【第11話:ユアとアミュアと】
女神ラウマに報告し、エイリスからの伝言も届けた。
「とっても幸せです、ありがとうございます‥‥と、それだけは伝えてほしいと言ってました」
アミュアの伝言にユアも頷いて、続ける。
「エイリスもメアリーも他の女の子達も、みんな幸せそうでした‥‥ただ‥‥」
そこでユアの瞳が曇る。
うんうんと女神ラウマはユアに頷いて見せる。
わかっているよと言うように。
「あの娘達は‥あんなに沢山、あの若さで死んでしまったの?」
はっとアミュアは青ざめる。
忘れてしまっていたのだ、あの少女達が死してあの地に至ったことを。
女神ラウマも微笑みのまま淋しげな声。
『ユア‥‥思いやりや、いたわる心はとても大切です‥‥‥でもあなたも1人の女の子だし、アミュアやカーニャもたった一人の女の子なのですよ‥‥世界の事はわたくし達がちゃんと心配し労っております‥‥ユア‥どうか健やかに』
そう言って4人は地上に戻されるのだった。
『またみんなで来てね‥‥』
ユアにだけ、ちょっと淋しげに声が届いた。
ルメリナまで夜霧で駆け戻るユアとアミュア。
騎乗するユアの首にしがみつき、脚を腰に絡めぴったり隙間なくくっつくアミュア。
夜霧は結構急いでくれているので揺れるのだが、どうあっても離さないぞと言う気概がにじむ。
「アミュア‥‥どうしたの?戻ってからずっとそうだね?」
アミュアはううと唸るだけで離れない。
「淋しい思いをさせてごめん‥きっともう少しだよ‥‥もうずうっと幸せだけが続く世界になるよ‥‥」
ユアはいつも直感で言葉を述べる。
よく考えていないと見えることも多いが、本当に歪みの無い視線で物事を見るユアは、時にどんな賢者より真理に近い時がある。
「ユア‥‥違うの‥‥大切にしなきゃと思ったのこの幸せな時間を‥‥エイリス達もきっとそう思ったはず」
珍しくアミュアも感情の言葉が続く。
その声は涙で震え濡れている。
「こうして愛する人と居られるのは幸せなのだと、あらためて思ったのです‥」
アミュアの言葉がささやきとなりユアの耳に流れ込む。
「淋しくなんて無いよ、わたしはとても幸せ者です‥こうしてユアがここにいるんだもん」
言葉と同じだけの想いを込めたはずなのに、アミュアの涙は止まらなかった。
ユアも同じ気持ちを噛み締めたが、言葉に出来なかった。
ただ強く抱き返すので精一杯だったのだ。
ラウマとノアに馬車を任せ、一足先に戻ったユアとアミュアは居間に荷物を降ろし、2人で相談した。
今は出かけたのか侍女達とミーナ、レティシアは居なかった。
エイシスの話では、4人でエルシュラ湖に旅行に出たとのこと。
フィオナが実家のごたごたに紛れて拝借した馬車を使って行ったらしく、エーラも来て5人で少しゆっくりして来るから心配しないでと伝言だった。
今はイーリスがカーニャと地下に居て、エイシスは家事をしていた。
エイシスは言葉少ないが、だいぶ笑顔が見れるようになってきてユアもアミュアも嬉しい。
3人でソファに座りお茶を飲み、エイリスに会った話をしてあげていた。
ひまわりハウスの今は吊り下げ暖炉を囲むように半円のソファーが2つ向かい合う。
その一方にユアを中心に座っていた。
「そうでしたか‥‥実は私は母の最期を聞いていました。マスター‥‥エルヴァニス様から」
言葉に悲しみが乗るが、ユアを責める気配はどこにもない。
エイシスはエルヴァニスを愛していたとユアに告げていた。
「そうして母も救われる事が一つでもあったのだと聞いて、とても今嬉しく思います‥‥エルヴァニス様は、母を失ったことをずっと後悔しておりました‥‥」
ユアはエイシスの手を両手で握る。
「エイシスも!‥‥‥幸せになろうね。あたしに出来ることは少ないけど‥‥側にいるよ‥エイシスが居たいだけ居て欲しい、ここに」
エイシスは真っ赤になり、ユアも真っ赤だ。
アミュアも真っ赤になりグイグイ背中でユアを押す。
ふくれっ面で。
「ユアはエイシスに甘すぎます!アミュア姉様がその分厳しく指導しますからね!」
アミュアのヤキモチはいつも可愛らしく、年下のはずのエイシスにすら微笑ましく見られるのであった。
しばらくしてイーリスが上がってきた。
元々そろそろお昼の食事をと言う時間だ。
シャワーを浴びてきたのか髪が乾ききっていない。
「イーリスただいま、カーニャをありがとう‥‥大変だった?」
心配するユアににっこり笑うイーリス。
「おかえりなさいユアさん。姉様と仲良く出来て幸せでしたよ。大変な事など何もありません」
そう言ってくれるイーリスの笑顔には、全く影はなかった。
エイシスとイーリスが楽しそうにお昼の準備を始めたところで、今丁度カーニャは発作が終わり寝ているとの事で、2人で地下に降りた。
(バラの香りがする‥‥カーニャの匂いがつよい‥‥)
カーニャのバラの香りは人を狂わすのだが、慣れるとあまり効かなくなる。
アミュア達三姉妹には最初から効かなかった。
ユアもイーリスもすでになれてしまっている。
アミュアは地下に初めて降りるので、緊張する。
ユアが先に降りて様子を確認していた。
ベッドで眠るカーニャの美しい金髪が見えた。
エイリスの助言もあったので、二人とも薄着で来ている。
温度が伝わる方が捉えやすいとアドバイスされたのだ。
うなずくユアにアミュアもうなずき、カーニャの両側に二人とも寝てそっと手を握る。
カーニャと三人で円環になるつなぎ方だ。
あちらでエイリスに指導されながら何度かやって瞑想までは二人とも出来るようになっている。
目を閉じユアは心を思う。
瞑想のイメージを強く持つ。
そこにはいつも中心に同じ笑顔が有るのだ。
大きなアミュアの笑顔に沢山の仲間たちの笑顔が添えられ花のように飾られる。
ユアの心は笑顔のひまわりなのだった。
それはユアが心にいつも願う幸せの形だった。
カーニャの上で繋いだアミュアの手の平も感じる。
直ぐにアミュアの心を見つけ引き寄せる。
優しく抱き寄せるように。




