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【第30話:ラウマのたいせつな時間】

ノアが指導教官で居ないので、ラウマはユアを誘って街でお買い物。

アミュアとカーニャは、ノルヴァルドから来た緊急依頼に出ているので、エイシスをお留守番にして出ることにしたのだ。

「最初に服がみたいな」

「うん、あたしもちょっと下着をみたい‥‥またきつくなってきちゃった」

腕を組むラウマに、ちょっとティーシャツの胸元を開けて下を覗くユア。

ユアはまだ成長するようだ。

二人ともラフな夏着で肌色が多い。

二年経ってもアミュア達三姉妹は全く容姿に変化がなく、アミュアはちょっと悲しそう。

ラウマも全く同じボディラインで、変化がないがあまり気にしていない。

久しぶりの二人でお出かけなので、昨夜からとても楽しみにしていたラウマ。

(えへへ、今日はユアをひとりじめだよ‥‥しあわせぇ)

ラウマの思考はどんどんと普通の女の子になる。

いまでは口調もかなりそちらに寄ってきた。

ひまわりハウスはかなり郊外にあるので、繁華街まで距離がある。

ラウマはそれもとても幸せに感じる。

(ずっと街につかなくてもいいかも‥‥うふっ!)

ユアと二人で歩いている事自体が、ラウマには嬉しいのだ。

にこにこのラウマを見るとユアも幸せに感じるのだった。




少し休憩と、オープンテラスの喫茶店に座った二人。

「うぅん‥‥やっぱりオレンジの方がよかったかなぁ」

ユアは夏に向けて補充したティーシャツを引っ張り出して胸に当てる。

背中に大きめなニッコリ笑顔のお日様がプリントされて、左胸にも同じ小さなプリントと文字列。

色は生成りのクリーム色を選択していた。

文字列は『げんきいっぱいです!』とある。

まるでユアのためのデザインだとラウマが推したのだ。

「うん、オレンジもいい色だったけど、白の方がお日様がかわいいよ?」

ラウマは真剣にユアとシャツを見比べる。

お店で選んでいるときからラウマはやたらと真剣であった。

シャツはラウマからユアへの18才の誕生日プレゼントでもあったのだ。

「えへ、ありがとラウマ。とっても嬉しいよ!だいじにする」

そういって頬にぎゅっと当てるユア。

ラウマは頬を染めてちょっと瞳も潤んでしまう。

(よかった‥‥ユア喜んでくれた)

ラウマが選んだデザインの中から、ユアが色を選んだのだ。

それはラウマにとっては少し欲張りだと感じるくらい幸せを感じる時間だった。

「次は下着も置いてるとこいこうよ!試しに上のカップを試着したいんだ」

普段戦闘用にはサイズ調整の効く、魔導ブラジャーをするので、あくまでオフ用の下着の話だ。

魔導ブラジャーは空間魔法や重力魔法でサポートするので、動いても胸の負担がなく重心もブレない。

かなり高価なものだが、ユアの収入なら余裕で揃えられるのだった。

それくらい収入があっても、アミュア経済大臣の指導は厳しく、無駄遣いは怒られるので買い物には手間をかける。

(その手間がたのしいんだけどね。ありがとうアミュア)

ラウマはアミュアにも感謝を忘れない。

何よりも二人のユアの妻たちに感謝を送る。

(ふたりが働いてるのにごめんね‥‥ラウマは幸せです)

ちょっと急ぎの依頼だったので、アミュアの飛行魔法でカーニャを抱いて、今朝二人で飛んでいった。

恐らく問題なければ夕方にはもどると思われる。

ぴろんとユアの魔導スマホが着信。

「お!さすがだな」

そういって送られてきた画像を見せるユア。

画像の中で自撮りのアミュアとカーニャが、転がったホワイトドラゴンの前で笑顔でピース。

家族全員のグループチャットに貼ってあるので、ラウマの端末にも来ていただろう。

ラウマは朝から通知をオフにしていた。

二人の時間を邪魔されたくなかったのだ。

この非常に高価な魔道具は、各地にある中継施設を経由して、エリア内なら通話まで可能なサービスだ。

ただし非常に通信料金が高いので通話は非常用としている。

6人の家族皆にカーニャが準備したもので、恐らく金貨が何十枚も飛んだだろう。

笑顔のままのラウマだが、ユアは敏感に心をうけとる。

「きっと晩御飯にはもどるね!」

明るく話したが、目線にはすこし心配する色。

ラウマはニッコリしながらもあせる。

(あれ?へんな顔しちゃったかな?わたし)

ラウマもユアの微妙な変化を見逃さなかった。




結局一日中街をぶらぶらして、買い物するだけの日となった二人は、のんびりと道を戻る。

午後も遅くなったので、影が少し伸びて2つ並んでいる。

その影を追いかけるように歩幅を小さくラウマは歩く。

(ユアのほうが少し背がたかいのよね。影も少しだけながいな)

そんな小さな気付きが胸を暖かくするラウマ。

両手に買い物した袋があり、少し重い。

その重さは戦果であり、ラウマが過ごした幸せな時間の成果なのだ。

ユアも沢山荷物をもち、最後に買った食料品まで持っている。

二人の影もよくばりに沢山の荷物を抱えていて、ラウマは急に胸が苦しくなる。

(ダメ‥‥お家に帰ってお風呂にはいるから‥‥それまで我慢して)

じわっとうるみそうになる瞳をがんばってこらえるラウマ。

(とても幸せな一日だったし、これからもまた続いていくのよ)

大きな荷物は大きな幸せで、ラウマの消費した時間にも見える。

有限な時間だ。

こつこつと靴音がなるのが、残り時間を刻むように聞こえて、ラウマは笑顔を保つのに努力が必要だった。

ユアは何も言葉を出さず、時々ラウマを見て微笑む。

たのしかったね。

そう言われているのだとラウマにも解る。

にっこり笑みを深くするラウマは伝わると良いなと思う。

(わたしもたのしかったよ‥‥ありがとう)

この感謝がちゃんと感謝で伝わるようにラウマは祈った。

あと少しの道のりが短くも、長くも感じるラウマだった。

今夜はドラゴンのステーキになるのかなと、ふんわり笑顔で思うのだった。

本当の心を隠すように。



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