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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
51/69

第51話「最強ヴァンパイア、闇を知るもの、光を察す」

 決勝戦まで――残り1日。

 ブラムーのメンバーたちは、いつものスタジオで最後の練習に励んでいた。


「そこっ! 一拍遅い!」

「うわ、また来たよ鬼教官……!」

「違う、“天才教官”だ。」


 セリウスが、いつものように鋭い指摘を飛ばす。

 ヴァンパイアの耳は人間より遥かに敏感で、わずかなズレも見逃さない。

 たが、そのスパルタぶりのおかげで、バンドの音は日々進化していた。


 アカネのドラムはより正確に、ユウトのギターは研ぎ澄まされ、

 マナブのベースはまるで鳴っていないようなくらい、自然に低音を支えている。

 リーラのボーカルは、音と共鳴するかのように柔らかく、しかし強く響いた。


「よし……これが、我らの音じゃ。」


 リーラが小さく息をつく。

 その頬には疲労よりも充実の笑みがあった。


「ふむ、悪くない。やればできるじゃねぇか。」

 セリウスが腕を組み、少しだけ口元を緩めた。

「ま、オレの指導のおかげだな。」


「いや、地獄の訓練だったけどな……」

 ユウトが苦笑する。

 アカネがドラムスティックを回しながら笑う。

「でも、ここまで仕上がるとはね。あたしもびっくり。」


 マナブはうなずきながら、譜面を確認した。

「音の粒が、完全に揃ってる。タイミングもブレスも、全部一体だ。」


 ――夕方には、美容室「Cutism.」の予約も入れてある。

 明日の決勝に向けて、全員準備万端だ。

 SNSの更新も抜かりない。ブラムー公式チャンネルの登録者数は、ついに10万人を突破していた。


 練習風景をリアルタイムでアップロードするのが恒例となり、毎日、ファンの数は増え続けている。戦略も万全。

 そして――問題のリーラの投稿。


【リーラ公式】

 明日は戦いの日!

 ついに決勝じゃ!

 チョコバナナクレープは食べた、もう負ける気はせぬ。(バナナの呪文は絶対じゃ!)


「……いや、なんだその呪文って。」

 ユウトがスマホを見て吹き出した。

「お前、また変なタグついてるぞ。“#バナナの魔女リーラ”だって。」


「ふふっ、人気の証拠じゃ。」

「どんな証拠だよ!」


 SNS上では、ブラムーのメンバーにも個別ファンが増えていた。

 アカネは圧倒的な女子人気で“総長”のあだ名が定着。

 マナブは実は“めちゃくちゃイケメン”だったことが判明し、本人が望まぬ方向で騒がれていた。

 そしてユウト――その子供のような可愛いルックスと、誰よりも強いギターサウンドのギャップで、圧倒的人気を誇る。


 だが、やはり中心にいるのはリーラだ。

 彼女の放つオーラは、観る者の心を掴んで離さない。

 まるで本物の“姫”のように、誰もが惹かれてしまうのだ。


 一方で、不安もある。


 明日対峙する相手――“ダルク”についての情報は、ほとんど何もなかった。


 審査員も、観客も、誰もその正体を知らない。

 決勝ラウンドで一度だけ登場したが、

 全身を覆う黒いドレスに、照明は常に逆光。

 姿はシルエットすら見えず、ただ“声”だけが響いた。


 たったワンコーラス。

 それだけで対戦相手の三曲を凌駕し、勝ち上がった。


 その声は、美しく、冷たく、恐ろしいほどの力を持っていたという。

「天から降る音」「存在しない歌姫」――今やSNSでは、まるで伝説扱いだ。


 #ダルク実在説

 #ダルクAI説

 #決勝現れるのか投票開催中


 誰も見たことがない。

 誰も正体を知らない。

 ――本当に、彼女は存在するのか?


 だが、明日。

 そのすべてが明らかになる。

 ブラムーが、ついに対峙するのだ。

 誰も見たことのない最強の歌姫と。


 決勝は明日。

 明日――この世界が変わる。


 夜。

 練習を終えたリーラは、鏡の前に立っていた。


「……ふむ、切りすぎたかの。」


 美容室「Cutism.」で整えた髪。

 2ミリ短くしたのだが、本人にとっては大事件だった。(いつもは1ミリ)

 それでも、鏡の中の自分を見つめて微笑む。


「うむ、悪くない。」


 ふと窓の外を見ると、夜の街が静かに輝いていた。

 かつて、自分の居場所は“闇”の中にあった。

 誰にも理解されず、孤独に歌っていた。

 けれど今は違う。


 信頼できる仲間がいる。

 同じ夢を追う音楽家たちがいる。

 自分の声を信じてくれる人々がいる。


「……これが、父上の望んだことなのかもしれぬな。」


 リーラは窓辺に立ち、夜空を見上げた。

 そこには丸い月が浮かび、静かに輝いている。


「仲間と奏でる音。共に笑い、共に戦うこと。

 ……なんと、良いものじゃろう。」


 胸の奥が温かく満たされていく。

 孤独では感じられなかった“光”。

 それが今、確かにリーラの中にあった。


「父上。明日、我はこの世界で――最強の音を鳴らします。ブラムーの仲間と共に。」


 そして、夜が明けた。


 決勝当日。

 スタジオの扉が開くと、全員の表情は引き締まっていた。

 セリウスも隣に立ち、腕を組む。


「練習は完璧。準備も万全。負ける気がしないな。」


 マナブが深呼吸し、アカネがスティックを肩に乗せる。

 ユウトはギターケースを背負い、笑った。

「さあ、行こうぜ。俺たちの音を鳴らしに。」


 リーラが立ち上がる。

 瞳は静かに燃えていた。


「――ゆくぞ、ブラムー!」


 全員の声が重なり、扉が開く。

 光が差し込む先には、巨大なステージ《Zドーム》。

 世界中が注目する決勝戦の会場が待っていた。


 誰も見たことのない歌姫・ダルク。

 その正体は何者なのか。

 そして、ブラムーの音楽は彼女に敵うのか。


 いよいよ、すべてが決まる。


 ――次回。

 最終決戦、開幕。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!

よろしくお願いします。

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