第7話「最強ヴァンパイア、MCをちょっと習得す!」
予選での惨敗から数日。
リーラは珍しく肩を落としていた。勝利しか知らぬ最強ヴァンパイアにとって、敗北は初めて味わう屈辱であった。
「……我のせいじゃ」
落ち込むリーラに、ユウトはため息をつき、肩を軽く叩いた。
「リーラ、ちょっと付き合ってくれ。場所は……公園だ」
「公園? なぜそんな所へ」
「人目を気にせず声を出せるからだよ。MCの特訓をするんだ」
―――
▪️夜の公園
街灯に照らされた小さな公園。初めてユウトと会った日、チョコバナナクレープを食べた公園だ。
二人だけの静かなステージだった。
「さあ、まずはいつも通りやってみて。観客が目の前にいると思って」
リーラは胸を張り、夜空へ声を放つ。
「下僕ども! 我が声を浴び、魂を震わせるがよい!」
体が浮き上がりそうな強烈な声だ。ユウトの髪が立っている。
ユウトは髪を直しながら、首を横に振った。
「……リーラ、それだと観客は喜ばない」
「な、何故じゃ! 戦いの前はこうして敵を威圧するものだろう!」
「戦いならな。でも音楽は違う。観客は敵じゃない、味方なんだ」
―――
▪️諭す声
「じゃあ、こういうのはどうじゃ!」
リーラはさらに声を張る。
「我が歌を聴く栄誉を与えてやろう!」
ユウトは苦笑し、優しく言葉を選んだ。
「うーん……それもやっぱり、少し上からに聞こえるな」
「ぐぬ……では、どうすればよい」
ユウトはギターを軽く爪弾きながら、落ち着いた声で語る。
「リーラ。お前の歌は本気だからこそ人に届くんだ。だったらMCも同じでいい。飾らず、素直に。来てくれた人に感謝を伝えるだけでいいんだよ」
リーラは目を瞬かせ、黙り込んだ。
「……感謝、か」
―――
▪️素直な言葉
しばしの沈黙の後、リーラは観客を想像するように夜空を見上げ、口を開いた。
「……来てくれて、嬉しいぞ」
それはぎこちなくも、確かな気持ちのこもった声だった。
ユウトは笑みを浮かべて頷いた。
「それだ。難しいことじゃない。お前の心を、そのまま言えばいいんだ」
「……心を差し出す、か。なるほど、歌う前にまずそれを示せばよいのだな」
リーラは何か手応えを感じ、小さく微笑み、胸に手を当てた。
―――
▪️新しい決意
「ならば次のバトルでは……こう言おう」
リーラは真剣な眼差しでユウトを見つめる。
「皆の者! 来てくれて感謝する。我が歌をもって、最高の夜を贈ろう!」
ユウトは笑いながら大きく頷いた。
「いいじゃん。それなら観客もついてきてくれるさ」
「ふふ……ようやく分かったぞ。勝つためには、まず心を示すこと。肝に銘じておこう」
ユウトはアプリをチェックした。
「次のライブは3日後だ!絶対に成功させよう!」
二人は夜風に吹かれながら、どこか清々しい気持ちで笑い合った。
ユウトの、魔ネージメントスキルの真髄に気づかないリーラであった。
(とはいえ、観客と向き合う大切さに気づいたので、一歩成長です。良しとしましょう)
その頃、魔界では、「今回はユウトのリーダー資質が見えた回になったが、リーラが身につけねば、王位は継承できぬぞ」ヴァンパイア王の心配は続く。
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