【第22話:みんなが幸せのために】
カーニャが戻りひまわりハウスはまた賑やかになった。
「おかえりなさいカーニャ」
笑顔のアミュアが出迎えてハグをする。
これはヴァルディア家の真似で、是非普及させようとなった。
「ただいまアミュア、色々ごめんね我儘言って」
「カーニャが無事ならいい‥‥今度は一緒にいこうね」
「うん‥‥」
二人は笑顔で抱き合った。
「ユアは依頼に行ってるの。ノアとラウマと一緒よ」
「へえ?めずらしい組み合わせ?」
「そんなことないよ、前衛が2枚ほしいって手伝いに行ったの。わたしはお留守番だよ」
にっこりなるアミュア。
中にはいるとエイシルが出迎える。
今日はイーリスも来ていた。
『おかえりなさい』
綺麗なユニゾンで声がけの二人はにっこり。
いい匂いはなにか甘いものを焼いているようだ。
ラウマの二人目の弟子としてイーリスはよく来るようになった。
泊まっていくことも多い。
「なになに?いいにおーい」
くんくんと上着をぬぎながらカーニャ。
脱いだ上着はアミュアがハンガーで入口横の乾燥室に干しに行く。
キッチンに行って手を洗いながら、様子を見るとオーブンになにか焼かれているようだ。
「今日はフィナンシェを焼いていますよ」
「ふふ昨日も焼いてリベンジなんですよカーニャ姉様」
エイシルの説明をイーリスが捕捉。
二人は青と紺色ラインのエプロンをしている。
今ひまわりハウスの住人は増えてきて、泊まりにくるイーリスも服やエプロンをエイシルに仕舞ってもらっている。
色は全員変えるので洗濯しても混ざらない工夫は続いていた。
カーニャはもちろん朱色だ。
「わぁ美味しそう!」
もどったアミュアが提案。
「カーニャよかったらお風呂はいるといいよ?お茶入れておくね」
「わぁありがとう‥‥なんだか悪いわ」
ぎゅっとアミュアが抱きつく。
「そうゆうのはもう無しって約束だよ?」
「うん‥‥とても嬉しい!」
「うん、そっちの方がわたしもうれしいな」
そうしてカーニャが汗をながす間に丁度焼き上がり、お茶も淹れ終わる。
甘い香りとお茶の香気が微笑みを広げてくれる。
「いいにおぉい」
イーリスもうっとりする。
くすくすと年長の二人が笑いながら、カップを並べたりお皿を出したりする。
そんななんでもない幸せが、ここに溢れている。
イーリスも姉達と時間を過ごせて幸せだと思うのだった。
「ノア!そっちいった!」
ユアの声にはまだまだ余裕があった。
大型のトカゲ型魔物でバジリスクと言う強敵だ。
ラウマが風魔法を微調整しノアを風上にする。
ゴフゥゥ!!
バジリスクは石化のブレスを吹くのだ。
紫と黒のコントラストが禍々しい巨大なトカゲが、灰色の不透明なブレスを吹き込む。
ラウマのコントロールは完璧で、ノアの立ち回りを上手く補助する。
コントロールだけではないバディの完成度を見せる。
ユアは右手の二匹を、自力で風上から捉え一匹を仕留めかけている。
基本的にユアはハンター活動ではペルクールの雷を使わない。
縛っているとかではなく、あまり必要としないとも言える。
ランクはまだBだが戦闘力ではAのカーニャを超える技量なのだ。
その動きには磨きがかかり、クラスAとランクされる格上のトカゲを二匹相手取り、ノアを気にする余裕がある。
そうしてラウマとノアがバディで一匹討伐する前にユアは2匹を仕留め解体を始めていた。
「ユアつおーい」
「えへへん」
「本当です‥‥風上だけの位置取りで二匹をなんてすごいです」
ラウマは頬を染めてユアに見惚れる。
ラウマビジョンではイケメンユアが微笑んでいるのだ。
実際にはノアにほめられてふにゃふにゃ笑っていた。
緊急討伐依頼だったが、人出が足らず急遽マルタスから頼まれたのだ。
『おまえらなら余裕だろ?』
だそうだ。
バジリスクは石化が怖いが、解除薬という魔法薬が市販されていて、今回の依頼では4本が支給されていた。
結局使わず討伐したので、それは収納に仕舞いいざという時にとなった。
「さ、解体おわらしちゃおう!」
『おー!』
ユアの号令で作業を続けるのだった。
今回の討伐依頼は、以前アミュアとユア二人で岩ヘビを狩りにきた岩山近くの村落からだった。
もっと北のノルヴァルド方面にいるこのトカゲが、たまたまか南下して被害がでたので慌てて依頼を出したのだという。
馬車で来ているのでルメリナには半日もない距離だった。
馬車はノアが運転して、車内で二人は休んでいた。
「ユア!寒くない?窓閉めるよ?」
ノアが珍しく気が利いてそういう。
「うん、そうだね一回閉めるよ」
そういって中から閉めるユアはぺたんと女の子座り。
最近人数が乗ることが多いので、前席を取り外したのだ。
ルメリナの工房で手伝ってもらいユアが自分で外し、敷物を増やして床を土足しないことにした。
後部席はそのままだが、靴は外で脱ぐ決まりとしたのだ。
これにより、密度を気にしなければ車内に6人くらい座れる。
ユアは家族皆んなが泊まれるようにしたかったのだ。
「靴を中にいれないとぉお掃除が楽になります」
そういってにっこり笑うラウマ。
ユアの隣に横座りで、カップを2つ持っている。
窓を閉めたユアの分を持っていたのだ。
「うん、家もどうせならそうしようか?」
「うーんどうかなぁみんなに聞いてみよう」
ユアの意見にラウマも賛成だが、皆んなに聞いて決めるのがラウマは好きだ。
顔を見ながら話すと、不満がある人を見つけやすく、フォローがしやすいのだ。
ラウマはそういった細かな気配りがとても上手になった。
二人はあまり会話をしないが、終始にこにこのラウマとだいたい笑顔のユアなので、そうして互いの笑顔を見ているだけで結構退屈しないものだった。
「ラウマ、家が狭くなったと思わない?」
「う~んどうでしょう?今なら地下もあるしそれほどは?」
「そっかな‥‥あのね‥‥みんなは一人で居たいって思うことないのかな?今のひまわりハウスには個室が地下しか無くて‥‥ごめんあたし達で独占しているみたいでさ‥‥もうしわけないなと」
地下は二人っきりになりたい二人が使うこととルールが決まった。
使った人がちゃんと片付けることもルールだ。
まあユアとアミュアとカーニャしか使わない。
ようするにユアは他の三人に悪いなと考えるのだ。
「じゃあ‥‥こんどノアとわたしとエイシルで使いますよ!」
「あはっいいね!そうして」
「なんだったらユアも一緒でもいいですよ!」
「わあうれしい‥‥でもアミュアがヤキモチやくからね」
そんな自然なやり取りでも十分ラウマは嬉しい。
いまのやり取り自体がノアや自分を大切に思ってくれているからだと、ちゃんと伝わっているからだ。
ラウマは女神に感謝を送る。
(女神ラウマさま‥‥わたしはとても幸せです!ありがとう‥‥ユアに会わせてくれて)
ラウマはいつもそうして笑顔になるのだった。




