【第9話:アストラルをプロジェクション】
アミュアと頷きあってユアが説明を続ける。
「最初に魔王から取り返したときにね‥‥巫女の能力で心を別の所に避難させて、耐えたのだって聞いたの」
ユアの言葉にエイリスの顔色が一気に悪くなる。
「ま‥‥魔王‥‥」
どこで気づいたのか、すっとメアリーがいつの間にか側に来ていて、エイリスの背を支える。
「大丈夫エイリス?」
「‥‥うん‥‥平気だよメアリーありがと‥‥」
ぎゅっと支え合う二人を見て、アミュアもユアに寄り添う。
「エイリスも魔王にとらわれていたのです‥‥死の直前まで‥‥」
エイリスの肩を抱くメアリーの目線はユアをまっすぐ捉える。
責める視線ではないが、エイリスを守る強い意志を感じる。
アイスブルーのきりっとした瞳が、カーニャに似ているなとユアは思った。
「ごめんなさい‥‥メアリーさん知らなかったの。エイリスもごめんね‥‥」
「いいの気にしないでユア‥‥もう大丈夫よメアリーありがとう」
とても自然にちゅっと唇を合せてキスをするエイリスとメアリーは、にこっと頷きあって離れる。
アミュアはとても自然な二人の愛に感動してうるうるなっている。
(わ‥‥わたしもユアとあれくらい自然になりたいな‥‥)
アミュアは野望を抱いてしまうのだった。
しばらく巫女が能力で出来ることを色々聞いたユアとアミュア。
ユアがちょっと考えてから聞く。
「巫女が心を投影して守るとしたら‥‥どこに心を置くと思う?カーニャは精神の中と表現していたけど‥‥」
エイリスはまたぽっと赤くなる。
「ええとですね‥‥わたしは自分の内蔵の中で一番大事だとおもっている場所に投影しました」
ほっぺを両手で挟んで自分が赤くなっているのを自覚するエイリス。
「たぶん‥‥カーニャさんが一番大事だと思う場所に投影するはず‥‥場所と言うけど、それは場所ではないの‥‥大事だと思ったものを心のなかに置き、その中に投影するの」
後半は赤面を収めて、真剣な顔にもどったエリリス。
「いちばん‥‥大事な‥‥」
考え込むユアをまた心配そうにみるアミュア。
エイリスは透明なそのアミュアの思いやりの姿に、懐かしげな瞳を向けた。
「アミュアは本当にユアが好きなのね‥‥とてもかわいいわ」
エイリスに褒められてぽっと赤くなるアミュア。
「エイリスとメアリーさんもすごく自然で‥うらやましいです‥‥」
くすくすと笑うエイリス。
「だってわたし達もう結婚して23年になるんだよ‥‥年季が違うの」
『えええ?!!』
あははとエイリスは楽しそうに笑う。
「ここでは歳を取らないの‥‥天国だと思っているんだ‥‥住人はあちらの世界で死んだ時の姿で変わらずずっと居るの」
ユアはハッとしてエイリスを見る。
思い出したのだ。
「カーニャを最後に感じたのはヴァルディア家の中庭だった。カーニャにとって、とても大事な場所だと思う‥‥カーニャのパパさんとママさんがプロポーズした場所だとも前に聞いていたの」
ユアはまた目が赤くなってしまう。
「ここでもう一度プロポーズしてとねだられたの‥‥それで‥キスしたら、それからカーニャは感じられなくなった」
アミュアはぎゅっとユアの肩に顔を隠す。
ふくれっ面を見せないように。
エイリスは気づいて、優しい笑顔になる。
「あの場所に‥‥カーニャの心がいるのかな‥‥」
ユアはアミュアに気が回らず考えにまた沈む。
エイリスも真面目な顔に戻し考え込む。
「そのカーニャさんがわからないので、推察ですが‥‥何かそのプロポーズかキスにきっかけが有ったのでしょうね‥‥実際にカーニャさんを投射してみなければ解決しないと思う」
じっとアミュアとユアを見るエイリス。
「二人のどちらかがアストラル・プロジェクションを使うのが良いと思う」
顔を見合わすユアとアミュア。
「アミュアできる?」
「できないです‥‥ユアはペルクールを使う時黄金の時間に投射しているのだと思うよ。わたし達にはぱっと光って終わりにみえるのに、長い時間をみてくるんでしょ?」
「そうなのかな‥‥」
エイリスは巫女の顔に戻し真剣に二人を見比べる。
「わたしには二人共に能力の兆しを感じる‥‥一度見せるので、感じ取ってみましょう」
そう言って両手をそれぞれに向け伸ばす。
「手をそれぞれとって、目を閉じて」
エイリスの指示に従うユアとアミュア。
速やかに精神投射され、二人は意識を失った。
アミュアは真っ暗な闇の中で目を覚ました。
すぐ側にユアが寝ているので手を伸ばしたが、つき抜けてしまう。
「むぅ?!」
すかすかと何度か試すがユアには触れられなかった。
(ふふふアミュアは本当にかわいいわ‥‥たべちゃいたい‥‥)
なぜか悪寒を感じてゾクっとなるアミュア。
振り向くとそこにピンク色の貫頭衣姿で、少しだけ先程より若いエイリスがいる。
特に大きかった胸が小さくなっているのが目についた。
一瞬で心の会話だと理解し切り替えるアミュア。
アミュアもユアも先ほどと変わらない姿だ。
(これは心で話をするわけですね?エイリスさんの‥欲望をかんじました‥‥)
そう言って両手で身体を隠す半眼のアミュア。
ぎくっとなるエイリス。
(うふふ、ごめんね‥‥あんまりアミュアがかわいいから‥‥はんせいしました‥‥)
(これはラウマ様と接続する感覚と似ています‥‥どうやってこの状態にすればいいのでしょう?)
エイリスは心を整えて、話を続ける。
(瞑想してイメージを整えるのです。人によって手順はそれぞれです。わたしは身体の部位に意識を向けて集中していきます)
エイリスは両手を喉にそえ、そこから胸におへそにと下りて下腹部で止まる。
(こういった手順は人それぞれで、アミュアにはアミュアのやり方になると思う)
アミュアは難しい顔。
(むむぅ‥‥むずかしいのです‥‥)
クスクスと優しい笑顔の気配がエイリスから届く。
(身体ではなく、心をイメージします‥‥心の有る場所をイメージするのです。それは一人ひとり違う場所に有るはずです)
アミュアは目を閉じてみた。
深く心を意識して探る。




