え、三人を見下ろしている。

もう夏が始まるのだ。




「手紙あずかってきたよ!」

ノアがイーリス達姉妹と遊びに行っていて、戻り足にカーニャ宛の手紙を持ち帰った。

裏書きにはミーナ・ヴァルディアとある。

マルタスがイーリスに、そこからノアを経由して今カーニャに届いたのだ。

「ミーナからだわ!えへへちょっと読んでくるね」

そういってひょいとロフトに上がるカーニャ。

妹から姉宛なのだから、一人で読んだほうがいいと思ったのだ。

その姿を見上げノアがこぼす。

「‥‥なにげに今すごいことしたよね?カーニャ」

うんうんとユアとアミュアも頷く。

魔法の気配はなかったので、自力で一足にロフトに飛び乗ったのだ。

手すりにふれず、片手に手紙をもったままだ。

ユアも手すりにさわれば同じ事が出来るかなとは思った。

ノアは天井に一回あたっていいならと思った。

力もだが、その制御に感心したのだ。

しかも正確に自分のベッドに横になり着地しているのだ。

ほとんど音もなく。

三人で不思議そうにしているとカーニャが顔を出す。

「たいへん‥‥急いで実家に行かなきゃ!」

カーニャはラウマとエイシスも呼んできてと、庭を指差す。

今二人は外でひまわりを見ている所だった。

最近のラウマとエイシスはとても仲が良い。


レオニスが行方不明になり、エリセラが寝込んでしまったので、困っていると書かれた手紙。

ミーナからとなっていたが、中身はレティシアの手紙だった。

ミーナもかなり弱っているので、カーニャに来て欲しいと書いてあったのだ。


「だめ!ぜったいユアも行く!」

「アミュアも行く!」

「じゃあノアも!」

「そもそも飛行魔法の方が速くないですか?」

わがまま放題の話にラウマが水を指す。

『それだ!!』

飛行魔法の伝道者たるアミュアまでが同意して、6人で行こうとなった。

スリックデンまでならラウマも無補給で飛べる距離なので、二人づつ運ぼうとなった。

そして冒頭の争いが起きたのだ。

「アミュアのむねはあたしのものだ!」

「いいえ結婚したいまは私のものでもありますぅ」

「いいからもういくよ!!」

結局ふたりの首根っこをもったアミュアがラウマを追いかけて飛び立った。

左右の胸に一人ずつ甘えん坊の子供を抱くように、アミュアはユアとカーニャを両手に一人ずつ抱いて飛んでいる。

「ふふ、こうすればよかったのだ」

「そうね!ユアナイスだわ」

ユアとカーニャがアミュアを半分ずつシェアして頬ずりしていた。

どちらかが背中と言い争っていたのだ。

「‥‥あんまりぎゅってしないで‥‥集中できなくなるよぉ」

二人がかりで抱きつくので、アミュアはちょっと困って頬を染めていた。

夜も一緒に三人で寝たりするので、ユアもカーニャも遠慮がない。

「あ、ラウマがみえました」

アミュアの報告で前方を確認する二人。

「1時方向仰角」

手短な説明だったが、二人もすぐ見つけた。

キィィと空気を切り裂いて、ラウマの横まで上昇するアミュア。

ラウマのお腹にノアが前抱っこで、背中にエイシスが寄り添うように乗っている。

カーニャが結界魔法を再展開し、6人全員を覆う風の結界を貼った。

「ラウマ結界の中を飛ぶと楽よ!」

カーニャの声に頷くラウマ。

集中しているのか、言葉はなくいつもよりキリっとした顔だ。

近くに来たので、アミュアも手を伸ばしラウマの手を捕まえた。

「うん、6人全部ささえられそうだから、ラウマ休んでいいよ」

アミュアは再度詠唱した飛行魔法を二重発動し、ラウマ達三人もささえた。

「ふぅ‥‥アミュアありがとう、ちょっと休むね」

すでに半分以上の距離は進んでいたラウマに、アミュア達が追いついて合流出来たのだった。

街道の上を飛ぼうと決めていたので、見つけ安いように下から空をバックに仰角を見張っていたのだ。



バーン!

「姉さま!!」

ドーン!

カーニャがドアをバーンして走ってきたミーナをしっかり受け止めて、ひしと抱き合う。

「アミュア‥ちょっと淋しい?」

「いえ、これでいいのです」

にこにこのアミュアに心配そうなユア。

「アミュア!」

「よしこい!」

ドーン!

ちゃんとアミュアにもドーンするミーナだった。

ひしと抱き合うアミュアとミーナをみてほっこりするユアとカーニャだった。

ドーンのパワーにミーナの回復を見て安心したのだ。

「ミーナ‥‥またおおきくなりましたね」

「うん‥‥心配かけてごめんねアミュア。来てくれてうれしい‥‥」

エリセラのハグより大分パワーのあるミーナだった。




そっとドアを開けてカーニャは入室した。

カーテンがひかれたままで、部屋は薄暗かった。

「お母様‥‥」

「カーニャさん?」

そっとベッドの横までいったカーニャはエリセラの手を取った。

「お母様カーニャがまいりました‥‥お体大丈夫ですか?」

「カーニャさん‥ごめんなさいね心配かけました」

そういって半身を起こすエリセラ。

体調ではなく心の問題で寝込んでいたのだろう。

手を広げるエリセラにぎゅっと抱きつくカーニャ。

「お母様ユア達も来ているのです。起きられそうですか?こちらに呼びましょうか?」

「そう‥大丈夫起きられます。応接かダイニングで」

こくと頷いたカーニャは立ち上がるまではささえて、大丈夫そうと一旦退出した。


人数が多いのでダイニングにとなり、長机の両サイドに椅子も足してもらい8人が掛けた。

右の奥がカーニャの為に空けてユア、アミュア、エイシスと座り、向かい側の奥にミーナ、レティシアと座りノア、ラウマと続く。

奥の上座にエリセラが座り、寄り添ってきたカーニャがユアの隣に座った。

少しまだ顔色が悪いがしっかり微笑んだエリセラが口を開いた。

「みんな心配かけてごめんなさい‥もう大丈夫ですよ」

以外に力強い声にアミュアもユアもホッとした。

「少しだけ厄介な事となりましたが、あきらめませんよ」

安心させるようににっこりとエリセラは笑うのであった。





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