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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
48/69

第48話「最強ヴァンパイア、メンバーとのLAZOS(ラソス)」

 ――灼熱の音が、空間を支配していた。


 ユウトの指がクラシックギターの指板を駆け上がる。

 弦が焼けるように震え、木のボディが炎のように鳴る。


 ステージ中央、火花を散らすような照明がユウトを照らしていた。

 その音は、まさに情熱の旋律。

 フラメンコの魂を宿したギタープレイは、ロックステージでは異質なギターソロだ。


 ラスゲアード(かき鳴らし)で空気を裂き、

 ゴルペ(ボディ叩き)でリズムを刻む。

 左手も右手も、スケールを駆ける指は速すぎて見えない。


「な、なんて音だ……!?」

「まるで炎の精が舞っているようだ!」


 審査員席がざわめく。

「クラシックギターでここまでステージを支配するとは……!」

「フラメンコにロックの魂を融合している……ユウト独自の音だ!」


 観客が息を飲み、音に吸い込まれていく。

 その音は熱い。だがそれは炎の熱さではなく、情熱の熱。

 木の温もりと魂の鼓動が混ざり合う――それがユウトの音だった。


 ユウトが最後のコードを叩きつける。

 ――ジャン!


 音が止む。

 ユウトはギターのヘッドを軽く掲げ、ステージ対岸のドラクを真っすぐに指差した。


 「来い!」


 ドラクが無言でギターを握り直す。

 仮面越しの瞳に宿るのは、静かな怒りと闘志。

 笑みなど、一片もない。


「……You think you can beat the dragon with that flame?(その炎で、竜に勝てると思うのか?)」


 そして、ドラクの指が動いた。


 トリプルギターの咆哮。

 三人のギタリストが同時に指板を駆ける。

 息を呑む観客。

 音符が嵐のように降り注ぎ、トリルが空間を切り裂く。


 ドラクのピッキングはまるで斬撃。

 音の刃が空間を縦に裂くようだった。

 ブラムーのステージに、圧倒的な炎の波が押し寄せる。


 観客が叫ぶ。

「これがドラグバーストフォール……!」

「竜の炎そのものだ!!」


 再び音が止む。

 ドラクが、ブラムーを指差す。

「Come on. Show me your real bond.(本当の絆を見せてみろ)」


 その瞬間――リーラが目を見開いた。


「Fine. Let’s show you what our bond sounds like.(いいだろう、我らの“絆の音”を聞け)」


「いくぞっ!」


 ユウトがギターを構える。

 クラシックギターのアルペジオ。

 アカネのシングルバスが軽やかにリズムを刻み、

 マナブのベースが低くうねる。


 即興アドリブ

 完全な自由。だが、そこには確かな秩序があった。


 リーラが渾身の息を吸い込み――叫ぶように歌い上げた。


「AHHH――!!!」


 その声は空を裂いた。

 魂の底から放たれる歌。

 それはメンバー、観客、そして対戦相手のドラグバーストフォール、聴くもの全てへの想いが込められていた。


 彼女の声が、仲間たちの旋律と絡み合う。

 言葉を超えた対話。

 音が生き、呼吸し、燃え上がる。

 それは“ブラムー”という一つの音楽だった。


「これは……奇跡だ……!」

「ジャンルを越え、魂で繋がっている……!」


 ファンが一斉に叫ぶ。

「これが、ブラムーだ!ブラムーが帰ってきた!」


 審査員も観客も息を呑んだ。


 ブラムーのメンバーは輪を描くように立ち、互いの目を見て笑う。

 音で会話をし、音で心を交わす。

 それが彼らの“絆”だった。


「DBFの音楽は……すべてが攻撃的だ」

「それに対して俺たちブラムーは……温かい。どこまでも、音楽を楽しむ音だ」

 マナブが分析する。


 観客がいつしか涙していた。

 ブラムーの音楽は、戦いを越え、人の心を震わせていた。


 リーラが息を吸う。

「決めるぞ!」


 最後の楽曲――《LAZOSラソス

 “絆”を意味する、ブラムーの楽曲。


 イントロはユウトのクラシックギター。

 流れるようなアルペジオに、アカネのシングルバスが正確にリズムを刻む。

 マナブのベースが跳ね、リーラのボーカルが高く舞う。


 異国情緒あふれる旋律、

 フラメンコの情熱、

 ロックのリフと疾走感――

 それらすべてが絡み合い、ひとつの魂となった。


 観客が総立ちになる。

 審査員席も拍手に包まれた。


「完璧だ……!」

「技術も構成も超越している!これぞ、音楽!」


 ドラクの瞳が光る。

「……Bond, huh.(絆、か)」


 彼の胸の奥で、何かが疼いた。

 竜族――仲間を何より重んじる種族。

 その言葉が、心の奥に突き刺さる。


 だが、同時に怒りも湧き上がる。


「Then why…!? Why did you kidnap our leader, Leela!!

(ならばなぜだ……! なぜ我らの指導者を攫ったのだ、リーラ!!)」


 行き場のない怒りが、爆風のようなエネルギーとなった。

 炎が立ち上がり、照明が吹き飛ぶ。


 ドームが震える。


 次の瞬間、ドラクの姿が変わった。


 ――竜。


 翼が広がり、鋭い爪が光る。

 全長十数メートルの竜が、ステージを覆った。


 ゴォォォォォォォォ!


 観客が悲鳴を上げる。

「きゃあああああ!!」

「竜だ! 本物の竜が出た!!」


 一瞬で、ドラクはステージを飛び越え、

 リーラを掴み上げた。


「Why, Leela!? Tell me why!!

 You smell of bond… of trust… yet you kidnapped our leader!!

 (なぜだリーラ! 絆の匂いを纏いながら、なぜ我らの指導者を攫ったのか!!)」


 リーラは掴まれたまま、まっすぐドラクを見つめる。


「I didn’t. I swear it.(違う。誓って違う)」


 息を整え、はっきりと告げた。


「I’m not interested in war or power.

 All I want is to sing, to create music.(我は戦にも権力にも興味がない。欲しいのは音楽、ただ歌うことだ)」


 その声に、観客も息を呑む。

 涙が光るような、真っすぐな音だった。


「If you can’t believe me, burn me.

 But I swear, I never kidnapped your leader.

 I hate those who used my name for evil.(信じられぬなら我を焼き切るが良い。だが誓ってお主らの指導者を攫ってなどおらん。我も、自身の名を語り卑劣な真似をした奴を許せぬ)」


「Then what do you suggest?(ならばどうするというのだ)」


「Let’s find them together.

 This battle is known even in the demon world.

 When it ends, something will move.(一緒に見つけようではないか。このバトルは魔界にも知れ渡っている。終われば、何か動きがあるはずだ)」


 その目は、炎の中でも曇りひとつなかった。


 ドラクは拳を握りしめ、唸った。

 ――嘘には聞こえない。

 絆を大切にする心。音楽を信じる心。

 そして、あの歌声。


 そんな者が、卑劣なことをするはずがない。


 ドラクもまた、リーラに――そしてブラムーに――

 魅了された一人だった。


「……Fine. I’ll trust you… for now.(わかった。一時的にお前を信じよう)」

「Work with me. But if it’s a lie… I’ll burn you, and your entire kingdom.

(協力してくれ。ただし……嘘だと分かった時はお前もヴァンパイア国も焼き切る)」


 リーラは微笑んだ。

「Understood.(構わぬ)」


 ドラクはゆっくりとリーラを地に降ろし、瞳を閉じる。

 光が彼を包み、人の姿へと戻っていった。


 観客がざわめき、やがて拍手が起きた。

 いつの間にか、竜の姿は消えていたのだ。


 リーラは観客に向かって笑顔で言う。

「皆の者、今のは映像じゃ! 奴らの演出だ!」


 信じがたい光景だったが、観客は信じるしかなかった。

「すげぇ演出だったな……!」

「まるで本物みたいだった!」


 ――こうして、

 灼熱の音楽バトル《ドラグバーストフォール vs ブラムー》は、

 伝説として幕を閉じた。


 だが、燃え残る炎の奥で――

 一つの“絆”が芽生えていた。


 そして、その絆が、次なる物語を動かすことになる。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!

よろしくお願いします。

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