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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
49/69

第49話「最強ヴァンパイア、DBFとのバトルが終結す」

 ――ステージの熱が、まだ冷めない。


 灼熱の音の戦場でぶつかり合った《ブラムー》と《ドラグバーストフォール》。

 巨大ドームは、今も観客の歓声と震える余韻に包まれていた。


 司会の声が高らかに響く。


「すごかったぁぁ!! 伝説になること間違いなしの音楽バトルでした!! 

 ブラムーとドラグバーストフォール、魂の激突ッ!! 

 今、審査員の集計が行われています! 結果発表まで、しばしお待ちください!」


 観客席はざわつき、SNSのコメント欄も炎上寸前だ。

 誰もが固唾を呑み、運命の瞬間を待っていた。


 ――その裏で。


 控え室。

 照明の落ちた空間に、ブラムーのメンバーたちが静かに腰を下ろしていた。


 ユウトは黙ってギターの弦を撫でていた。

 彼の指先には、まだバトルの熱が残っている。


 そんな彼に、アカネが近づいた。

 最初は少しためらいがちに口を開いたが――その声は震えていた。


「ユウト……あのさ……」


 ユウトが顔を上げる。

 アカネの目が、怒りと涙で潤んでいた。


「どれだけ大変だったと思ってんだよ!!」


 ユウトが目を見開く。


「お前がいない間、姐さんも、マナブも……どれだけ悔しがって、どれだけステージを守ろうとしたか……!

 なのに、なんで今さらなんだよ!! 遅いんだよ、バカヤロウ!!」


 アカネの拳が震える。

 彼女の中にあった怒りと寂しさが、ようやくあふれ出した。


 だが、次の瞬間、彼女は少し顔を伏せて笑った。


「……でも、ほんとに……帰ってきてくれて、よかったよ。

 ユウトがいなきゃ、あたしたちの音は完成しないもん。」


 その目は、怒りではなく、確かな安堵の色を帯びていた。


「……なぁ、教えてよ。なんで今なんだ? どうして……戻ってきたんだ?」


 ユウトは小さく息を吐き、ギターを見つめた。


「……今朝、大臣が来たんだ。」


「えっ、大臣が?」


「そう。あの人、マジでドアぶっ壊して入ってきた。」


「ぶっ……壊した!?」


 アカネが目を丸くする。

 ユウトは苦笑しつつも、瞳には真剣な色が宿っていた。


「“なぜ戻らないのですか。あなたの夢を叶えないのですか”って言われたんだ。

 丁寧な口調だったけど、心に刺さった。」


 ユウトは拳を握りしめた。


「正直……苦しかった。戻りたかった。でも、プライドが邪魔して、どうしても素直になれなかった。」


 静寂が落ちる。

 アカネがそっと彼を見つめた。


 ――ユウトの脳裏に、今朝の光景が蘇る。


 大臣の声は、穏やかで、それでいて力強かった。


『あなたは悪くない。ただ、すれ違っているだけです。

 リーラ様は本当に歌が好きで、王位など気にしていない。』


『子供の頃から、本当に“歌うこと”が好きだったんですよ。

 私も、何度も見てきました。あの方はいつも歌っていた。

 王女としてではなく、一人の少女として、心から。』


『そして――あなたとバンドを組めたことを、心から喜んでいました。

 “すごいギタリストを見つけた。仲間になった”と、何度も自慢していましたよ。』


 ユウトの喉が詰まった。


「……そんなことを、言ってたのか。」


『ええ。リーラ様は、あなたと音楽ができることを、何よりの誇りに思っていた。

 だから、どうか胸に聞いてください。

 本当に望むのは――何ですか?』


 その言葉が胸の奥で何度も反響した。

 ユウトは気づいた。


 ――俺は、もう一度みんなと音楽がしたい。


 でも、その想いを口にする勇気が出なかった。

 プライドが、まだ邪魔をしていた。


「……その時さ、ドアの向こうからもう一人来たんだ。」


「誰が?」


「大臣の息子だって言ってた。」


「え!? あのセリウスが!?」


 ユウトは苦笑した。


「“次は負けるぞ”って言われたよ。

 “ドラグバーストフォールは最強のギターバンドだ。音楽家なら、一度決めたことを投げ出すな”って。」


 アカネは息を呑んだ。


「“ここで立ち向かえなきゃギタリストじゃねえ!”ってさ。」


 その瞬間、ユウトの胸に火がついた。


「……そこから、もう吹っ切れたんだ。

 俺はもう逃げない。プライドなんかで音楽を捨てたくない。

 必ず――皆と優勝してみせる。」


 アカネはしばらく黙っていたが、やがて笑った。


「……そうか。それでこそブラムーのギタリストだ。」


 リーラは少し離れた場所で、その会話を静かに聞いていた。

 そして、心の中で呟く。


(――ありがとう、大臣。そして……セリウス。)


 彼らがユウトの背中を押してくれたことを、リーラはしっかりと感じ取っていた。


 マナブが苦笑まじりに言う。


「やっぱり大臣はブラムーのマネージャーだ。」


 アカネが笑った。


「うん、絶対そうだよ。」


 リーラは小さく頷き、柔らかく笑う。


「ふふっ、そうじゃな。頼もしい仲間じゃ。」


 そのとき――司会の声がステージに響いた。


「お待たせしましたぁぁ!! ついに審査結果が出ました!!」


 場内が一気に静まり返る。

 全員がステージ中央を見つめた。


「まずは――ステージ部門!!」


 ドラムロールが鳴る。


「勝者は……ドラグバーストフォール!!

 圧倒的な炎とオーケストラの演出で観客を魅了しました!!」


 拍手が鳴り響く。

 ドラクが軽く頷く。


「続いて――演奏部門!!」


 再びドラムロール。


「これは僅差でした!! 勝者は……ブラムー!!」


 観客が立ち上がり、歓声が爆発した。


「トリプルギターの超技巧に対して、まさかのクラシックギターソロ!

 そして、あの完璧なアドリブ! 会場を沸かせたのはブラムーでした!」


 最後の発表を前に、会場全体が息を飲む。


「さぁ、そして最後は――“楽曲部門”です!!」


 観客の緊張が最高潮に達する。


「どちらも最高の曲でした。

 しかし、より“心”を揺さぶったのは――」


 司会が大きく息を吸い込む。


「ブラムー!!!」


「――っ!!」


 どよめき。爆発的な歓声。


「仲間を想う楽曲、そしてまさかのユウト帰還! 

 最後は“絆”をテーマにした《LAZOS》!

 音楽が生むドラマ、その奇跡を見せてくれたッ!!」


 司会の声が震えていた。


「なんと! 大・大・大逆転です!! 

 ダークホース《ブラムー》、まさかの決勝進出ぅぅ!!」


 リーラは拳を握りしめ、ユウト、アカネ、マナブを見た。

 その笑顔は涙よりも強く、まぶしかった。


 ドラクがゆっくりと歩み寄り、低く、しかし力強く言った。


「Win the final… and bring back our leader.(決勝で勝て。そして我らの指導者を取り戻すのだ)」


 リーラは真剣な瞳で頷き、返した。


「I promise. We’ll find the truth together.(約束する。共に真実を見つけよう)」


 二人は握手を交わした。

 その瞬間、観客席が再び大きく沸いた。


 ――こうして、壮絶な準決勝は幕を閉じる。


 次なる決勝戦は、三日後。


 熱く燃え上がった“絆”の炎は、まだ消えてはいなかった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!

よろしくお願いします。

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