【第26話:いちばんしたの妹を】
「それでは徹底的に解剖します」
「いいぞ!やってしまおう!」
地下室の大きなダブルベッドに三人の姿。
中央に寝かされたエイシスを、薄手のキャミソール一枚のノアとラウマが正座して見下ろす。
「くすん‥‥解剖はいやです‥‥ラウマねえさま‥‥」
両手で胸を隠すエイシスは内股になり、紺色の寝間着に包まれている。
夏が近づき、日々温かさを増す日々の中、エイシスの寝間着は半袖七分丈ズボンで、大分薄い生地になっていた。
剥き出しの肌色がすこしピンクに染まって、潤んだ鳶色の瞳にそえられている。
エイシスは少しだけラウマ達より背が低いが、胸部は豊かで膨らみを隠しきれていない。
「か‥かわいい」
「うん‥‥これはすごいよ」
ラウマは頬をそめ震える。
ノアもちょっと赤くなって、エイシスを見つめる。
「本当に‥‥するんですか?ノアねえさま?」
「するよ!」
ノアは満面の笑みでにっこり。
「ふっふっふ‥‥もう何も隠すことは出来ないのよエイシス。全て見せてもらうわ」
ラウマもノリノリで笑顔だ。
『アストラル・プロジェクション!!』
なんか技名のように叫んだ二人は左右からエイシスに抱きついて目を閉じた。
スリックデンからルメリナにもどる6人旅。
楽しい旅に、5人の綺麗な花嫁姿で話題には事欠かなかった。
交代で運転して、残り5人で車内をにぎわし、仲良く移動してきたのだ。
時々二人で話したいときは運転席に並んで座り、様々な組み合わせで仲良しを深める。
旅の中やはり必要だと、序列が組まれた。
長女はもちろんカーニャで、次女がユアとなった。
ここまではもう決まっていたような流れで、次から揉めに揉めた。
揉みしだいたと言ってもいい。
「合流順です!アミュアが3女です!」
「なんでさ!ずるいよそんなの!」
「まぁだれが見てもラウマが次ですよ、精神年齢で決まりますね」
三人の意見は平行線で、交わる気配もない。
ぎゃーぎゃーと半日ほど好きに騒がせて、エイシスは運転席に。
ユアとカーニャは夜霧でとことこ並走して避難した。
エイシスは順当に末っ子と決まっていた。
お昼になる頃に、やっと話し合いは終わり、序列がついた。
何故か三人とも衣服と髪が乱れ、汗まみれになっている。
激しい話し合いだったのだろう。
人数がいるとどうしても順番が必要になるので、決めないとねとカーニャが提案したのだった。
「一旦これで良いです‥‥」
ずり落ちた肩をなおし、胸元のボタンを留めながらアミュアは不満そう。
「こんど再度序列戦だよ実戦で!」
スカートまで捲れていたノアは裾を直し、お腹をしまいながら再戦を誓う。
「あらあら‥‥ノアもアミュアもまだ諦めないの?」
乱れた金髪に手ぐしを入れながら余裕のラウマ。
ラウマが三女、アミュアが四女、ノアが五女と仮に決まった。
「じゃあラウマおねえさま‥‥今度から遠慮なくあまえますわよ」
アミュアは含むところありありの視線。
「エイシスはみんなの妹ね!ノアのこともねえさまってよんで!」
にっこり笑うエイシス。
「はい、ノアねえさま」
「えへへ」
でれでれになったノアを見て、アミュアもラウマも微笑みを浮かべるのだった。
そして今夜は地下に三人で寝ることとなった。
結局ユア達は上でいちゃいちゃしているので、一緒では?とラウマは感じ、こちらもいちゃいちゃしなくてはと、ノアとエイシスに提案したのだ。
「アストラル・プロジェクションをしてみましょう‥‥姉妹の絆を深めるのです!」
と、うれしそうに誘った。
あの異界への旅の中、ユアとアミュアだけではなく、ノアとラウマも瞑想やアストラル・プロジェクションを訓練してきたのだ。
エイリスは本当に天才的才能があり、他者を精神世界に導くことすら呼吸するように簡単にしてしまう。
そうして体験すれば、ノアもラウマも適正が高く簡単に瞑想に至った。
二人では既に何度か試したので、したことがないと言うエイシスを誘う。
「仲良くしたい人とためしてみてね」
仲良しのエイリスとメアリーにもそう言われていたので、今夜ためそうとなったのだ。
エイシスは最初とても遠慮して、お二人でどうぞと断った。
ラウマの目がキラーンと光り、冒頭のシーンに繋がるのだった。
「きっと‥‥エイシスは姉さま達の思うような娘ではないですよ‥‥後悔しませんか?」
そう言って淋しそうにするエイシスに、より一層強く抱きつく二人。
「ダメ‥‥かわいい妹を置いていきません」
「うんうん一緒にしようよエイシス!」
「‥‥わかりました‥‥エイシスも覚悟を決めました」
そうして目をとじて常夜灯だけのオレンジの中三人は心を澄ましていった。
ラウマはイメージを女神ラウマと重ねることにしていた。
あの神聖で美しい黄金の世界に心を置く。
すうっと暗闇に包まれ、一筋の黄金が落ちる世界に浮いていた。
黄金の光りが示すのは紫の円盤大地。
あの初期ラウマ空間だ。
ラウマも飛行魔法をつかえるので、アミュアと同じく自分が飛び回るイメージを掴みやすい。
そうしてベッドの上で円環となり繋いだ手のひらを頼りに、まずはノアを呼び出す。
最も最初に瞑想に至ったものが引き寄せるのだ。
ぱっと目の前にノアが現れる。
(ラウマはやいよぉ‥‥まだイメージが固まらなかった)
(ふふふ、女神ラウマ様のお力をかりたのですよぉ)
そういって手をふれあい、次はエイシスを探した。
ふわりと紫の円盤に降り立ち、二人は目を閉じた。
(みつけた)
(わたしにも見えたよ!)
ラウマが引き寄せるとエイシスは眼の前に立っていた。
(‥‥すごい‥‥本当にできました)
(エイシスもエイリスの血を、巫女の血を持っているのです)
(うん、ほとんど瞑想に入れていたよ、さっきので)
ラウマとノアは楽しそうな雰囲気。
この世界に今三人しか居ないと、ちょっと興奮しているのだ。
抱き合っているノアとラウマが手を伸ばし誘う。
「エイシスおいで」
「こちらにくるのよ」
「はい‥‥ねえさま‥‥エイシスの全てを見てください‥‥」
すうと三人が一つになり、閉ざしている硬いエイシスの心を包み込む。
(やっぱりエイシスは心をまだ開いていない)
ノアの心配そうな心がエイシスの殻にふれ温めていく。
(これからずうっと皆で幸せをめざすのですよ‥‥エイシス‥‥おねがい)
ラウマの慈愛の心がエイシスの心に染みていく。
(でも‥‥この先には封じたわたしの醜い心があるのです‥‥ねえさま達にきらわれたくない‥‥)
(封じていても良い‥‥ノアの心に触れて)
(見せたくないものを見せろとはいいません‥‥お互いを少し知り合いましょうエイシス‥‥嫌いになどなりませんよ‥‥わたしのかわいい妹)
今ひまわりハウスにいる6人の女の子は、自己が確立してから出会った姉妹だ。
それは生まれたときから一緒にそだつ姉妹とは違った、温度を持っている。
それを目上の者が見て支えようと言うのがカーニャの提案だ。
『甘えやすくなるでしょ?』
そういって背を押すのだった。
遠慮をなくして親しみを深め、甘え甘やかしたいとカーニャは微笑んだ。
(うれしい‥‥みてぇねえさまこれがエイシスなの)
すうっと遮っていた殻が溶けていき、エイシスの熱い温度が流れ出す。
(あぁ‥熱いよ!エイシス)
(す‥‥すごい‥‥エイシスあなた?!)
(ねぇさまぁ‥‥)
その夜体験したことのない炎にやかれ、姉妹序列が入れ替わりかねない刺激をラウマとノアは知ることとなった。
(あはぁ‥‥ねえさまだいすきぃ)
エイシスはとても満たされ満足そうだった。




