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【閑話:憐憫と羞恥と忸怩そして希う】

セレナとフィオナが提案してくれた。

かつて約束したあの場所に行こうと。

ミーナはとてもあたたかな気持ちと、自分達へのいたわりを感じ取る。

とても嬉しいと思う気持ちをミーナは沢山自分の中に見つける。

もうこの半年離れずにいて、もう自分の一部とも思うレティシアも喜ぶのを感じた。

今もレティシアはミーナの腕の中にあり、ミーナもレティシアに包まれている。

エーラも来てくれると聞いた。

会いたいと思う恋しい気持ちと、見ないでと思う恥じらう気持ちが半分有る。

あたたかな温度をくれるレティシアはどう感じたのかなと、じっとレティシアを見るミーナ。

「ミーナ‥わたし平気よ‥ミーナが決めて‥‥」

レティシアは真っ赤になり、恥ずかしそうにミーナの胸に顔を埋めた。

ミーナはレティシアを愛おしく思う気持ちと、守りたいというあたたかな気持ちを持つ。

ミーナよりもレティシアは2つ年上だ。

発育のよいミーナと発育のよくないレティシアはほぼ同じ体格だった。

この半年で少しだけレティシアの方が育ち、実は今は全体的にミーナの方が小さい。

それでもあの事件の後からレティシアが、こうしてミーナに甘えるので、支えたいと心に力をもらう。

「レティがいいならわたしもいい」

言葉としてはそう言ったが、心ではエーラの顔が見れると、羞恥を上回る喜びを持った。

セレナもフィオナも本当に自分達二人に尽くしてくれて、嬉しいきもちと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

一日でも早く立ち上がり、歩き出さなければと、冷静な部分のミーナは思う。

この日々はセレナとフィオナの人生を消費して続いているのだと感じるのだ。

ミーナの深い部分では事件の前から、変わらず冷静な思考が回っている。

それを表に出すことが出来ないだけだ。

そうして表にでて、皆を困らせる自分を恥じ悔やむ。

ミーナは傷つき、癒やされ、倒れ、歯を食いしばり顔をあげる日々を続けてきた。

この腕の中にあるあたたかさもまた守りたいのだと。

かつてレティシアは仲の良かったこの5人の中で一番下の妹のように過ごしていた。

幸せな学院の中で5人は沢山の時間を共に過ごした。

寮も一緒なので、頻繁に夜まで、時には朝まで一緒にいたのだ。

レティシアはとても純粋で無垢な魂を持っていると、ミーナは尊く思い見ていた。

年上なのに、妹とさえ思えたのだ。

その場合によっては自分よりも大切だとさえ思えたレティシアが、傷つき腕の中にある。

ミーナは自分の苦しみの中、何度もレティシアを見失う。

心は冷静に自責の想いで満たされるのに、表にいる自分は己すら認められず泣きわめく。

(もう立ち上がらなければ‥‥レティを守り、セレナとフィオナを安心させたい‥‥)

ミーナは薄紙をはぐように、心のしなやかさを取り戻していく。

(これでは誰も自由になれない‥とらわれているんだ‥‥わたしに)

今のミーナが最も強く思う心がそこにあった。

腕の中のレティシアに頬を寄せながら。

かつての学院で自分が振りかざした自由の旗をおもい。




大きな変化が訪れた。

ついにミーナの姉カーニャが救い出され、このルメリナに戻ったのだ。

ミーナはレティシアと侍女達以外とできるだけ顔を合せたくなかった。

自分を見られるのに耐えられないのだ。

今年14才になったミーナは自分を恥じて、顔を見せられないのだった。

それでも最愛の姉の帰還に、ミーナの心は震え勇気を出してゆりかごのような地下から地上に出る。

比喩ではなくユアの家の地下室に住んでいるのだ。

レティシアと二人きりで。

それは甘くあたたかで心癒される時間。

なにも心に痛みを持たない日々だった。

時々お世話をしてくれるセレナやフィオナと顔を合せても、前ほど自責に苦しまない。

二人の笑顔に影が薄くなっていくから。

そして日々腕の中のレティシアが、こころの弾力を取り戻すから。

ミーナはレティシアの回復に揃うように自分も立ち直っていると感じた。

しかし、久しぶりに見るあたたかな太陽の光の中、ミーナは絶望を見た。

帰還を果たしたはずの姉の中に、憧れた姉カーニャはいなかったのだ。

(あぁ‥‥姉様はわたしよりもずっと傷ついたんだ‥‥心を閉ざすほど‥‥)

ミーナは屋外に飛び出しカーニャを視界から、追い出した。

「ミーナ!」

レティシアの驚いた声が背に当たったが、足は必死に動いて身体を運んだ。

自分の一部とも思っていたレティシアすら手放し、逃げ出したのだ。

弱ったミーナの心は自己防衛のように否定する。

(ちがう‥‥わたしのせいじゃない‥‥)

「ミーナ!!」

裸足で追いかけてきたレティシアがミーナの背を抱きしめる。

「ミーナ‥‥お願いレティをみて‥‥」

レティシアの声に顔をあげるミーナ。

自分の一部とも思うレティシアには素直な言葉が漏れてしまう。

自分の心以上にレティシアを偽れないミーナ。

「レティ‥わた‥わたしのせいなの‥‥ねえさまが‥わたしを守るために‥あ‥あぁ‥」

ミーナの中に最後に見た、たのもしいカーニャの微笑みが蘇る。

先程見た、まるで幼子のような姉と重なって見えた。

ミーナのアイスブルーの瞳に涙が流れ続けるのに、なにも悲しみを流してくれない。

心にまた苦しみと自責だけが降り積もる。

ぎゅうとレティシアの腕に力がこもり、ミーナを抱き潰した。

「違うよ‥‥誰の所為でもない‥誰も悪くはないの。ミーナお願いわたしを見て」

この半年間に感じたことのなかったレティシアの強い意思。

「ミーナ‥‥お願い‥‥わたしだけを今は見て」

その強いレティシアの心にミーナは気づいてしまった。

(支えられていたのは自分の方だ‥‥レティはわたしのために弱ってみせていたのだ)

カーニャと同じ様に理性的で論理的思考の得意なミーナは、様々な断片から本質に至る。

(わたしのためだったんだ‥‥)

ミーナの涙の温度が変わっていく。

弱々しくもレティシアを抱き返す腕に、力がこもっていき、声が漏れる。

「あぁぁぁ‥‥ごめんねレティ‥‥ごめんねぇ‥‥」

しくしくと涙が流れ続ける。

それはレティシアの愛を嬉しく思う気持ちと、気づけず支えられた自分への深い後悔と恥ずかしさ。

カーニャへの憐れとおもう心に、いつの日かまた姉妹で、友達みんなで笑いあう時間をと、心から願った涙だった。

今たしかにミーナは変わり始めたのだった。

たくさんの愛に支えられて。

複雑なこころをいだき。







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