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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
43/69

第43話「最強ヴァンパイア、DBFの正体を察知す!」

 巨大スタジアムは、すでに灼熱の渦と化していた。観客の絶叫、燃え上がる炎、空気を切り裂くようなスポットライト――準決勝の幕開けを飾るにふさわしい舞台だ。

 ステージ中央に立つドラグバーストフォールと、対峙するブラムー。双方の視線が交錯する瞬間、会場の緊張は頂点へと駆け上がっていた。


 ――リーラの背後、ステージ袖。

 そこにひとつの影が近づいてきた。


「……リーラ」


 低く、落ち着いた声。振り返った瞬間、リーラは目を見開いた。


「セリウス……」


 ――準々決勝で激突した宿敵。かつてヴァンパイア族最強と謳われた戦士にして、己の幼馴染でもある男。

 敗北を経て、この場に現れる理由はひとつではないだろう。


「なぜここに?」


 問いかけるリーラに、セリウスは真剣な眼差しを向けた。


「気付いたか、リーラ」


「……なにを?」


「やつらは――竜族の戦士だ」


「なっ……!」


 リーラの胸に稲妻が走る。


 竜族――。

 古来より、どの種族とも交わることなく、己が誇りと孤高を守り抜いてきた存在。

 戦も、よほどのことがなければ決して起こさない。誇り高き硬派の一族。

 その名は伝承にも語られ、いまなお人々に畏怖と尊敬を抱かせる存在だ。


「竜族……。まさか、あやつらが……?」


 リーラが呟くと、セリウスは頷いた。


「我とて相対したことはない。だが、間違いない。あの仮面の奥に宿る気配……あれは竜族のものだ」


「なぜ、やつらがこのバトルに?」


「分からん。だが――竜族の強さは、種族別で言えば最強と聞く」


 セリウスの声音には、普段見せぬほどの緊張が滲んでいた。

 力と誇り、その両方を持つ竜族。

 音楽の舞台に立つ姿は想像できぬ。だが、彼らの持つ「力」は、バトルの空気すら変質させてしまうだろう。


「音楽の力は未知数……だが、十分に気をつけろ。あれは人の枠を超えた戦いとなる」


「……分かった」


 リーラの瞳が鋭さを増す。

 竜族。そこまでの存在が、この戦いに身を投じる理由とは――。


 獣族、鬼族、ヴァンパイア族、人間、そして竜族。

 バトルに現れる種族の多様さに、リーラは黒い影を感じ取っていた。


「竜族まで……もはや、魔族が現れることになれば――コンプリートじゃ」


 心の奥底に冷たい予感が走る。

 この大会には、ただの音楽の祭典ではない“裏の意図”が潜んでいる。


 リーラが深く考えを巡らそうとした、その時だった。


 ――ドォォォン!!


 轟音が空気を震わせ、会場全体に雷鳴のような低音が響き渡った。

 観客が一斉に叫び声を上げる。


「うおおおおおお!!!」

「始まるぞおおお!!!」


 ドラグバーストフォールのステージ――何かが始まる前兆のような、荘厳なオーケストラ調の楽曲が流れ出したのだ。


 低音のストリングスが不気味にうねり、ホルンの咆哮が空気を震わせる。ティンパニの重撃が会場の床を伝い、まるで地中深くで巨大な竜が目覚めるかのような響き。

 観客は思わず息を呑み、次に来る衝撃を本能的に予感する。


 ――考える暇など与えぬ。

 すでに勝負は始まっている。


 リーラは拳を握りしめ、胸に迫る重圧を受け止める。

 目の前にいるのは、竜族。伝説に近い存在。

 そして、その音が鳴り響いた瞬間から、もう逃げ道はない。


「……待ったなし、か」


 小さく呟いた声は、轟音にかき消される。


 舞台は整った。

 竜族 vs ブラムー――

 準決勝、その幕が、ついに切って落とされる。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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よろしくお願いします。

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