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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
59/69

サイドストーリー「最強ヴァンパイア、人間界で初めてのデートを経験す!」

魔界編に行く前に、サイドストーリーをお楽しみください☆

 ――時は少し遡る。


 ヴァンパイアの王女・リーラが人間界に降り立って間もないころ。

 その姿は、まるで夜の光を閉じ込めたように美しかった。

 月光色の髪、赤い瞳、そしてどこか浮世離れした雰囲気。

 歩くだけで周囲の視線を集めるのも、無理はない。


 そんなリーラが、夜の繁華街を歩いていた。

 人間界の観察のため――そして、なにより「食」に興味津々だったからだ。


「この街は……眩しいのう。あれが“ネオン”というやつか。」


 看板がピカピカと光り、香ばしい匂いが道のあちこちから漂ってくる。

 串焼き、ラーメン、ピザ、タピオカ。人間たちはまるで魔法のような技術で食を作り出していた。


 そんな彼女に、声をかける者がいた。


「ねぇねぇ、お姉さん、めっちゃ可愛いじゃん! 一緒にご飯どう?」


 金髪にピアス、香水の匂いが強い若者。

 リーラは首を傾げた。


「む……貴様、今“可愛い”と言ったな?」


「う、うん、言ったけど……あれ、怒った?」


「いや、嬉しいのう! 褒められるのは好きじゃ!」


 リーラは満面の笑みで答える。

 その無垢な笑顔に、チャラ男の方が一瞬たじろいだ。


「じゃ、じゃあ決まり! 俺、カイト! お姉さん名前は?」


「リーラじゃ。」


「リーラちゃんね! よし、メシ行こ!」


「よかろう!」


 こうして、王族ヴァンパイアの“初ナンパデート”が幕を開けた。


 カイトが案内したのは、最近流行りの「創作イタリアン×和食フュージョンレストラン《OROCHI TABLE》」。


 内装はモダンで、間接照明がやたらとオシャレ。

 グラスの水にはレモンが浮かび、店員は全員黒いシャツで統一されている。


「すごいのう……! まるで城の晩餐のようじゃ!」


「ははっ、そんな大げさな。好きなもん頼みなよ。俺、今日奢るから!」


「ほほう? 本当に良いのか?」


「もちろん! 遠慮すんなって!」


「ならば、遠慮はせぬ!」


 リーラはタッチパネルを覗き込む。

 画面が光り、料理の写真がずらりと並ぶ。


「なんと……魔法の鏡のようじゃ……! 指で押すと、注文できるのか!?」


「そうそう、押せば届くやつ!」


「なるほど……では――これと、これと……これも美味そうじゃ! それから――」


 リーラの瞳がキラキラと輝く。

 画面を押す指が止まらない。


「え、ちょ、リーラちゃん? まだ頼むの?」


「うむ、まだ始まったばかりじゃ!」


 その後、10分ほどで――

 テーブルはまるで宴会のような光景になった。


「お待たせしました~!」

 運ばれてくる皿、皿、皿。

 カルボナーラ、ステーキ、うなぎ、パスタ、寿司ピザ、抹茶リゾット……。

 店員も苦笑いしていた。


「これ全部……!?」


「うむ。どれも気になったのでな!」


 リーラはフォークを持ち、真剣な顔で構えた。


「では――いただこう!」


 その一口目。

 目を輝かせ、口角を上げた。


「……美味い!!」


 そこからの勢いは止まらない。

 ヴァンパイアの超人的な代謝と体力で、次々と皿を平らげていく。


「カイトよ、これも絶品じゃ! この“トリュフ”とやら、香りがよいのう!」


「い、いや……そんなに食えるのか……?」


「まだいける!」


 結局、すべての皿が綺麗に空になった。

 店員が会計票を置いて去る。


 金額――10万3200円。


「ふむ、なかなかの学びであった。良い晩餐じゃ!」


「お、俺の財布も……学びを得た……。」


「感謝するぞ、カイト。良き“食の師”であった。」


「師……!?」


 そして次に向かったのは、カイトの提案で「カラオケ」。


「リーラちゃん、歌うの好き?」


「うむ。音楽は大好きじゃ。人間の“カラオケ”というもの、体験してみたかったのじゃ。」


 部屋に入ると、ネオンライトが光り、マイクが二本。

 カイトがリモコンを握り、自信満々に笑った。


「まずは俺から! 聴いてな、心震えるラブソング!」


 曲が流れる。

 カイトはノリノリで歌う。

 音程は多少ズレているが、魂はこもっていた。


「なかなかじゃの。熱がある。」


「だろ? じゃ、次リーラちゃんね!」


 リーラはジュースを一口飲み、静かに息を吸った。

 リモコンの検索欄に、言葉を打つ。


 流れ出したのは、古の英語のバラード。

 彼女の声が響く。


 最初の一音で、カイトの目が見開かれた。

 音が光となり、空気を震わせる。

 高音は天井を突き抜け、低音は心臓を震わせる。

 それはまるで、魂を抱きしめるような歌声。


 曲が中盤に差し掛かったとき、カイトの頬を一筋の涙が伝っていた。


「……な、なんだよ……これ……。歌、って、こんな……。」


 すると、ドアの外から人の声が。


「ねぇ今の誰の曲!?」「生歌!?」「やば……聞こえる!」


 あっという間に廊下の人がドアを開け、部屋はぎゅうぎゅうになった。

 みんな泣いていた。

 年齢も性別も関係ない。ただ、その歌に心を打たれていた。


「名前、教えてください! あなた、誰ですか!?」


 リーラは少しだけ微笑んで言った。


「我は――リーラじゃ。」


 拍手が起こる。

 誰もがその名を心に刻んだ。


 その夜、カイトは帰り際に小さくつぶやいた。


「なぁ、リーラちゃん。今日のこと、絶対忘れないから。」


「うむ、よい夜であった。人間界の“食”と“音”、なかなか面白いのう。」


 夜風が二人の間を通り抜ける。

 ビルの明かりが星のように輝いていた。


 その後、《OROCHI TABLE》では「黒髪の美女が全メニューを食べ尽くした夜」として語り継がれ、

 カラオケ店では「伝説の歌姫」として、謎の名“リーラ”が記録に残ることになる。


 ――人間界、初ナンパ事件。

 それは、リーラにとっても忘れられない夜となった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!

よろしくお願いします。

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