第50話「最強ヴァンパイア、最強の助っ人を獲得す!」
ついに50話となりました!
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
最終話「ラストソング」に向けて頑張りますので、
引き続き、よろしくお願いします!
――壮絶な準決勝から、一日が明けた。
街中では、まだブラムーの逆転勝利が話題に上っていた。
ニュース番組では「リーラ姫、奇跡の大逆転!」などと報じられ、SNSではファンアートや演奏動画の切り抜きがあふれている。
リーラ本人が人間ではないことを知る者は――この世界に、わずか二人だけ。
大臣と、セリウスのみであった。
そんな騒ぎの中、リーラは静かに一人、思い出の公園にいた。
木漏れ日の差すベンチ。
その上で、彼女はお気に入りのチョコバナナクレープを手に、空を見上げていた。
人間界に来てから、何度も訪れた場所。
そして、ユウトと初めて出会った場所でもある。
「……ふふ、あの日も、クレープを食べておったな。」
リーラは包みを少し傾け、チョコとバナナの黄金の組み合わせを一口――。
口いっぱいに広がる甘さに、瞳がとろりと緩む。
「ん〜〜っ。な、なんと美味じゃ……っ!!
チョコとバナナの奏でる旋律……これは、恋の味じゃ……!」
両手でほっぺを押さえて悶えるその姿は、まるで少女そのもの。
普段の威厳あるステージ姿からは想像もつかない“乙女モード”全開である。
「……む、いかんいかん。これでは王の威厳が……。」
そう呟きながらも、クレープの包み紙をそっと畳み、胸に手を当てた。
そして、柔らかく微笑む。
「それにしても……美味しかった〜。」
風が頬をなでる。
リーラは目を閉じ、これまでの日々を思い出した。
――父である王に課された試練。
「王位を継ぐには、力ではなく“絆”を学べ」と。
そのために送り出された、人間界での音楽バトル。
ユウト、マナブ、アカネとの出会い。
音を通して生まれた信頼。
狼王、焔鬼蓮華、セリウス、そしてドラグバーストフォール……。
それぞれが誇り高く、強く、美しかった。
「長いようで、短い日々じゃったな。」
リーラはそっと空を仰ぐ。
光の向こうに、仲間たちの笑顔が浮かぶ気がした。
「決勝まで……あと少し。絶対に勝って、父上に胸を張って報告するのじゃ。」
午後。
いつものスタジオに、ブラムーのメンバーが集まっていた。
扉を開けると――マナブが譜面を広げ、アカネがドラムスティックをくるくると回している。
その背後から、少し遅れてユウトがやってくる。
「おっす。準備はできてるか?」
「もちろんじゃ!」
リーラは胸を張る。
昨日の戦いの疲れなど、微塵も見せない。
「さて、決勝に向けて今日から本格的に詰めていくぞ。」
マナブが真剣な表情で言う。
「曲はある。でも、完成度を上げなきゃ勝てない。全員、集中していこう。」
その時――。
ガチャッ、と勢いよく扉が開いた。
「おはようございますな、ブラムーの諸君!!」
陽気な声とともに現れたのは――
ブラムーのマネージャーに復帰した、大臣だった。
「だ、大臣!?」「来てくれたのか!」
「当然ですとも! リーラ様から“戻ってきてくれ”と頼まれたのですよ。
ならば、老骨を振り絞って尽くさねばなるまい!」
「ふふっ……頼もしいのう、大臣。」
「それと、ユウトくん。」
大臣はにやりと笑った。
「アパートのドアは直しておいた。次に壊されたら請求書を渡すからな。」
「壊したの大臣じゃねぇか……。」
「説得には勢いが必要なのです。」
そんな賑やかなやり取りの最中――
大臣の横に、足を組んで偉そうに座る青年の姿があった。
「……セリウス!? なぜここに?」
「国のためだ。お前たちが勝たねば困るからな。」
セリウスは腕を組み、涼しい顔で言う。
「それと――これを使え。」
差し出されたのは数枚の楽譜。
「俺が作った新曲だ。これを組み込めば、完璧になる。」
「おぬし、作曲までできるのか!?」
「当然だ。俺は王族、そして国一番の作曲家だからな。
王族教育には“作曲”“剣術”“紅茶の注ぎ方”が含まれている。」
「なぬっ!? ……紅茶!?」
リーラが目を丸くする。
「お前、王族って何を学んでおるんじゃ……。」
「全てをだ。」
セリウスがドヤ顔を決める。
しかし、その後の練習は――まさに“地獄”だった。
「テンポ三上げ! リーラ、今のブレスが半拍遅い! やり直し!」
「ま、待てセリウス! 貴様、どれほど鬼なのじゃ!」
「王族に鬼はいない、種族が違う。そして俺は天才だ。」
「いや、鬼じゃーっ!」
「アカネ! そのフィル、0.2秒早い! メトロノームに合わせろ!」
「はぁ!? 0.2秒ってわかるか普通!?」
「感じろ。」
「無茶言うなっ!!」
「ユウト! 今のコード進行、理論上は正しいが心がない! 心を弾け!」
「お前、どこの師匠だよ……!」
スタジオの空気は緊張と汗で満たされ、
全員が全力で“音”と向き合っていた。
だが――練習の終わり。
彼らの音は確実にひとつ上の段階に達していた。
「……疲れたけど、すごいな。」
ユウトがギターを下ろし、汗を拭う。
マナブも頷く。
「音の粒立ち、タイミング、全てが研ぎ澄まされてる。セリウス氏……本気だな。」
「当然だ。お前たちが負けるのは俺のプライドに関わる。」
リーラは笑顔を見せた。
「ふふっ、まったく……頼もしい助っ人を得たのう。」
夜。
練習の帰り道、ブラムー恒例のファミレスへ。
ドアを開けた瞬間、店内がざわめいた。
「えっ……あれ、ブラムーじゃない!?」
「ほんとだ! リーラ様にユウトくん、アカネちゃんも! あっ、セリウス様までいる!」
「写真撮っていいかな……!?」「SNS上げようぜ!!」
瞬く間にスマホが上がり、店内は小さなパニックに。
スタッフが慌てて対応するも、笑顔のファンたちは止まらない。
SNSには次々と投稿が並んだ。
#ブラムー降臨
#セリウス様も一緒
#決勝目前!がんばれ!
「……知名度、すごいことになってるな。」
ユウトが苦笑する。
「ま、当然っしょ!」
アカネがニッと笑う。
「うちら、もう“人間界の伝説”だよ。」
リーラは少し照れながらも、微笑んだ。
「ふふっ、これも“絆の力”じゃな。」
席に着くと、セリウスが真面目な顔で切り出した。
「次の相手は――“謎の最強歌姫”ダルク。」
空気が静まり返る。
「予選を最速で勝ち上がり、正体を知られる前に姿を消した。
誰も何者か知らない。わかっているのは――“一人”ということだ。」
「……つまり、ボーカル勝負だな。」
マナブが唸る。
「そうだ。」
セリウスが頷く。
「伴奏もサポートもなし。純粋な“声”と“表現”の戦いになる。」
マナブの瞳が光る。
「なら、俺たちがやるべきは――リーラの声を最大限に引き出す構成だ。」
「キー設定、倍音の調整、リバーブの深度、アタックの立ち上がり……全て声中心に設計しよう。」
「ふむ、悪くない。だがリニアフェーズEQで声の明瞭度を上げるべきだ。」
「いや、アナログで倍音を活かすんだ!」
「……お前、なかなかやるな。」
「そっちこそ、音を知ってるじゃないか。」
最終的に、二人は肩を組んで笑っていた。
アカネがため息をつく。
「……仲良くなってるし。」
リーラは頬を緩める。
「ふふっ、これぞ絆じゃ。」
笑い声が響くファミレス。
ブラムーの夜は、いつものように温かく、そして少し騒がしかった。
そして――
彼らは新たな目標へと進む。
セリウスという強力な助っ人まで得て、ブラムーの音はさらに進化を遂げる。
――決勝まで、残り2日。
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