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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
53/69

第53話「最強ヴァンパイア、先手必勝!ライブの空気を制す!」

「先手必勝――いくぞ!」


 ユウトがギターを掲げ、弦を弾いた瞬間――

 ドォォォン!!!


 爆音がドームを貫いた。

 光と音が交差し、ブラムーのステージが幕を開ける。


 観客が一気に立ち上がり、嵐のような歓声が吹き荒れた。


「イェェーーー!!!」

「ブラムーだああああ!!!」


 マナブのベースが地を震わせ、アカネのスティックが稲妻のように走る。

 ユウトのギターが、火の竜のように唸りを上げる。


 ――先手必勝。


 相手は“歌姫”。

 ならば、こちらは“バンドの力”で空気を制するのみ。


 それがマナブの立てた戦略だった。


「空気を作るんだ。最初の一曲で、俺たちの音を刻みつけろ!」


 その言葉どおり、ブラムーは開始一秒目から全開だ。


「イェェェエエエエ!!!」

 リーラの叫びが天井を突き抜ける。


 速い。激しい。

 アカネのドラムが、雷鳴のように叩き込まれ、

 ユウトのギターは音の奔流を撒き散らす。

 マナブの低音が空気を揺らし、観客の胸を打つ。


 そして――リーラの声。


 それは、美しさと獰猛さを併せ持つ、剣のような“銀色の咆哮”だった。


「闇よ貫けぇぇぇ!!!」

「光を求めて 自分の音を奏でよう!!」


 ステージのLEDが激しく点滅し、観客の手が一斉に上がる。


「うおおおおお!!!」

「ブラムー最高だあああ!!!」


 音、光、感情――すべてがひとつに溶け合っていく。


 ユウトがギターソロに突入した。

 光の弾丸のような速弾きが空気を切り裂き、観客の叫びが波のように重なる。


 リーラは最後の息を吸い込み、放つ。


「響けぇぇぇぇぇ!!!!」


 ――ジャァァァァァァァァンッ!!!


 曲が終わった瞬間、爆発のような歓声が巻き起こる。


「すげぇ……!」

「鳥肌が止まらねえ……!」

「音が嵐みたいだった……!」


 審査員席も騒然となる。


「信じられない……たった二日でここまで仕上げてくるとは」

「音の正確さ、ダイナミクス、ステージング――どれも一級品だ」


 観客も審査員も、ブラムーの進化に息を呑んでいた。


 ステージ中央で、リーラが汗を拭いながら微笑む。

 その赤い瞳が、戦士のように輝く。


「ふふ……悪くない滑り出しじゃ。」


 アカネがスティックをくるくると回し、歯を見せる。

「最高にキマったっしょ!」


 ユウトも弦を軽く弾き、息を吐いた。

「ここまでは完璧だ……」


 マナブは深く頷き、ステージの向こうを見据える。

「さあ――ダルク氏。あなたはどう出る?」


 暗転。


 ステージ全体が静まり返った。

 光が消え、音も消え、巨大なドームに緊張が満ちていく。


 観客は息を潜めたまま、次の瞬間を待つ。

「……来ない?」


 ざわめきが波のように広がる。


 審査員の一人がつぶやいた。

「これだけの演奏をしたブラムーの直後に、沈黙を選ぶとは……相当な自信だな。」


 照明の中、逆光のステージ。

 そこに浮かぶのは――輪郭だけ。

 動かない。微動だにしない。


「……立ってる?」

「いや、影しか見えない……」


 不穏な沈黙が、空気を支配する。


 そのとき。

 ダルクが――わずかに動いた。


 右手をゆっくりと上げ、

 静かに、三本の指を立てた。


「……カウント?」

 マナブが息を呑む。


「まさか――!」


 ドォォォォォォォン!!!!


 爆発のような音がドームを貫いた。

 音が光を弾き飛ばし、床が震える。


 観客の歓声が一瞬で凍りつく。


 ――まさかのロック。

 しかも、超絶クオリティのハードロックだ。


 ベースが地を割るように響き、ヘビーなギターと空間を埋め尽くす。

 アタックの強いドラムは寸分の狂いもなく刻み、まるで時間を支配しているかのよう。


 そして、音の中心に――“声”があった。


「苦しみも 悲しみも 私が救ってあげる――」


 静かなのに、圧倒的。

 激しいのに、どこか優しい。


 低音では男のように力強く、

 高音では天使のように透明で、

 中音では炎のように情熱的に――


 まるで一曲の中で、何人ものボーカルが入れ替わっているかのようだ。


 リーラの瞳が揺れる。

「……なんじゃ、これは……!」


 アカネの手が震え、スティックを落としかける。

 ユウトは言葉を失い、マナブはただ唇を噛んで見つめていた。


「声が……何人いるんだ?なんて表現力とダイナミクスだ……」

 マナブのつぶやきが、静寂の中に消える。


 圧倒的な実力に観客も審査員も――誰ひとり、声を出せない。

 歓声も、息も、時間さえも止まっている。


 ただ、音だけが存在していた。


 ステージに光が一筋走り、

 逆光の中で、ダルクがゆっくりと顔を上げる。


 その唇が、わずかに笑った。


「……嘘だろ……」

「人間の声じゃない……」

 観客の誰かが、震える声でつぶやいた。


 その瞬間、ブラムーの四人は悟った。

 これは、音の戦いではない。

 ――存在そのもののぶつかり合いだ。


 ダルクの歌が、さらに深く突き刺さる。


「もう一人で泣かないで その涙は私の音に変わる――私を信じて」


 観客のほとんどが引き込まれていた。


 リーラは拳を握りしめ、静かに息を呑む。

「……来たな。本物の歌姫――そして闇。」


 ダルクの声が空気を支配する。

 観客は立ち尽くし、誰もがただ、聴くしかなかった。


 曲のクライマックスが近づく。

 光が走り、音が渦を巻く。


 そして――


 闇が一瞬、すべてを飲み込んだ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!

よろしくお願いします。

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