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第64話「最強ヴァンパイア、終焉の序曲(プレリュード・オブ・エンド)、魔王と相対す!」

 ――地が、鳴っていた。


 爆音にも似た咆哮が大地を裂き、黒い影が無限に湧き出していた。

 影竜の群れが夜空を覆い、その尾が雷光を纏う。

 炎と闇の嵐が交差する中、リーラたちは必死に前線を押さえていた。


「来るぞ、ルーナ! 右から三体、左に一体!」


「了解です、姉様!」


 双剣が交錯し、閃光が走る。

 ルーナの白刃が影竜の首を刎ね、リーラの漆黒の刃が残った群れを一掃する。

 しかし、次の瞬間にはまた新たな影竜が生まれていた。

 まるで、戦うほどに増えていくかのように。


「チッ、きりがねぇな……!」


 獣族の狼王が吠える。牙を光らせ、影竜の腹を切り裂くが、その影はすぐ再生した。

 鬼神丸がその隣で金棒を振り回し、地を叩き割る。


「どうなってる! いくら倒しても無限湧きであるぞ!」


 その時――

 烈風が走った。

 空気が震え、黒い残光が閃いたかと思うと、周囲の影竜が一瞬で霧散した。


「……遅れて悪い。」


 黒のマントを翻し、紅い瞳の男が立っていた。

 ヴァンパイア軍最強の戦士、《セリウス》。

 その姿はまるで、闇に舞い降りた死神のようだった。


「セリウス!」

 ルーナが叫ぶ。


 セリウスは静かに剣を収め、リーラを見上げた。

 戦場の喧騒の中でも、彼の声はまっすぐに届く。


「……今度こそ、オレがお前らを守ってやる。」


 リーラの瞳がわずかに揺れた。

 かつて、セリウスは“力”に囚われ、仲間を失ったことがある。

 その痛みを胸に抱えながら、それでも彼は前へ進み続けてきた。


「セリウス……」


「心配すんな。オレはもう迷わねぇ。

 ここはオレに任せろ。お前は――魔王を倒してこい。」


 その言葉に、リーラはしばし沈黙した。

 だが次の瞬間、静かに頷いた。


「……わかった。お主に任せる。」


 セリウスの唇がわずかに歪む。

 それは戦場の中では珍しい、微かな笑みだった。


「フッ……ようやく信じてくれたな。」


「最初から信じておったさ。――ずっとな。」


 リーラのマントが翻る。

 ルーナが翼を広げ、ドラク率いる竜族部隊が後に続く。

 雷鳴のような咆哮と共に、彼らは魔王の居城を目指して飛び立った。


「行けぇッ!! この地は俺たちが死守する!!」


 背後で、セリウスの剣が再び閃光を放った。

 黒と紅の斬撃が空を切り裂き、数百の影竜を一掃する。

 その力強さはまるで、一人の戦場そのもの。


 鬼神丸が吠える。

「おぉ……奴が敵だったら地獄ぞ。」


 狼王も笑う。

「だが味方なら、これほど頼もしい奴もいねぇ。」


 そして再び、影竜たちとの壮絶な戦いが始まった。


 リーラ、ルーナ、ドラクたち一部の竜族は魔王の居城――《デモニア深層・最奥》へと辿り着いた。

 巨大な門が開き、冷たい風が吹き抜ける。

 空気が重い。まるで“音そのもの”が息を潜めているかのようだった。


 ルーナが呟く。

「……ここが、魔王の間。」


 ドラクが前に出て、翼を広げた。

 その黄金の瞳が、静かに闇を見つめる。


「I can sense him.(感じる……指導者の気配がある。)」


「Go, Drak. We will stop the Demon King.」

(行け、ドラク。我らは魔王を止める。)


「Understood.(了解した。)」


 ドラクと竜族の部下たちは左右の通路へ分かれ、指導者の捜索へと向かった。

 そして、リーラとルーナはまっすぐに中央の広間――“音の間”へと進む。


 そこは、まるで巨大なコンサートホールのようだった。

 だがステージの上には楽器ではなく、血で染まった鎖と影の糸が無数に吊られている。

 音が鳴っている――それも、生々しい音だ。

 泣き声。呻き声。命の断末魔が、調和の旋律を奏でていた。


「……っ、これは……!」


 ルーナが唇を震わせる。

 その中央に――黒衣の男が立っていた。


 魔王ネフィアス

 紅い瞳を細め、ゆっくりと指揮棒を掲げていた。


「やはり来たか、リーラ。

 よくぞ、我が“楽団”へ。」


 彼が軽く手を振ると、背後の“オーケストラ”が一斉に動き出す。

 影の兵たちが音を奏で、地が震えるほどの重奏が響き渡った。


「どうだ、美しいだろう?

 これこそが“音楽”だ。

 悲鳴も嘆きも怒号も、全て支配することで調和する。

 余は、世界を指揮する“真のマエストロ”だ。」


 リーラは剣を構えたまま、ゆっくりと首を横に振った。


「違う。

 音楽は、誰かを支配するためのものではない。」


 ネフィアスの瞳がわずかに光を増す。


「ほう?」


 リーラの声が、闇の中で静かに響いた。


「音は魂だ。

 それぞれが異なる音を持ち、互いに響き合うからこそ――“音楽”となる。

 種族も同じじゃ。争いではなく、共に奏でることで新しい旋律が生まれるのじゃ。」


 ルーナも続いた。


「私たちは人間界で、それを知りました。

 違う音がぶつかり合うことで、もっと美しい“ハーモニー”が生まれるのです!」


 ネフィアスは嘲笑を漏らす。


「くだらぬ理想だ。

 共鳴とは、支配の形を変えただけ。

 強者が弱者を導き、調律するからこそ秩序は保たれるのだ。」


 その瞬間、魔王の手が動いた。

 オーケストラが一斉に鳴り響き、闇が爆発する。


 ドラムの轟音、トランペットの絶叫、弦の悲鳴。

 それはもはや“音楽”ではなかった。――破壊そのものだ。


「さあ、感じるがいい! これが“支配の旋律(Symphony of Dominion)”だ!!」


 黒い音の波が、リーラとルーナを襲う。

 空気が震え、耳鳴りが全身を刺す。

 だが――その中でも、リーラは目を閉じた。


「……ルーナ。」


「はい、姉様。」


 リーラは静かに笑い、双剣を交差させた。


「ならば――我らも奏でよう。

 共存の旋律(Harmony of Souls)を!」


 二人が同時に剣を振り抜く。

 光の刃が空を裂き、純白の波動が闇を押し返す。

 その音は、ネフィアスの支配する旋律に真っ向からぶつかった。


「何ッ……!」


 ネフィアスの顔に一瞬焦りが走る。

 だが、彼はすぐに笑った。


「いいぞ、リーラ。お前の“音”は確かに美しい。

 だが――この世界を覆うには弱すぎる!」


 指揮棒が高く掲げられ、全軍が鳴り響く。

 空間が震え、音の奔流が嵐のように吹き荒れる。

 黒と白の旋律が交錯し、天井が崩れ、光が砕け散る。


 リーラが叫んだ。


「ルーナ、行くぞッ!」


「はい、姉様!!」


 双翼が爆ぜ、光が閃く。

 二人は一瞬で距離を詰め、魔王の指揮台へと突き進んだ。

 炎のような音、嵐のような衝撃。

 その全てを貫き、二人の剣が魔王を目指す。


 ネフィアスの紅い瞳が輝く。

 その瞳の奥に、かすかな興奮が見えた。


「そうだ……それでいい。

 音楽とは、戦いだ。魂と魂のぶつかり合い……!」


 そして――闇と光が衝突した。


 世界が音で埋め尽くされる。

 光が爆ぜ、影が蠢き、あらゆる旋律が混ざり合う。

 天も地も、音楽の渦に飲み込まれた。


 ――その中心で、リーラとネフィアスの刃が交わった。


「この戦い……終わらせてみせる!!」


「ならば、奏でてみせろ……お前の“終焉の音”を!」


 轟音。閃光。

 そして、世界が――白く染まった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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よろしくお願いします。

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