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第62話 「最強ヴァンパイア、魔王ネフィアス降臨す!」

 ――空が、裂けた。


 紅と黒の閃光が夜空を走り、魔界全土が揺れる。

 その中心に立つ、銀髪紅眼の青年――魔王ネフィアス。

 かつて封じられた“器”ではなく、“記憶”そのものが完全に蘇りつつあった。


 リーラは双剣を構え、睨みつける。

 ルーナが背後に立ち、白き翼を広げた。


「……ネフィアス。お前の影が、再びこの世界を覆うというのなら――」

「ふふ、やはりお前は変わらぬな、リーラ。理屈より、先に刃を交える目をしている。」


 彼の声が響くたびに、空気が歪む。

 まるで言葉そのものが呪いのようだ。


「余の記憶は、まもなく完全に戻る。

 この時を、どれほど待ち望んだことか……。

 リーラ、お前も感じておるだろう? この“高鳴り”を。」


 ネフィアスがゆっくりと笑う。

 その眼差しは、獲物を見つめる猛獣のように熱を帯びていた。


「戦うのが好きだろう? リーラ。

 血が滾るのではないか? 剣を振るい、命を懸ける瞬間――

 いっそのこと、余のもとへ来ぬか? 一緒に“戦い”を楽しもうではないか。」


「……」

 リーラは静かに瞳を閉じた。

 そして、一歩、前へ踏み出す。


「確かに、私は戦う。だが――好きで戦っているわけではない。」


 双月の光が彼女の剣を照らす。

 黒と白の輝きが交錯し、彼女の声が夜に響いた。


「私は、お前を倒す。

 そして、戦いのない世界を――私の手で作る。」


 ネフィアスの笑みが、すっと消える。

 次の瞬間、世界が裂けた。


 黒い炎が天を貫き、地平線まで広がる。

 それはまるで、絶望そのものが姿を成したかのようだった。


「面白くないのう……」

 その声は低く、冷たい。

「ならば、余が楽しませてやろう。――この世界ごと、滅びるがよい!」


 咆哮が走った。


 影竜の群れが再び地を覆い、獣族と鬼族の陣地へ突撃する。

 その数、まさに黒い津波。


「Yo、立ち上がれ、pack(群れ)! 恐怖に噛まれる前に、噛み返せッ!」

 狼王が叫ぶ。韻を刻むその声が雷鳴のように戦場に響き渡る。

「爪を鳴らせ、牙を研げ! 影竜だろうが関係ねぇ、

 俺たちの吠声ハウルで、世界を揺らせッ!!」


 その叫びに応えるように、獣族の兵たちが雄叫びを上げた。

 群れが一斉に走り、影竜へと飛びかかる。

 闇を裂く咆哮と、閃く牙――。

 そのたびに黒い霧が弾け、影が悲鳴を上げた。


 一方、鬼族陣地では、鬼神丸が戦太鼓を叩き続けていた。

 ドドドドン――!

 轟くその音は、戦のリズム。兵たちの鼓動を刻む命のビート。


「止まるなァッ! 叩けェッ! この鼓動が、俺らの命だァッ!!」


 赤き鬼の雄叫びが轟き、鬼たちが突撃する。

 太鼓のリズムが重なるたびに、影竜の体が裂け、爆ぜる。

 それはまるで、一つの“音楽”のようだった。


 ――戦の交響曲が、魔界を染め上げる。


「ドラク、状況はどうじゃ!」

 リーラが叫ぶと、空の上から竜の咆哮が返ってきた。


「The enemy numbers are endless… but our flames shall not fade!

 (敵は無限だ……だが、我らの炎は絶えぬ!)」


 ドラクが翼を広げ、天を焦がす炎を吐き出す。

 青白い火線が空を裂き、影の軍を焼き尽くしていく。

 その姿は、まさに“希望”の竜そのものだった。


「おのれ……!」

 ネフィアスが手をかざすと、黒い稲妻が竜族の陣を貫いた。

 炎と闇がぶつかり合い、空中で爆発が連鎖する。

 光と闇の狭間で、叫びが上がった。


「リーラ様! 竜族が押されています!」


「わかっておる! だが……退くな!」


 リーラの叫びが響く。

 黒き翼を広げ、彼女はネフィアスのもとへ一直線に飛び出した。

 その後を、ルーナが追う。


「姉様、援護します!」


「ルーナ、離れるな!」


 二人の翼が交差し、黒と白の閃光が夜を裂いた。

 リーラの剣がネフィアスへと突き立つ――!


 ――だが、その刃は空を切った。


「……ッ!?」

 リーラの表情が一瞬で強張る。

 そこにいたはずのネフィアスの姿が、霧のように揺らぎ、消える。


「姉様! 影です、実体じゃありません!」

 ルーナが叫ぶ。


 次の瞬間、風の中に、あの笑い声が響いた。

 低く、甘く、嘲るように。


「フフ……焦るな、リーラ。

 これは、ただの“序章”だ。

 余の記憶は、まだ完全ではない。だが――次に会う時こそ、本当の戦だ。」


 声だけが、残った。

 黒い霧が風に散り、跡形もなく消え去る。


 戦場は静まり返った。

 影竜たちは次々と崩れ落ち、霧となって消えていく。

 だが、誰も勝利の声を上げなかった。


 焦げた大地、倒れ伏す仲間たち。

 戦いは終わっていない。

 いや――今、ようやく“始まった”のだ。


「ネフィアス……必ず、私が止めてみせる。」

 リーラは剣を握り直す。

 双月の光が、その刃に反射して煌めいた。


 ルーナが隣に立ち、静かに頷く。

 その小さな声は、確かな決意に満ちていた。


「次は……決着ですね、姉様。」


「うむ。もう逃さぬ。

 奴が完全に“記憶”を取り戻す前に、封じる。

 今度こそ――終わらせる。」


 黒い風が吹いた。

 遠く、デモニア深層の方向から、再び不穏な波動が響く。


 ネフィアスの笑い声が、まるで世界の裏側から木霊するように。


「楽しみにしておるぞ……リーラ。」


 そして、紅と黒の双月が、血のように輝きを増した。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!

よろしくお願いします。

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