【閑話:あわすいーとほぅむ】
ひまわりハウスから徒歩ですぐにマルタスの自宅がある。
最近買い求めたもので、もちろんオフィスの紹介だ。
もともとはハンターソフィスに近い、賃貸のやすい部屋に住んでいた。
寝るために帰るだけの部屋で、帰らない日も結構あった。
最近の王都での事件で色々あり、14才の女の子が3人転がり込んできた。
ちょっと色々問題のある娘達で他人に任せられないのだ。
そうしてマルタスは、突然三人の年頃の娘を持つ父親に転職させられた。
最初はこのひと間と水周りしか無いアパートに転がり込んできたのだ。
「いや無理なんだが‥‥じゃあ俺はオフィスで寝るから」
そういうと捨てられる子犬のような目で三人は泣く。
『くうぅん‥‥』
ハモリが美しい和音を奏でる。
「じゃあ‥‥今日だけな‥‥明日は何処か住む所借りてやる」
そうしてしかたなくかける布団や毛布を総動員してなんとか寝た。
朝起きたら絡みついてホールドされていた。
やたらむにゅむにゅしてマルタスは混乱の極み。
「おい!?なんでこうなった?!」
「おはよぉパパぁ」
「パパじゃねえよ?!」
「うるさいよぉおとうさん、わたしまだねむいぉ」
「おとうさんでもねえし?!」
「あなた‥‥ご近所さんにごめいわくよ?」
「あなたって誰?!あとそこをさすさすすんな?!」
ちなみにマルタスは髪型で個体識別していたので、こうして髪を降ろされると識別不能になる。
といった感じで、これは不味いと真剣に対策を考えたマルタス。
そうマルタスといえば賢者会すら震え上がるあの英雄マルタスだ。
あらゆる手段で徹底的にすべて蹴散らす男。
そこに躊躇や容赦などないのだ。
『くぅん‥‥』
「あぁ‥‥わかったよ‥‥はぁ」
三人ともどうしても一緒でないとダメだと言うので、家族向けの賃貸を探したがなかなか良いのがない。
「もう家を買ったほうがはやいぞ」
副所長のローデンに言われ、そちらで探したところ、ほどよい物件が有った。
マルタスはあまり金を使わないので貯金は十分にあり、一括で支払い家主となった。
全くの偶然だがユア達の家からすぐだった。
個室は6つ有り、居間はオープンキッチンがセットの大きめな部屋だった。
居間がダイニングを兼ねる仕様。
二階が個室で一回には水回りが一通り備わる。
築浅だが、オーナーに事情があり住まずに売却となったらしい新古だ。
かなり値段ははったが、マルタスには大した負担ではなかった。
探すほうが大変なのだ。
「よし俺はこの部屋な」
『はーい』
三人が部屋を決めたら家具屋と生活用品店を廻り、寝具だけは持ち帰り残りは後日配送と決まった。
姉妹はやたら同じものを欲しがる。
小物やベッドなどの家具ならいいが、洋服や下着まで同じのを選ぶ。
まぁ名前でも書いてやるかとマルタスはずさんに認めた。
その日はどこから聞きつけたかユアたちから、バーベキューでお祝いするから来いと言われお呼ばれ。
食べ終わってからソファに座り、わりと深夜まで飲んで帰った。
「こんどはお宅拝見にいくからね!」
ユア達に約束させられたので、近々呼ばねばなとマルタスは義理堅かった。
そしてよっぱらって眠かったので部屋で寝て起きると、また全体的にきっちりホールドされて身動きできない。
「おい‥‥いい加減怒るぞ?」
やたらと体温の高い三姉妹は、髪をおろしているとうやっぱりマルタスには区別が付かない。
「くぅん」
「にゃぁん」
「あんいぃわぁん」
「ちょっとまて?ひとりおかしいのいたぞ?!」
自分の部屋ではなくマルタスの部屋に三人とも寝具ごと来て寝たようだ。
ちなみに三人とも寝具を開梱していない、持ってきただけだ。
「なんで広い家を買ったのに‥‥こんなに狭い思いを‥‥」
解せぬマルタスであった。
三人とも家事の能力が欠如していた。
いや生活能力が無いと言ってもいい。
風呂の使い方から解らず、いちいち呼ばれる。
「‥‥服を脱ぐ前に呼べ‥‥やりなおし」
そういって裸で待って居た一人をしかり。
洗濯用魔道具に入って洗われる一人をひっぱり出したらやっぱり裸だったり。
「なぜ風呂をつかわん‥‥」
マルタスが風呂に入っていると一人きて、背中を流してと言う。
「いや?!お前が流すんだろ?こうゆう時は?!そもそも一緒にはいらねえからな?!」
つっこみ力を研ぎ澄ます訓練かと思う日々を過ごしたマルタス。
ある日一人が夜に部屋に来て尋ねる。
「どうしてわたし達を抱かないの?」
「‥‥いいか今日は許すが、次そんな親不孝を言うなら勘当だからな」
と説教までしなくてはいけなかった。
利点としては同じことを怒られるような無能ではない三人だと言うこと。
あと横の繋がりが完璧で、一人叱ると残りも同じことをしない。
そうして一週間もすると怒られることはなくなり、平和な家が完成した。
『ハンターになりたいです』
完璧なメジャーのハモリで三人が言う。
「もう戦う理由はないんだぞ?」
マルタスはできれば普通の仕事をして普通に生活した方が良いと考えていた。
「三人とも一緒じゃなくてもいいっだろ?誰か戦う以外にしたいことないのか?」
『ハンターになりたいです!』
「なぜ‥‥微妙に音程を変える‥‥」
「え?綺麗でしょ?ハモリ」
「練習したのにね」
「音程の差で個体認識できると考察しました」
「とりあえず名札つけようか‥‥おまいら」
『ひどい!』
会話内容に合せてコードを変えるハモリ。
髪型で区別したいマルタスなのに、家に帰ると全員髪を下ろすので差がわからないマルタスだった。
後にアミュアたちに色違いのリボンを服に縫うという天啓を授かる。
パーソナルカラーは三人ともに好評だったが、全員青がいいとかギャーギャーしばらく決まらなかった。
命を救われたと恩に感じる三姉妹はなんとかマルタスに喜んでもらいたいのだった。
三人で競い合うように。
マルタスにしてみると娘がいたらこれくらいの年かと思い、そちらにどうしても視点が傾く。
そうした微妙なバランスの上マルタスハウスは成り立って行くのだった。




