【第89話:エイシスとノアの夜】
今夜はひまわりハウスに例外が持ち込まれた。
地下室の使用ルールが割り込まれたのだ。
アミュアの日だったのだが、ラウマが一人でユアと過ごしている。
アミュアもなんだか嬉しそうにゆずっていた。
ひまわりハウスのロフトは左右に分かれていて、ユアとアミュアとカーニャは玄関から見て右側。
左側にノアとラウマとエイシスのベッドがある。
おそろいの籐製ベッドは明るい色で、とても優しい匂いがする。
エイシスも大好きで、とても気に入っている家具の一つだ。
おそろいのベッドが6つあると思うだけで嬉しいと感じる。
最初4つだけだったそのベッドを2つ買い足したのは、エイシスがこの家に来たタイミングだった。
わざわざ同じものを作ってほしいと頼み込んで揃えたのだ。
職人さんも親切な人で、わざわざ見に来て採寸して帰った。
そうしてだんだんといろんな物が6人分揃えられる。
エイシスのだけないものなど、一つもないのだ。
コップもお皿もフォークもナプキンまで。
ぜんぶおそろいになるように探して回り買い揃えてくれた。
(ラウマねえさま‥‥おめでとうございます‥‥エイシスもとても嬉しい‥‥)
ひまわりハウスに3人目のお嫁さんが来たのだ。
ラウマは昨日のお昼にユアに告白をして、嬉しさのあまり昇天したそうだ。
(あたりまえです‥‥ねえさまはずうっとずうっと心に秘めていたのですもの)
どんなに嬉しかっただろうと想像するエイシス。
どんなに幸せが溢れただろうと想像するエイシス。
もうその想像だけでも、エイシスはおなかいっぱいになるくらい幸せだった。
明日顔を合せたら、ぎゅうっと強くだきしめちゃおうとわくわくするエイシス。
ユアの返事はプロポーズだったらしい。
(すごい‥‥ラウマねえさまが気を失うはずです)
ラウマからその話しを聞いて、まるで自分がプロポーズされたような幸せがエイシスを包みこんだ。
そして今夜ずっと守られてきたひまわりハウスのルールをやぶってまで、全員の祝福を受けて初めての夜をすごすのだ。
(他の人が全員知っている初夜‥すごいです‥‥なんて羞恥プレイ‥いえ周知プレイです)
エイシスはだれが上手いこと言えと?と自分で突っ込みたくなるほど嬉しいのだった。
それはもしかしたら同じ事が自分に起きる以上の喜びをエイシスに与えてくれた。
そんな幸せな想いを抱きしめていたら、もぞもぞと侵入者があった。
わりと頻繁にくる侵入者なので驚いたりはしない。
エイシスのベッドを置く時にノアが絶対真ん中が良いとここにしたのだ。
侵入する権利があると思っているふしがある。
背中にぴとんとくっつくノアはエイシスの耳元でこしょこしょ話す。
「ねえねえエイシス‥‥いつ告白するの?」
なんでそうなると思うエイシスだが、あいてはノアなので、わりと常識の範囲の質問だった。
向かい側のロフトではきっとアミュアとカーニャが同じ様にこしょこしょタイムだろうなと想像してクスっと笑うエイシス。
アミュアとカーニャもとても仲が良くて、見ていて羨ましくなるくらいだ。
最初ははらはらして見ていたが、エイシスよりも二人はとても大人で、いつの間にか和解して仲良くなっていた。
ぐりぐりと振り向いてノアを抱くように耳元に囁やき返す。
「ないしょです」
またクスクスわらってしまうエイシス。
むぎゅっと抱きついてくるノアがまた囁く。
「じゃあわたしが先に告白しても良い?」
おっと予想外の攻め手できたなとエイシスは怯んだ。
同じマクラに横になって見つめ合う二人。
ノアのじーっと見てくる攻撃にも大分慣れたエイシスはそれでは怯まない。
お返しとばかりにノアをぎゅっとしながら耳元にささやく。
「いいですよ、お供しましょうか?ノアねえさまぁ」
ぐぅとノアが悔しがる。
最近この手の冷やかしあいでエイシスは負けなくなってきた。
ノアの攻撃パターンが解って来たからだ。
(ノアねえさまあったかいなぁ‥‥なんだかいい匂いだし)
ノアはココナッツミルクのような優しい甘い匂いがする。
体温も基本的にエイシスより高いので、いつもあたたかい。
よくみるとノアの頬が赤くなっている。
(あぁん‥‥ノアねえさま可愛いです)
自分で振ってきておいて切り替えされて照れるとか、可愛いがすぎるなとエイシスはほっこりする。
なにかくやしかったのかエイシスの胸の谷間にぐりぐりと顔を押し付けてふんふんとうなるノア。
(あぁ‥‥なんて愛おしいのかしら‥‥)
エイシスのノア愛が溢れ出しそうであった。
「じゃあ‥一緒に告白しよう明日」
おいおいと突っ込みたくなるエイシス。
これはなんて答えるのがノアルートなんだ?と悩むエイシス。
みるとによによしてこちらを見ているノア。
してやったりと思っているのだろう。
(じゃあ答えはきまってますね!)
にっこり笑い返すエイシスはぎゅうっとノアを抱きしめささやく。
「いいですよ!順番ゆずってあげますね、ノアねえさまが先行です」
うふふふと笑うエイシスに目がうるうるになるノアはまた胸にぐりぐり攻撃で誤魔化すのだった。
(あぁぁダメだわ‥‥本当に好きすぎるノアねえさま。もうエイシスと結婚してほしいです)
そんなことを考えながら、抱きしめあったまま寝てしまうのだった。
明日は大変な一日になりますねえと微笑みながら。
本当に大変なことになるとは思いもしないで。




