第46話「最強ヴァンパイア、竜族の王を倒す!?」
「――なぜだ!」
リーラの声が、鋭い空気を切り裂いた。英語での問いかけは、Zドーム全体に反響し、熱気に揺れるステージを貫いた。
「Why…? Why does the proud Dragon Tribe, who has sealed its borders, who has avoided meaningless wars, now set its eyes on me—on the Vampire Kingdom!?(なぜ、これまで国交を封鎖し、無駄な争いも好まなかった誇り高き竜の一族が、我を、ヴァンパイア国を狙う!)」
その声によって、竜族のリーダーの仮面の奥、燃え盛る炎のような瞳が揺れた。
次の瞬間――。
「WHAT…!? What nonsense are you spitting out!!(なんだと!何寝ぼけたことを!)」
怒号が轟いた。仮面の下からさらに濃い煙が噴き出し、ステージの炎が一気に燃え盛る。まるでリーラを焼き尽くさんとするかのように、炎は彼女に向かって襲いかかった。観客席から悲鳴が上がる。
「おい…! ステージの温度が上がってるぞ!」
「熱すぎる! うわっ!」
熱波に当てられ、倒れ込む観客が出始める。スタッフが慌てて駆け込むほどの異常事態だった。
ドラグのリーダーの声が響く。
「It was YOU!! You who stole away our leader! Where did you take him, Vampire!?(お前だ!我らの指導者を奪ったのはお前だ!どこへ連れ去った、ヴァンパイアめ!)」
「What…!? I have never… NEVER stepped foot in your land!(なに?我はそんなことをしておらぬ!竜国には一度も足を踏み入れたことなどない!)」
必死の否定。しかし、その言葉は炎にかき消される。
「LIES!! ALL LIES!!(嘘だ!すべて嘘だ!!)」
怒号とともに、さらに気温が上昇した。空気が焼ける。観客の喉が焼かれるように乾き、熱さに息を詰まらせる。Zドーム全体が、まるで火山の噴火口と化していた。
「We SAW it!! Our king’s chamber was breached! His guards fell! And the one who stood victorious… was YOU, Leela!!(我らは見たのだ!王の間が破られ、守護の兵が倒れ、最後に立っていたのは――お前、リーラだった!!)」
――竜族の指導者が奪われた日の光景。
***
竜族の指導者、ドラグキング。
その日、彼は深い悩みの淵に沈んでいた。
「……なぜ、我らはこうも揺れておるのだ」
長く竜族は中立を保ってきた。空を翔け、炎を纏い、最強の戦闘力を誇るがゆえに、他国からも恐れられ、干渉もなかった。
しかし――若き戦士たちが声を上げ始めた。
「なぜ戦わぬ!」
「我らが力をもってすれば、すべてを支配できる!」
その度にドラグキングは諭した。
「力は守るためにこそある。他者を蹂躙すれば、いずれ憎しみが返ってくる。強さは弱きを守るための盾なのだ」
だが声は日に日に大きくなる。
王として、どう鎮めるべきか――彼は悩み続け、ついには部屋に籠った。
その時だった。
「ぐわああああっ!!」
「し、指導者! お逃げください!!」
外から兵士の叫び声が響き、次の瞬間――
ドォン! 部屋の扉が吹き飛んだ。
立っていたのは、一人の影。
「……何者だ!」
「――我が名はリーラ。ヴァンパイア国の王となる者(My name is Leela, the one who shall become the King of the Vampire Kingdom)」
艶やかで響く美しい声。部屋に広がる冷気。
「竜国を頂きに来た(I have come to claim the Dragon Kingdom)」
「な、何を言うか!」
ドラグキングは激昂する。
「お主がいなくなれば、若き戦士たちが戦を起こす。そうなれば、この国を奪う口実ができよう(If you disappear, the young warriors will rise. That will give us the excuse we need to claim this land)」
「馬鹿なことを! そんなことは絶対に許さぬ!」
怒りに燃え、ドラグキングは立ち上がった。
「竜族を舐めるな! 我が必殺――ドラグバーストフォール!!」
轟音と共に、数万の炎が放たれた。空間を埋め尽くす赤き火の玉が侵入者を焼き尽くすはずだった。
だが――
「――Frozen blood.(冷えゆく血)」
美しい声の囁きと共に、冷気が一瞬で部屋を満たした。
赤々と燃えていた炎が、次々と氷結し、砕け散っていく。
「なっ……!?」
信じられぬ光景に、ドラグキングの目が見開かれる。
その刹那――
ドゴッ!!
強烈な一撃が腹を打ち抜いた。
意識が途切れる。
リーラと名乗るものは、ドラグキングを抱えて飛び立った。
慌てて追いかける竜の戦士たちだったが、あまりのスピードに追いつけない。
「我はヴァンパイア国の王となる者リーラ。指導者を取り戻したくば、我らを倒してみせよ!(I am Leela, the one who shall be the King of the Vampire Kingdom. If you wish to reclaim your leader, defeat us first!)」
その声は、追いすがる竜族の兵士たちへ向けて放たれ、そして消えて行った。
***
「……そ、そんな馬鹿な」
リーラは絶句した。
「I did not…! I never did such a thing!!(我はそんなこと、しておらぬ!)」
しかし、リーダーの怒りは止まらない。
「ENOUGH!!(もうよい!)」
ステージの炎が一斉に爆ぜる。
「This is the end! Together with our King―― DRAG! BURST! FALL!!!(これで最後だ!我らは指導者と共に――ドラグ! バースト! フォール!!)」
ツインギターが牙を剥き、怒涛の超速弾きが始まる。スウィープ、タッピング――指板を駆け抜ける音はまるで火竜の咆哮そのもの。
観客の鼓膜を灼き、心臓を直に殴りつける。
――万事休す……。
Zドーム全体が、絶望の渦に飲まれようとしていた――。
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