【第29話:ノアせんせいの指導】
ルメリナで最近ハンターになり活動を始めた娘たちが何人もいる。
少し遡れば近年とても多いともいえる。
また直近に王都より移動して住所を移したクラスAのハンターも女性だ。
ルメリナハンターオフィスは、稀にみる華やかでにぎやかな、戦力の充実した支部となっていた。
「今日はノアが指導にあたります!」
『はい!ノアおねえさま!』
ノア教官の前には直立不動のにこにこ笑顔。
イーリス達三姉妹だ。
ノアはクラスCにあがり半年になり、ラウマと共に実績も十分つんできた。
近々Bに上げようかとも話が出るほどだった。
その中でクラスアップの必須事項にメンター実績がある。
下位クラスの指導実績を求められるのだ。
これはバディでは無く個人に課されるので、ノアとラウマ交代で指導に当たっている。
すでに3回めの指導日となる。
「えへへ。がんばろうね」
最近練習中のへたくそなウインクは少女達の緊張を解してくれた。
「・・・ノア、くれぐれも無茶すんなよ」
カウンターのマルタスは心配そう。
「パパ大丈夫よ!」
「心配しすぎよおとうさん」
「わたしがしっかりみてきますわ、あなた」
姉妹はだいたいマルタスを義父としてあつかう。
「イーリス‥‥あなたはやめろと言ったぞ」
「はぁい‥‥いってきますおとうさま!」
ノア達を追いかけてイーリスも笑顔で出かけるのだった。
「・・・やれやれ‥‥ユア達が安心できるようになったら、今度はノア達で‥‥それもいいかと思えば三姉妹か‥‥なかなかおちつかねえな」
ポンとマルタスの肩に手を置くローデン副所長。
「落ち着くために書類仕事はいかがですか?しょちょー?」
ひくひくと青筋が浮いていた。
「・・・お、おぅ」
そのまま肩をにぎられたまま所長室に連行される青い顔のマルタスを、あたたかい目で見送る所員たちだった。
今日は依頼も来ていたので、ちょっと奥地の村にゴブリン退治にきている三姉妹。
現地まではノアペースの駆け足だったので、身体強化魔法まで使った三姉妹は到着時点で汗まみれだった。
もちろんノアは涼しい顔で強化なしだ。
森の中に高い声が流れる。
「イーリス!おねがい」
「おけー、お任せよ!」
エーシスがヘイトコントロールで群れを集める。
思っていたより数が多かったので、手こずっていた。
両手持ちの細身のロングスピアが五月雨のように一列に並んできたゴブリンをまとめて何度も突く。
槍を使うようになって半月で、イーシスの手際はさまになってきた。
打ちもらした数匹をバックラーと長剣でなぎ倒したエーシス。
「ほらほら、エーリスがかこまれちゃうよ?」
木の枝にすわるノアから指示が出る。
もう一枚の前衛を張っているエーリスが枚数差で回り込まれつつ有った。
『はい!』
元気よく返事をした二人は応援に駆けつける。
「まぁエーリスならソロでもいけちゃうけどね‥‥連携の練習なんだから」
ノアは、最近になりユアの動きや指示から、部隊指示の真理を掴みつつ有った。
「あとは素材回収かな」
にっこり笑ったノアも枝を伝い跳ねて、移動する。
少し視界から三人が切れかけたのだ。
すっかり後始末まで済ませた三姉妹はノアの総評を聞きながら、食後のお茶だ。
午前で依頼を片付けてしまったのである。
ノアの要望でお茶はミルクココアとなった。
三人も好物なのでにっこにこで飲んでいる。
「イーリスはどうしても間合いが遠いね。さがりがち」
「はぁい」
本来魔法職のイーリスだが、アミュアもラウマも近接をちゃんと学んでいる。
間合いを無くされた時や、最悪魔力切れでも生還出来るようにと、ルメリナでは標準で魔法職に接近戦を仕込む。
今日はノアの指導なので、イーリス達は魔法禁止で依頼に挑んでいた。
「エーシスはイーリスを気にしすぎ」
「はいぃ」
ちょっとしょんぼりのエーシス。
三人で唯一の盾職なので、本来はヘイトコントロールの主役だ。
「もう少しイーリスを信じてあげよう?」
「うん!」
ノアがフレンドリーに指導するのでついついエーシスも甘えてしまう。
「エーシスだめだよノアねえさまは今日は先生だよ」
三姉妹の長女的ポジションのイーリスが注意する。
「はぁい」
ごめんねの意味でぎゅっとイーシスと腕を組む、末っ子ポジのエーシス。
「エーリスは立ち回り良いんだけど、連携がまだまだだよ?」
「はい、周囲の動きも見れるようにします」
エーリスは真面目に受け答えた。
「魔法なしでもランクCまではきっと大丈夫だね。今日も合格だよ」
『ありがとうございました!』
締めくくったノアに、ちゃんと立礼で御礼をする三人。
「早めに戻れそうだし、お買い物いこうよ!」
ノアが教官は終わりと、にっこりいつもの笑顔。
「わぁい、いくいくぅ」
エーシスがノアの腕にも抱きついて甘える。
よしよしとするノアはでれでれだ。
「わたし武器屋もみたいですノアねえさま」
真面目なエーリスが、新しい鎧を気にしている。
最近新調した小手がちょっと合わないようだ。
「いいよぉ、イーリスはみたいとこあった?」
「‥‥わたしは下着がみたいです!大人用の!」
「う‥‥うん‥‥」
ノアはイーリスの胸部を観察。
三姉妹はまだまだ大人の身体には遠かった。
「まあ‥‥付け方も慣れないとだしね‥‥」
あたたかな目で姉妹を見守るノアだった。
森のお昼はとてものどかで、チチチと小鳥が飛んでいき、さわりと葉をならすそよ風。
だんだんとぬるくなる風にノアは目を細め微笑む。
もうすぐ夏が来るのであった。




