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【第31話:北にはカーニャの用事があった】

アミュアの飛行魔法はちゃんと詠唱して節約しても、ドラゴン並の速度が出る。

ワイバーンよりは少し遅いかな?くらいだ。

本気なら三倍ほどの速度で飛び、音の速度を超えるのだった。

今は前方に空気を切り裂くコーン状の風魔法の結界で、さらに抵抗を減らし燃費を意識している。

かなり移動距離があるのだ。

追い風時に高度を稼いであるので、ゆっくり降りるならもう加速を切ってもいい高さにいる。

「今度飛行魔法もおしえてよ!アミュア!」

「いいよぉ!!」

風切音は大分遮っているが、会話は叫び合わないと難しい。

アミュアは現代では失われている異世界の魔法を沢山習得している。

異世界の賢者ソリスの指導のたまものだ。

キィィィンと風をきりながら高度を落としていく二人は、前抱っこでカーニャがアミュアにしがみついている。

いろいろ試したが、これが一番楽で抵抗が少なくなるのだ。

ラウマには既にほとんどの魔法を継承しているが、カーニャにはまだ一部の攻撃魔法しか教えていなかった。

この世界では失われた第四階梯ともいわれる最上級の魔法だ。

まだ複合魔法に手を出していないので、そちらが先かなとアミュアは思う。

飛行魔法は風魔法と複合で使わないと燃費がとても悪い。

今日はノルヴァルドから回ってきた緊急依頼で、ホワイトドラゴンの成竜を探している。

村が2つ消えたそうで、クラスAの緊急依頼だ。

緊急依頼は一つ上のランクの報酬となるのでSクラスの報酬が出る。

カーニャは眼下に広がる雪原に万感の想いで目を向けた。

(すごい‥‥自分で飛べたらもっと楽しいんだろうな‥‥)

少し北方には悲しい思い出もあるカーニャだったが、今の幸せに必要なことだったなとも思うのだった。

アミュアは時々姿勢を替えて、うねるように飛行経路を調整しだした。

目視による索敵のためだ。

同時にカーニャも気付いて索敵系の広範囲魔法を放つ。

ちゃんと詠唱したので視界いっぱいに魔力が放たれた。

隠蔽しない魔力を放つのは、目標がこの辺りで最強の生物だからだ。

見つけてもらうのでもいいと考えている二人。

「でかいのはいないよ!!」

カーニャの報告にうなずくアミュア。

飛行魔法をカットして風魔法の結界によるグライディングに切り替える二人。

今度は並んでうつ伏せになり、結界に身を任せ下方を索敵した。




結局半日程度接敵するまでにかかった。

途中でスノーワイバーンの群れに襲われたが、二人の上級魔法が火を吹き瞬殺。

落ちていく死体は追わずに諦め、ホワイトドラゴンを探した。

それ以外にエンカウントは無く、無事白竜を見つけて討伐した。

カシャァ

アミュアの肩を抱いて近寄せ自撮りするカーニャ。

「えへへ、ユア達にもおくっちゃおう!」

「カーニャ無駄遣いですよ!」

魔導スマホの映像送信はかなり通信料がかかる。

「えぇ‥‥ユアもきっとアミュアの笑顔で喜んでるよ?今頃」

「‥‥うん‥‥でもお金はだいじなのです‥‥」

もじもじして赤くなるアミュアをぎゅっと抱きしめるカーニャ。

「う~んかわいいわ‥‥アミュアわたしとも結婚しましょう」

「ユアとお互い結婚したんだから、結婚したようなものでしょ?」

「もっと物理的に結婚した~い」

ちゅーと唇を寄せてくるカーニャ。

「いや~ん」

アミュアは真っ赤になり恥ずかしがって逃げてしまう。

「かっわいい!」

満面の笑みのカーニャ。

「さぁて、解体しちゃおうか!今夜はステーキね!」

カーニャから率先して解体を始めた。

ドラゴンの背中の肉は最上級の肉として有名だし、ひまわりハウスでも滅多に出ないご馳走だ。

「はーい」

二人は手慣れた手つきで解体を始めた。

ドラゴンは売却可能な素材もとても多い。

心臓から直接とる血液までが、素材として喜ばれるのだ。

倒し方で収入が変わるいい例でも有る。




カーニャの背嚢は高度な空間収納搭載で、全てのドラゴン素材を仕舞ってもまだ余力が有った。

現場は精肉所か大量殺人現場のように真っ赤に荒れ果てた。

「ねえ‥‥アミュアちょっとだけ寄り道してもいい?」

目を伏せるカーニャに何かを感じ取るアミュア。

「もちろんいいよ。飛んでいこう、指示をちょうだい」

にっこり笑顔のアミュアが答える。

カーニャはうなずいてアミュアに抱きつく。

詠唱が終わるとレビテーションでふわりと飛び立ち高度をまず取った。

「これくらいでいいわ!」

カーニャの指示で高度を止めて飛行魔法の詠唱にはいるアミュア。

あわせてカーニャも風魔法の結界を構築する。

「あっちの方向!高度はこのままいってね!」

「りょーかい!」

白い線を青空に描いて二人が移動を開始した。




カーニャの目的地はわりと近くて、すぐにたどり着いた。

ふわりと降りるころにはアミュアにも目的地が判明した。

一抱えの岩が真っ二つに切られ置いてあった。

(きっと‥‥おはかだ)

アミュアも師匠ソリスの墓を泉の祠に近い森で作ったので、どことなく雰囲気で察した。

カーニャはホワイトドラゴンを解体したあと摘んできた白い花を供えた。

小石を花にのせ飛ばないようにする。

それなりに風が強いので配慮したのだ。

しゃがんで手を合わせるカーニャを、シルフェニアで母に祈るユアと重ねてしまうアミュア。

よく見ると石碑のように置かれた面に文字が彫ってある。

名前と思しい部分をじっと見つめるカーニャ。

(友達なのかな‥‥カーニャ背中が淋しそう‥‥)

少し離れて見守るアミュアには細かなニュアンスがわからないが、大切な人のお墓なのだとはわかった。

「ごめんねおまたせ」

それなりの時間対話するように祈り、カーニャはもどった。

涙も流れていないし、目も赤かったりしないが、アミュアにはカーニャの心が泣いていたとわかる。

ぎゅっと抱きしめるのは、飛行魔法に移行するためだけではなかった。

「また‥‥いつでも連れてくるよカーニャ」

「‥‥うれしい。ありがとうアミュア」

すうっと飛び立ち、今度はそのまま速度を上げながらルメリナを目指した。

早くカーニャを幸せでくるんでしまいたいと、アミュアは急いだのだった。

(またね‥‥)

カーニャはこころの中で別れを告げるのだった。

心の中にだけ涙も添えて。





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