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【閑話:二人ぼっちの行く末】

王都の側に影の拠点が有る。

かつてレヴァントゥスの作った隠し拠点だ。

かつてのレヴァントゥスの部下は、レヴァントゥスを魔王とレギオトゥニスから守り全滅したそうだ。

最後の一人が死をも越えてセリシアに伝えに来てくれたのだという。

そうして今この拠点にはセリシアとレヴァントゥスの二人だけがいる。

「レヴァン‥‥今日は天気がいいみたいなの、外を見に行ってみない?」

セリシアが車椅子を押す。

レヴァントゥスはほとんど身体を動かすことができなくなっていた。

アグノシアの封印はレヴァントゥスを心だけではなく、身体まで痛めつけていたのだった。

セリシアは献身的に介護し、不便は無いようにし日々リハビリを続けていた。

「あぁ‥‥」

上半身を支える力も弱いので、すこしセリシアが支えている。

エレベーターで外部への通路にでると、キシキシと車椅子をきしませながらセリシアが押していく。

扉は魔法で隠蔽されているので、そとから見つけることは難しい。

合せて風の結界が貼られていて、見つけても簡単には侵入許さない。

出口事態も岩山の頂上手前あたりで、そこにあると知らなければ誰も近づかないだろう。

そうして二人ぼっちの影獣達がひっそりと住んでいるのだった。



あのミルディス公国での辛く長い冬が終わり、今は初夏を迎えだんだんと気温も上がってきた。

この拠点は王都から馬車なら3日程度離れている。

飛行魔法なら半日かからない。

物資は時々セリシアが王都まで行って仕入れていた。

「風もおだやかであたたかいわ」

ニコっとわらうセリシア。

車椅子のレヴァントゥスも気持ちよさそうに空を見上げた。

青空は無限のグラデーションを見せ広がっている。

あまり生き物の気配はないし、乾燥した岩山なので植生も弱かった。

それでも人の目をしのいで暮らすには贅沢とも言える拠点だった。

「セリシア‥‥ありがとう‥‥でもたまには出かけてくるといいよ。ルメリナの北にも出口は有るしユア達に会ってくるといいよ」

この拠点には隠された転移魔法陣があるのだった。

レヴァントゥスはセリシアには友達と仲良くしてほしいなとそう勧めるのだが、セリシアはそっと首をふる。

「レヴァンが良くなったら一緒にいこう」

いつもそう言ってレヴァントゥスから離れようとしない。

レヴァントゥスは不憫に思い、距離を置きたいのだが、それはセリシアを悲しませるだけだった。




レヴァントゥスが、あのレギオトゥニスに捕らわれていたとき、セリシアは救出のために侵入したのだという。

危ない真似をさせてしまったなと、それだけでも後悔するのに、どうもあれ以来元気がない。

レヴァントゥスを気遣ってというのも有るだろうが、それ以外にもなにか悲しみを抱えているとレヴァントゥスには解った。

それは直接聞くことはするるまいと思うのだが、レヴァントゥスの身体は一向に良くなてくれなかった。

「すこし風がでてきたね。さむくなぁい?レヴァン」

「ああ、平気だよ」

レヴァントゥスは実はあまり暑さ寒さを感じない。

身体の表面のフィードバックも弱く、感覚が鈍くなっているのだ。

ぺとっとセリシアがレヴァントゥスのおでこを触る。

「少し冷えたかも‥‥そろそろ戻ろう」

「あぁ」

レヴァントゥスはとても無口に成ったなと、封印魔法アグノシアの性能を知らないセリシアには身体の弱った部分しかわからないのだった。

さぁっと二人を影が横切る。

キッと戦闘体勢に入ろうとするセリシア。

両手に緑の魔力が輝き出す。

「みつけましたあ!!」

明るい声が人影といっしょに降ってくる。

一瞬レビテーションを入れて減速したアミュアが降り立つ。

両手を広げてバランスをとるのがアミュア流だ。

ばさっと翼がはためく音がして、カーニャがラウマとノアを脇に抱えて降りてくる。

「な、な、なんなの?!」

セリシアは理解が追い付かない。

なんで来たのかも気になるが、カーニャの姿にまず理解不能。

黄金の翼がぱたぱたと羽ばたいているのだ。

「探したよセリシア。ディテクト・マギの三重発動をあちこちで使いましたよ」

アミュアがえっへんの体勢で言う。

二人をおろしたカーニャも告げる。

「随分遠くまで来ていたわね、どうやって移動したのか気になるわぁ‥‥」

しゅっと翼が消えていつものカーニャに戻った。

「ど、ど、どうして?」

セリシアはすっかり失語症。

「ユアに使っちゃった力を、世界中から集め直しながら、二人を探していたのよ」

にこりとラウマが説明。

「円環をするよ!」

ノアもにっこりだ。

「えんかん?」

こてんとなるセリシアだった。




「うん‥‥間違いないね‥‥レヴァントゥスはもう影獣の成分がないよ」

「セリシアは結構濃いわね」

アミュアの寸評にラウマが補足する。

「足して割るといいんじゃない?!」

ノアは謎理論を展開する。

『‥‥いいかも、それ』

謎理論が採用に成った。


かつて三人がなした奇跡の円環にくらべたら、大分控えめだが眩しくて直視できないレベルの光りがあふれ、円環が閉じる。

この場所では女神ラウマ達のサポートがないので、三姉妹のちからだけでできる円環だった。

「あぅあっぅいたいのです‥‥」

「ほんっと痛いのね」

「クスンいたかったよぉ」

慣れてないノアとラウマは相当痛かったが、アミュアも痛みに弱いのでくらくらしていた。

女神が居ないととても痛いのだ、円環の奇跡は。

光りがおさまると、そこにはかつて公都エルガドールで見たように、まるで人間のようなセリシアの気配。

レヴァントゥスは顔色も良くなったが、まだ立ち上がれる程ではないようだ。

「すごい‥‥まさに奇跡だな‥‥アミュアありがとう」

レヴァントゥスはにぎにぎと拳を握ってみて礼を言った。

円環まえより遥かに力が戻った。

「べ、別にレヴァントゥスのためではありません‥‥セリシアのためにしたのです!」

アミュアは頬を染めつんつんと答えた。

セリシアはぼふっとアミュアを抱きしめる。

「うう‥‥ありがとう‥‥アミュアぁ‥‥クスン」

ぼろぼろと泣き出したセリシアをポンポンと優しく背を叩き抱き返すアミュア。

ラウマもノアもよかってねと撫でてあげている。

レヴァントゥスの隣にカーニャが来て言う。

「アミュアとユアがね‥‥レヴァントゥスにキツイのはね嫉妬してるのよ」

「はあぁ?どこに嫉妬成分が?」

「くく‥‥それぞれにこっそり聞いたらね‥‥ユアはアミュアが好きになるのを、アミュアは逆を心配してるのよ‥‥レヴァントゥスがかっこいいからね!」

あははっと笑ってカーニャはアミュア達のところに戻っていく。

「さあ後は若い二人がいちゃいちゃして治すでしょ?帰ろう!ルメリナに」

『はーい』

三姉妹がカーニャに抱きつくと、カーニャはセリシアに言う。

「早く良くなって遊びに来てね。がんばって‥‥困ったことがあれば呼んでね」

そういってウインクを送るカーニャ。

ばさっと黄金の翼が広がる。

「ありがとうカーニャ‥‥ところでその翼ってどれくらい速いの?」

カーニャはにんまり。

「ないしょよ!」

ばさっと羽ばたくと、カーニャ達は一瞬で消えてしまった。

「ななな?」

セリシアは目をまんまるにして見送るのであった。


回復したレヴァントゥスをつれて、ルメリナにいくのは半年もしないうちだった。

もちろんそれまでも、それからもセリシアとレヴァントゥスは仲良く暮らすのであった。

二人ぼっちの人間として。







長らくお付き合いありがとうございました。

一旦これで皆が結末を迎えましたので終了です。

次は第二世代とかになっちゃうのですかねえ?もしあれば「第5部」でお会いしましょう!

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