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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
47/69

第47話「最強ヴァンパイア、炎と氷のヴォイス!」

 Zドーム全体が揺れていた。

 観客の心臓を直撃するような音圧。耳をつんざき、胸を突き抜ける振動。


 最後の楽曲――《ドラグバーストフォール》。

 竜族の指導者が放つ必殺の名を冠するその曲は、開始の瞬間から圧倒的だった。


 ――ドドドドドッ!

 ――ギャギャギャギャギャッ!


 ツインギターが牙を剥く。リフは火球のごとく、リードは炎の流星のごとく。

 スウィープ、タッピング、超速ピッキング。考え得る限りのテクニカル奏法が畳み掛けられ、無限の火の玉が降り注ぐように観客へ襲いかかる。


 ドラムはツーバスを無尽蔵に踏み抜き、リズムは地響きと化す。

 ステージの上は常に炎が燃え盛り、まるで竜族の戦そのもの。


「やべえ……!」

「これまで見たことのないステージだ!」

「最高だあああああ!!」


 観客は狂乱に近い歓声をあげる。

 審査員ですら目を細める。

「……これが竜族の力……ここまでの表現力を持つとは……」


「くっ……!」

 ブラムーの三人は呆然と立ち尽くすしかなかった。

 燃え上がる音圧、視界を覆う炎、息すらできないほどの熱気。


 リーラは一歩前に出た。

 汗を流しながらも、瞳だけは鋭く燃えている。


「What weakness…!(なんたる弱さ……!)」

 炎の中心でドラグのリーダーが吐き捨てた。

「Our leader lost to the likes of you? I cannot understand!(我らの指導者が、貴様のような弱き者に敗れたなど……解せぬ!)」


 その声は轟音に重なり、観客の胸を震わせる。


 リーラは唇を噛み、叫んだ。

「だから、我ではないと何度言えばわかる! 竜国に足を踏み入れたことなどない!」

 そして、声を張り上げる。

「I hate war! I only love music, to sing!(戦は嫌いだ! 我が好きなのは音楽、歌うことだ!)」


 その言葉に合わせ、リーラはドラグの曲へ割り込むように、渾身の力で声を放った。

 全身を震わせ、魂を引き裂くように――。


「AH―――ッッッ!!!!」


 ただの叫びではない。

 肺の限界を超え、血を吐くかのように放たれた声。

 それは炎の中に突き刺さり、ドラグの轟音と真っ向からぶつかり合った。


 観客が息を呑む。

「割り込んだ!?」「炎に声で対抗してる!」


 審査員が驚愕を隠せずに言葉を漏らす。

「これは……単なるボーカルではない。まるで声そのものが氷の武器として竜の炎と戦っている……!」


 観客が一斉に息を呑む。

 炎の中に、冷たいながらも透明な旋律が刺さる。


「Sing together, not fight! Play music with everyone! I don’t need fame or throne, only music!(戦うよりも一緒に歌おう、皆で音楽を奏でよう! 地位も名誉もいらぬ、ただ歌いたい、音楽を奏でたい!)」


 しかし、その言葉にドラクの怒りは絶頂に達した。

 仮面の下から煙が吹き出す。


「Nonsense!!(戯言を!)」


 バキィッ!

 仮面が爆ぜ飛び、その下から人間の姿をした竜族の戦士――ドラクの素顔が現れた。

 鋭い眼光、炎のように赤い瞳。全身から炎を吹き出し、革ジャンが焼け焦げていく。


「I’ll show you… my true power!!」


 その叫びと共に、ドラクはさらに声を張り上げた。

「イェ――――ッ!!!」


 炎をまとったハイトーン。

 地を割り、空を震わせるような超高音が響き渡る。


「AH―――――ッ!!!」

 リーラも全霊で応じる。


 そして――ボーカル勝負が始まった。


 イェーーー!!

 ドラクの声は灼熱の咆哮。


 AH――!

 リーラの声は氷刃のように高く突き抜ける。


 互いが互いに呼応する。

 ピッチはどんどん上がり、限界を超えて天井へと突き進む。


「す、すげえ……!」

「どこまで上がるんだ、この二人!」

 観客は目を離せない。


 高さではリーラがわずかに勝る。

 だが――ドラクの声は太く、厚みを増してゆく。


「互角……いや、もしかしたら……」

 審査員の声が震える。

「太さで支配しているのはドラクだ……!」


 リーラの眉間に汗がにじむ。

 ドラクの喉も赤く裂けそうに震えている。

 互いの息が荒く、限界の向こうで声をぶつけ合った。


「Not bad… you follow my voice. Your passion for music… it’s real.(悪くない。我が声についてくるとは……音楽への想いは本物のようだ)」

 そして、怒号を重ねる。

「But why, with that heart, did you steal our leader!?(だが、なぜその心を持ちながら指導者を奪った!)」


 リーラが首を振る。

「だから違うと――!」


 だが、これまでボーカルに徹していたドラクがギターを構えた。

「Then taste this!!(ならばこれを喰らえ!)」


 トリプルギターの速弾きソロが炸裂する!

 16小節を光速で駆け抜け、流星群のような音符をばらまき、最後に音を止め――指を突きつけた。


「どうした、かかってこい!」と言わんばかりに、ブラムーを挑発する。


「うおおおおおお!!」

「ドラク最強だ!」

 観客は狂乱した。


 ブラムーも応戦する。

 マナブのベースとリーラのギター、そしてアカネのドラムが一斉に鳴り響く。

 ドラムとベースがユニゾンを刻み、ギターが旋律を重ねた。


「ブラムーも負けてない!」

「メロディは美しい……!」


 だが――。

「音圧が足りない……!」

 審査員の一人が唇を噛む。


 アカネのドラムはシングルバス。竜族の暴力的な三重奏に対し、誇り高くも、力は届かない。

 マナブも全力で弾いている。だが低音の壁を一人で支えるには、あまりに荷が重い。


「分析するに……音圧の差が致命的だ。三人では……」

 マナブが震える声で言った瞬間――


 メンバー全員の頭に浮かんだ言葉、それは


 ユウト。


 あの音。鮮烈で、情熱的で、心を温めるあのギターの音。

 帰ってきてくれ――!


 ブラムーのファンも同じ想いだった。

「ユウト戻ってきて……!」

 観客の叫びが会場に響く。


「ユウト帰ってこい!!」

「ブラムーを助けて!」


 炎の中で、リーラは叫んだ。

 天を見上げ、心から本当の気持ちで、

「ユウト――――――――ッッ!!!」


 ――その時。


 ポロン……。


 澄んだ一音が、炎を貫いた。


 クラシックギターの音色。

 指が描くアルペジオは水のしずくのように始まり、やがて滝のように溢れ出す。

 アルペジオが矢のように飛び、コードはめまぐるしく変わる。合間に挟まる速弾きが火花を散らし、会場を飲み込む。

 それは炎の熱さではなく――心を焦がす情熱の熱さだった。


 観客がどよめく。

「クラシックギター……!?」

「まさか……!」


 観客席が揺れる。審査員たちも立ち上がる。


 ブラムーステージの後方に、一人の男が立っていた。

 クラシックギターを抱き、情熱的に、しかし冷静に。

 燃えるように指を走らせながら、まっすぐ仲間たちを見つめていた。


 ユウトだ!!!


「待たせたな」

 その言葉は炎を裂くように響く。


 リーラの瞳から涙が一雫こぼれた。

「遅いわ!」


 アカネが声を張り上げる。

「バカヤロウ! どんだけ待たせるんだよ!」


 マナブが拳を握る。

「ようやく揃ったな……!」


 ユウトはギターを鳴らしながら、仲間を見据える。

「勝つぞ!!!」


「おうッッッ!!!」


 その瞬間、ブラムーの炎が再び燃え上がった。


 四人の声が重なり――。


 Zドームの歓声は最高潮に達した。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!

よろしくお願いします。

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