表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/69

第60話 「最強ヴァンパイア、魔界へ凱旋す!」

いつも見ていただいて、ありがとうございます!

ついに60話に突入しました。

魔界編の幕開けです!

 ――黒き風が、空を裂いた。

 人間界の夜を越え、深淵の門が開かれる。

 そこは、光すら届かぬ異界。

 炎と影の大地――魔界。


 長い年月を経て、今またその扉が揺らぎ始めていた。


 魔界には、五つの種族が存在する。

 ヴァンパイア族、獣族、鬼族、竜族、そして魔族。

 それぞれが独自の領土を持ち、己の誇りと掟を守ってきた。


 だが――

 その均衡を破ったのが、最後の一つ。

 魔族である。


 彼らは他のすべてを「支配すべきもの」と考えていた。

 奪い、支配し、同族すら喰らう。

 それが魔族の“生”であり、“ことわり”であった。


 数百年前――

 魔族は軍勢を率い、ヴァンパイア王国を襲撃した。

 その戦いは、魔界史上最も凄惨な戦争として語り継がれている。


 当時、魔王軍が恐れたのは――若き戦士、セリウス。

 最強の剣士にして、リーラの右腕と呼ばれた男。

 だが、魔王の幻術に囚われ、心を操られてしまった。


 その混乱の中で多くの同胞が倒れ、国は滅亡寸前に追い込まれた。

 だが――最後の瞬間、

 リーラはその命と魔力を賭して、魔王を封印した。


 それから百余年。

 封印は、今――解けようとしている。


「……戻ってきたのう、ルーナ。」


 黒い翼をたたみ、リーラは荒野に立つ。

 その隣で、白銀の翼を揺らす妹ルーナが、静かに息を吐いた。


「ええ……懐かしい匂いがします。けれど、少し違う。

 空気が……濁っている。」


 魔界の大地は、ひび割れ、炎が吹き出している。

 遠くの山々からは黒煙が立ち上り、空には不気味な魔力の稲光が走っていた。


「封印が弱まっておる証拠じゃ。急がねば、奴が完全に目覚める。」


 リーラは拳を握る。

 そして――微笑んだ。


「だが、今度は違う。

 我らには仲間がいる。」


 その言葉に応えるように、遠くの丘に巨大な影が降り立った。

 獣族の戦士たちが唸り、鬼族の軍団が槍を掲げる。

 さらにその上空を、竜族の戦闘隊が旋回していた。


 リーラは静かに頷く。


「獣族、鬼族、竜族……。

 皆、よくぞ集まってくれた。

 今度こそ、魔王を完全に討つ。」


 その瞳は、燃え上がる炎のように強く輝いていた。


 そして――二人は、ヴァンパイア王国へと帰還した。


 高くそびえる尖塔の城。

 赤い月が照らす大理石の階段。

 久しぶりに見る故郷の光景に、ルーナは小さく息を呑んだ。


「懐かしい……。父上は、今もお元気かしら。」


「さてのう。だが、泣くであろうな。」


 リーラが苦笑しながら呟く。

 その直後、玉座の間の扉が勢いよく開かれた。


「おおおおおおおお!! リーラァァァァァ!! ルーナァァァァァ!!」


「ちょ、父上!? 涙が!!」


 ヴァンパイア王――彼女たちの父は、

 あまりの嬉しさに涙を滝のように流していた。

 床はすでに池状態で、ルーナの裾がびしょびしょになっている。


「う、うわぁっ……! し、城が沈む……!」


「父上、泣きすぎじゃ!!」


「すまぬっ! だが嬉しいのだっ! 百年ぶりにルーナに会えた! 信じてよかった!」


 リーラは苦笑しながら、そっと父の背に手を置く。


「……父上。」


 ルーナは深く頭を下げた。


「私のせいで、国を危機に晒しました。……申し訳ありません。」


「よい、よいのだ!」

 王は涙を拭い、深く息を吸った。

 その瞳に、再び威厳が宿る。


「ルーナ。よう戻った。

 そして――リーラよ、そなたは見事であった。」


「全て見ておった。

 人間界での戦い、音楽の舞台、そして“心”の戦いもな。

 あの戦いを制し、さらに獣族・鬼族・竜族を味方につけた。

 まさしく、王の器よ。」


「……過分な評価です、父上。」


「謙遜するでない。だが――」

 王の声が低くなる。

 その瞳には、深い影が宿っていた。


「時は迫っておる。

 魔王の封印が、まもなく解ける。」


 ルーナが息を呑んだ。


「やはり……感じます。あの、黒い波動。」


「うむ。しかも以前よりも強い。まるで……兄弟になったかのようにな。」


「兄弟……?」


「そうだ。魔王は封印の際、自らの魂を二つに分けた。

 片方を“影”、片方を“器”としてな。リーラが封印したのは“器”の方だ。

 だが、“影”は常に活動しておった。

 つまり――影の力だけで、以前の魔王を凌ぐ力を持っておる可能性が高い。

 奴が完全に融合すれば、もはや誰も止められぬ。」


 リーラの瞳が鋭く光る。


「ならば――止めるしかあるまい。」


「うむ。」

 王は玉座から立ち上がり、赤いマントを翻した。

 その声には、王としての威厳と、父としての誇りが混ざっていた。


「リーラ、全軍の指揮を任せる。

 ヴァンパイア族のみならず、獣族、鬼族、竜族の連合軍を束ねよ。

 この戦いの総大将は、そなたしかおらぬ。」


 ルーナが顔を上げる。


「姉様が……総大将に……!」


「父上……我にそこまでの力が?」


「あるとも。

 人間界でそなたが見せたもの――“導く力”だ。

 それが今、魔界にこそ必要なのだ。」


 リーラは目を閉じた。

 そして――静かに頷いた。


「承知しました。

 我が命に代えても、魔王を討ちます。」


 王の表情が、ゆっくりと笑みに変わった。

 まるで、誇らしい娘を見つめるように。


「行け、リーラ。魔界の未来を――お前に託す。」


 その言葉に、玉座の間の空気が震えた。

 黒き翼が、再び広がる。

 その羽ばたきは、まるで新たな戦いの鐘の音のように響いた。


 ――魔界の空に、二つの月が昇る。

 赤と白、対をなす光が世界を染め上げた。


 リーラは城のバルコニーに立ち、遠くの闇を見据えた。

 その唇から、低く呟きが漏れる。


「今度こそ……終わらせる。

 この呪われた輪廻を――。」


 ルーナが隣に立つ。


「ええ、姉様。今度は、共に。」


 風が吹く。

 黒と白の翼が夜空をなぞり、炎のように揺れた。


 ――魔界編、開幕。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ