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【第19話:ラウマのふくざつなこころと】

アミュアの飛行魔法は練度もさらに上がり、詠唱して速度を落とせば半日以上飛んでいられるようになっていた。

今はルメリナ郊外の山間に降り立った。

往復しても買い物をお昼までに十分終われる距離だ。

ここは最近二人になりたい時にくる二人だけの場所だ。

先にユアが飛び降りる。

ユアの耐久度ではなく、ユアのサンダルが耐えられる高さだ。

すとっとアミュアが降りてきてユアの腕の中に横座りに収まる。

「ふふ、この着陸も随分慣れたよね!」

「うん、安心して落ちてこられるよ‥‥ユア」

首に手を回すアミュアをそっと地上に下ろし、唇を重ねるユア。

ユアの方が少し背が高くなり、アミュアは少しだけ上向きあごを上げる。

そうしてユアはアミュアの背中に手を回し、ぴったりと隙間無くっついた。

二人だけになると必ずするキスだ。

ちゅぱ

唇をはなすと、アミュアは頬を染め潤んだ瞳。

「アミュアだいすき‥‥」

「ゆあぁ‥‥もっとしてぇ」

「‥‥ずうっとしていたいよ」

そうして予定外に時間がかかったが、買い物を終えてお昼を少し回り帰宅した。

(やっぱりロフトもいいけど‥‥二人だけになれる部屋もほしいな‥‥あぅ‥‥はずかし)

ユアは色々想像して恥ずかしくなる。




ルメリナに至る街道をゆっくり白い馬車が進んでいく。

ユア達の白い自走魔導馬車だ。

運転席にはラウマが座り、ノアが膝枕でうたた寝している。

復路は慌てずに一泊して帰るので、今夜はノアと野営になる。

一泊だけなので見張りは立てず、結界を貼り馬車で寝るつもりだ。

(こんなに寝ても夜また寝れるって、ノアはすごいな)

ラウマはいつもの微笑みではなく、すっきりした笑みを浮かべる。

あの世界を渡る旅でラウマもまた少し心に変化があった。

一番は女神ラウマにはげまされたのが大きい。

恐らく自分の中の想いを見抜かれ、応援されたのだ。

今までどこかで許されない事だと、歯止めをかけていた想いを、認められた気分なのだ。

『ラウマはラウマでわたくしとはちがうのよ、それでいいのよ』そう言われた気がした。

いつも心の中心に女神ラウマを置き、女神ならどうするかを第一に考えてきた。

それが自分が産まれた意味なのだと。

(わたしは‥‥ユアが好きだ‥‥アミュアとユアが愛し合うとわたしは苦しい)

思いと違い笑みを深くする。

にっこり笑い心があたたかい。

(いいんだこれで)

そんな満たされない想いを持つことすら罪悪感を伴って苦しんできたのだ。

そう想いを募らせても良いのだと自身を再定義して救われたのだ。

やっと恋をする事を自分に許し、想い人を浮かべる思考を責めずに済む。

(ユアはいつも相手をちゃんと見ます)

にこにこ機嫌の良いラウマ。

ユアを想えばいつでも笑えるのだった。

(意外と細かい所を見ていて、隠したいことも見つけちゃう)

あはっと声まで漏れる。

(こないだいっぱい自分を確認した後、くんくん匂いを嗅がれて焦った)

ぽっと赤くなってしまう。

(そして‥‥実はかなり甘えん坊)

一緒に寝ると、いつも抱きつく。

ぷぅとちょっとふくれる。

(抱きつく先はアミュアだけど‥‥)

直ぐに笑顔に戻る。

(わたしの気持ちには気付かない)

それはユアの思いやり。

(応えられないよと意思表示してくれている。わたしの想いには)

それは深い思いやりだと理解できた。

嫌いだったり、大事じゃなかったらそんな気遣いをしないはず。

(わたしの事を大切に思ってくれている‥‥家族だと)

そう想像しただけでラウマはふるえるほど嬉しいのだった。

何も無い、自分すら無かったラウマを受け入れそばに置き、大切にしてくれる。

(わたしが怪我をしたらユアは怒ってくれるのかな?)

アミュアが怪我をした時のように。

ふと思考が止まった。

(あれ?上手く想像出来ない)

怪我をして血を流す自分を抱き上げるユアを思ったのに、抱き上げたのはノアだった。

ぷるぷるして泣いているノアだった。

(おかしいな‥‥)

同じく笑顔にはなったのだが、何度想像しても泣いているノアが出てくるのだ。

ノアの髪を撫でて考える。

(ノアもわたしを大切にしてくれている)

それももちろん嬉しい。

ふるえないけど、とても嬉しいのだった。

あのヴァルキラスとの戦いの中、ラウマの意識はちゃんとあった。

ただ思考したようには体が動かなかっただけで。

ユアの怒りは愛情の裏側にあった。

大切なアミュアを傷つけられて、怒った。

その怒りはラウマの後ろにいたヴァルキラスに向いていただろう。

ラウマからはヴァルキラスが見えなかったので、自分に向いたように感じられた。

(ユア‥‥あぁ‥思い出してもとても悲しい)

ふるえるほど悲しい。

ふるえてノアを起こさないように、左の太ももに頭をうつし右足が自由になった。

ラウマの耳にあの声が蘇る。

『どいて‥‥ラウマ怪我するよ』

(こわいよ‥‥ユア)

びくびく びくびく

『どくの!ラウマ弾き飛ばすよ?!』

(あぁ‥‥そんな目でみないで‥‥)

ユアの赤光をはなつ瞳がラウマの脳裏で再生される。

キリリとした顔がとても強い目でラウマを貫く。

(ユアが‥みている‥わたしだけを‥)

びくん びくん

「くぅ‥‥ぁ‥‥あ‥‥あ‥‥ゆあぁ‥」

ラウマの体は震えてしまう。

ぴくんぴくん

(とっても‥‥怖くて‥‥‥すてき‥ユア)

「はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥」

ノアを起こさないように気を使うラウマ。

こわすぎて息もみだれてしまった。

汗も少しかいたので金色の髪の毛がおでこと顔に少しはりついた。

足を動かさないように、自分の色々を確認した。

(しまった‥‥ノアが邪魔でいろいろ困るわ)

ちょっと汗をかいてしまったので、いろいろ拭きたかったのだ。

こうしてルメリナを目指すなかラウマはこころの整理をしていた。

こころの整理だ。









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