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【第4話:アミュアの想いいたる事】

エイセルはユアに救われ、目を覚ました時には全てが終わっておりただ涙を流して打ち沈んでいた。

とても大切なものを失ったのだと、誰がみても明らかだったので、詳しくは尋ねなかった。

「あたしのうちにおいでよ‥‥エイセル。これからしたい事を見つけるまでずっといてもいいよ」

そういってユアに誘われ、言葉少なに礼をいい従った。

歳はアミュア達と同じくらいで、身長もユアより少しだけ小さかった。

顔はイーリス達三つ子と全く同じだが、二才だけ歳上なのだった。

「よろしく‥‥おねがいします」

最初はそういった沈んだ雰囲気だったが、ラウマがいろいろと家事を教える内に、だんだんと笑顔を取り戻してきた。

最近ではラウマと二人で料理をしながら微笑んでいる姿も見られる。

しばらくイーリスも一緒なので、侍女ともどもおうちをお願いねとユアにも頼まれ、ちょっと真剣に頷いていた。

「お気をつけてユアさん。セレナさんとフィオナさんも居ますので、おうちはおまかせを」

頼もしく思うユアだった。



そうして、家とカーニャを任せるとユアとアミュア達三人で馬車を出した。

6人乗れる白い自動馬車だ。

今ひまわりハウスにはカーニャの使っていた3人乗りの赤いのと合わせて、2台の馬車が有った。

こちらはユア達がスリックデンで仕入れた豪華装備の高性能馬車だ。

運転席にはユアとアミュアが並び、夜霧にラウマとノアが騎乗して進む。

「じゃあ先にいって色々キャンプの準備すすめていますね」

「おさきー」

ラウマと手を降るノアが先行して今夜は祠の前で一旦キャンプの予定だ。

馬車は夜半には付く予定なので、二人には先に接続して女神ラウマに説明を頼んだのだ。

ユアは少しアミュアと時間が欲しかったので、馬車で行くのだった。

操縦するユアに肩を付け、こてんと頭を寄せるアミュア。

「アミュア‥‥ごめんね」

ユアの気持ちも詫びる意味も分かるアミュア。

「いいの‥‥わたしは幸せだよとても」

心から微笑むアミュア。

「あたしね‥‥アミュアのことはもちろん愛しているし誰よりも大切だと思っている」

ちょっと頬を染めるアミュア。

「うれしい」

きゅっと腕も組んで距離をつめるアミュア。

「あの円環の奇跡でね‥‥女神さまたちに言われたの」

アミュアは大事なおはなしかなとユアの顔を見る。

「うん」

にこっと笑うユア。

アミュアも安心して微笑みにもどす。

「カーニャを救うのは難しいと‥‥諦めるように言われたの」

「ユア‥‥」

アミュアは心配そうに見る。

ユアの声に悲しみがこもった。

「ペルクールの力を借りてカーニャを救ったんだけどね、代わりにあたしの命を要求されたの」

「ユア?」

「大丈夫‥‥結果としてはこうして生きてるよ」

「そんなの嫌だよ‥‥あのときユアが一回居なくなってわたし‥‥とても悲しかったの」

「あぁ‥‥ごめんねアミュア」

操縦を馬車まかせにして抱きしめるユア。

アミュアのほほにキスをして続ける。

「でもね‥‥全く迷わずいいよって言えたの。カーニャが救われるなら死んでもいいと思った」

「‥‥」

アミュアは声をあげず涙を流す。

「その時もしアミュアの命を求められたら、カーニャを諦めると言ったの」

「ユア‥‥いやだよ‥‥クスン‥‥そんなの聞きたくないよ!!」

がばっとユアのお腹に抱きつくアミュア。

「アミュア‥‥」

「そんな酷いことはなさないで‥‥アミュアはとても傷つきました‥‥」

わんわん泣き出したアミュアをそっと撫で続けるユア。

「命を選ばなくてはいけないなんて残酷だけど、あたし自分の命よりアミュアやカーニャの方が大事だと思えたの」

「そんなの‥‥‥‥いやだよぉ‥‥」

しばらくは無言でアミュアの嗚咽だけが流れ、小道を馬車は進んでいく。

「ユア‥‥」

長い時間の後にやっとアミュアは言葉にした。

「わたしはユアが死んだら、生きられません‥‥生きる意味がなくなるのです‥‥ラウマさまの元に戻ります」

ユアも涙がこぼれる。

「うん‥‥ごめんね‥‥アミュア」

ぎゅっと二人は抱き合う。

アミュアにもわかっているのだ。

ユアがそれだけの覚悟でカーニャを助けたいのだと。

ただ聞きたくなかったのだ。

二人が分かたれる未来など。

「ユア‥‥それでも‥‥カーニャもそれはきっと望みません」

「しってる‥‥これはあたしの望みだ‥‥」

ユアの眼には変わらぬ決意の炎。

マルタスの祈りで祠との接続を戻したラウマは、今まで見てきた様々な映像を見れるようにしてくれた。

はるかな過去からラウマが見つめてきた世界の記録だ。

それはとても外に出せる情報ではないので、アミュア達姉妹とユアだけの秘密にしていた。

そのなかでアミュアはユアの母エルナの映像を繰り返し追った。

アミュアはどうしても知りたかった、ユアを愛し育てた人を。

ユアの幸せを守って行くために。

その壮絶な人生と戦いの記録を。

アミュアは思い出していたのだ‥‥ラウマに見せてもらったラドヴィスとエルナの結末を。

そして自分には同じ事が出来ないと思ったのだ。

(ユアの眼はあの魔王に挑んだおとうさまの眼だ‥ユアとおかあさまを残してでも戦った‥‥‥‥勇者の眼だ)

アミュアは恐ろしかった。

その決断をユアがするときが来るのかと。

そうして恐怖にふるえながら思った。

(ユアのおかあさあま‥‥アミュアはどうすればいいのですか?‥‥その時‥‥アミュアは‥‥)

エルナはラドヴィスを見送った。

その必死の戦場に。

おなかにユアを抱えた身で送ったのだ。

その映像をみてアミュアはただエルナは凄いと思っただけだったが、同じ事を求められるとは一度も思ったことがなかったのだ。

そうして震えていた時に神託のように頭に浮かんだことが有った。

セルミアの銃弾からユアをかばったときだ。

(あのときわたしは何の迷いもなく、ユアをかばえた‥‥結果として命は保たれたけれども死んでいたかもしれない)

アミュアはどんどん混乱していく。

(それはユアがさっき言ったこととなにがちがうの?)

どんどん思考がまとまらないアミュアはただユアにすがっていることしか出来なかった。

どうかその時など来ないでと祈りながら。

かつて初めてこの道を通った小さかったアミュアと違い、今のアミュアはとても複雑な悩みを持つまでになっていた。




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