第49話「最強ヴァンパイア、DBFとのバトルが終結す」
――ステージの熱が、まだ冷めない。
灼熱の音の戦場でぶつかり合った《ブラムー》と《ドラグバーストフォール》。
巨大ドームは、今も観客の歓声と震える余韻に包まれていた。
司会の声が高らかに響く。
「すごかったぁぁ!! 伝説になること間違いなしの音楽バトルでした!!
ブラムーとドラグバーストフォール、魂の激突ッ!!
今、審査員の集計が行われています! 結果発表まで、しばしお待ちください!」
観客席はざわつき、SNSのコメント欄も炎上寸前だ。
誰もが固唾を呑み、運命の瞬間を待っていた。
――その裏で。
控え室。
照明の落ちた空間に、ブラムーのメンバーたちが静かに腰を下ろしていた。
ユウトは黙ってギターの弦を撫でていた。
彼の指先には、まだバトルの熱が残っている。
そんな彼に、アカネが近づいた。
最初は少しためらいがちに口を開いたが――その声は震えていた。
「ユウト……あのさ……」
ユウトが顔を上げる。
アカネの目が、怒りと涙で潤んでいた。
「どれだけ大変だったと思ってんだよ!!」
ユウトが目を見開く。
「お前がいない間、姐さんも、マナブも……どれだけ悔しがって、どれだけステージを守ろうとしたか……!
なのに、なんで今さらなんだよ!! 遅いんだよ、バカヤロウ!!」
アカネの拳が震える。
彼女の中にあった怒りと寂しさが、ようやくあふれ出した。
だが、次の瞬間、彼女は少し顔を伏せて笑った。
「……でも、ほんとに……帰ってきてくれて、よかったよ。
ユウトがいなきゃ、あたしたちの音は完成しないもん。」
その目は、怒りではなく、確かな安堵の色を帯びていた。
「……なぁ、教えてよ。なんで今なんだ? どうして……戻ってきたんだ?」
ユウトは小さく息を吐き、ギターを見つめた。
「……今朝、大臣が来たんだ。」
「えっ、大臣が?」
「そう。あの人、マジでドアぶっ壊して入ってきた。」
「ぶっ……壊した!?」
アカネが目を丸くする。
ユウトは苦笑しつつも、瞳には真剣な色が宿っていた。
「“なぜ戻らないのですか。あなたの夢を叶えないのですか”って言われたんだ。
丁寧な口調だったけど、心に刺さった。」
ユウトは拳を握りしめた。
「正直……苦しかった。戻りたかった。でも、プライドが邪魔して、どうしても素直になれなかった。」
静寂が落ちる。
アカネがそっと彼を見つめた。
――ユウトの脳裏に、今朝の光景が蘇る。
大臣の声は、穏やかで、それでいて力強かった。
『あなたは悪くない。ただ、すれ違っているだけです。
リーラ様は本当に歌が好きで、王位など気にしていない。』
『子供の頃から、本当に“歌うこと”が好きだったんですよ。
私も、何度も見てきました。あの方はいつも歌っていた。
王女としてではなく、一人の少女として、心から。』
『そして――あなたとバンドを組めたことを、心から喜んでいました。
“すごいギタリストを見つけた。仲間になった”と、何度も自慢していましたよ。』
ユウトの喉が詰まった。
「……そんなことを、言ってたのか。」
『ええ。リーラ様は、あなたと音楽ができることを、何よりの誇りに思っていた。
だから、どうか胸に聞いてください。
本当に望むのは――何ですか?』
その言葉が胸の奥で何度も反響した。
ユウトは気づいた。
――俺は、もう一度みんなと音楽がしたい。
でも、その想いを口にする勇気が出なかった。
プライドが、まだ邪魔をしていた。
「……その時さ、ドアの向こうからもう一人来たんだ。」
「誰が?」
「大臣の息子だって言ってた。」
「え!? あのセリウスが!?」
ユウトは苦笑した。
「“次は負けるぞ”って言われたよ。
“ドラグバーストフォールは最強のギターバンドだ。音楽家なら、一度決めたことを投げ出すな”って。」
アカネは息を呑んだ。
「“ここで立ち向かえなきゃギタリストじゃねえ!”ってさ。」
その瞬間、ユウトの胸に火がついた。
「……そこから、もう吹っ切れたんだ。
俺はもう逃げない。プライドなんかで音楽を捨てたくない。
必ず――皆と優勝してみせる。」
アカネはしばらく黙っていたが、やがて笑った。
「……そうか。それでこそブラムーのギタリストだ。」
リーラは少し離れた場所で、その会話を静かに聞いていた。
そして、心の中で呟く。
(――ありがとう、大臣。そして……セリウス。)
彼らがユウトの背中を押してくれたことを、リーラはしっかりと感じ取っていた。
マナブが苦笑まじりに言う。
「やっぱり大臣はブラムーのマネージャーだ。」
アカネが笑った。
「うん、絶対そうだよ。」
リーラは小さく頷き、柔らかく笑う。
「ふふっ、そうじゃな。頼もしい仲間じゃ。」
そのとき――司会の声がステージに響いた。
「お待たせしましたぁぁ!! ついに審査結果が出ました!!」
場内が一気に静まり返る。
全員がステージ中央を見つめた。
「まずは――ステージ部門!!」
ドラムロールが鳴る。
「勝者は……ドラグバーストフォール!!
圧倒的な炎とオーケストラの演出で観客を魅了しました!!」
拍手が鳴り響く。
ドラクが軽く頷く。
「続いて――演奏部門!!」
再びドラムロール。
「これは僅差でした!! 勝者は……ブラムー!!」
観客が立ち上がり、歓声が爆発した。
「トリプルギターの超技巧に対して、まさかのクラシックギターソロ!
そして、あの完璧なアドリブ! 会場を沸かせたのはブラムーでした!」
最後の発表を前に、会場全体が息を飲む。
「さぁ、そして最後は――“楽曲部門”です!!」
観客の緊張が最高潮に達する。
「どちらも最高の曲でした。
しかし、より“心”を揺さぶったのは――」
司会が大きく息を吸い込む。
「ブラムー!!!」
「――っ!!」
どよめき。爆発的な歓声。
「仲間を想う楽曲、そしてまさかのユウト帰還!
最後は“絆”をテーマにした《LAZOS》!
音楽が生むドラマ、その奇跡を見せてくれたッ!!」
司会の声が震えていた。
「なんと! 大・大・大逆転です!!
ダークホース《ブラムー》、まさかの決勝進出ぅぅ!!」
リーラは拳を握りしめ、ユウト、アカネ、マナブを見た。
その笑顔は涙よりも強く、まぶしかった。
ドラクがゆっくりと歩み寄り、低く、しかし力強く言った。
「Win the final… and bring back our leader.(決勝で勝て。そして我らの指導者を取り戻すのだ)」
リーラは真剣な瞳で頷き、返した。
「I promise. We’ll find the truth together.(約束する。共に真実を見つけよう)」
二人は握手を交わした。
その瞬間、観客席が再び大きく沸いた。
――こうして、壮絶な準決勝は幕を閉じる。
次なる決勝戦は、三日後。
熱く燃え上がった“絆”の炎は、まだ消えてはいなかった。
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