第43話「最強ヴァンパイア、DBFの正体を察知す!」
巨大スタジアムは、すでに灼熱の渦と化していた。観客の絶叫、燃え上がる炎、空気を切り裂くようなスポットライト――準決勝の幕開けを飾るにふさわしい舞台だ。
ステージ中央に立つドラグバーストフォールと、対峙するブラムー。双方の視線が交錯する瞬間、会場の緊張は頂点へと駆け上がっていた。
――リーラの背後、ステージ袖。
そこにひとつの影が近づいてきた。
「……リーラ」
低く、落ち着いた声。振り返った瞬間、リーラは目を見開いた。
「セリウス……」
――準々決勝で激突した宿敵。かつてヴァンパイア族最強と謳われた戦士にして、己の幼馴染でもある男。
敗北を経て、この場に現れる理由はひとつではないだろう。
「なぜここに?」
問いかけるリーラに、セリウスは真剣な眼差しを向けた。
「気付いたか、リーラ」
「……なにを?」
「やつらは――竜族の戦士だ」
「なっ……!」
リーラの胸に稲妻が走る。
竜族――。
古来より、どの種族とも交わることなく、己が誇りと孤高を守り抜いてきた存在。
戦も、よほどのことがなければ決して起こさない。誇り高き硬派の一族。
その名は伝承にも語られ、いまなお人々に畏怖と尊敬を抱かせる存在だ。
「竜族……。まさか、あやつらが……?」
リーラが呟くと、セリウスは頷いた。
「我とて相対したことはない。だが、間違いない。あの仮面の奥に宿る気配……あれは竜族のものだ」
「なぜ、やつらがこのバトルに?」
「分からん。だが――竜族の強さは、種族別で言えば最強と聞く」
セリウスの声音には、普段見せぬほどの緊張が滲んでいた。
力と誇り、その両方を持つ竜族。
音楽の舞台に立つ姿は想像できぬ。だが、彼らの持つ「力」は、バトルの空気すら変質させてしまうだろう。
「音楽の力は未知数……だが、十分に気をつけろ。あれは人の枠を超えた戦いとなる」
「……分かった」
リーラの瞳が鋭さを増す。
竜族。そこまでの存在が、この戦いに身を投じる理由とは――。
獣族、鬼族、ヴァンパイア族、人間、そして竜族。
バトルに現れる種族の多様さに、リーラは黒い影を感じ取っていた。
「竜族まで……もはや、魔族が現れることになれば――コンプリートじゃ」
心の奥底に冷たい予感が走る。
この大会には、ただの音楽の祭典ではない“裏の意図”が潜んでいる。
リーラが深く考えを巡らそうとした、その時だった。
――ドォォォン!!
轟音が空気を震わせ、会場全体に雷鳴のような低音が響き渡った。
観客が一斉に叫び声を上げる。
「うおおおおおお!!!」
「始まるぞおおお!!!」
ドラグバーストフォールのステージ――何かが始まる前兆のような、荘厳なオーケストラ調の楽曲が流れ出したのだ。
低音のストリングスが不気味にうねり、ホルンの咆哮が空気を震わせる。ティンパニの重撃が会場の床を伝い、まるで地中深くで巨大な竜が目覚めるかのような響き。
観客は思わず息を呑み、次に来る衝撃を本能的に予感する。
――考える暇など与えぬ。
すでに勝負は始まっている。
リーラは拳を握りしめ、胸に迫る重圧を受け止める。
目の前にいるのは、竜族。伝説に近い存在。
そして、その音が鳴り響いた瞬間から、もう逃げ道はない。
「……待ったなし、か」
小さく呟いた声は、轟音にかき消される。
舞台は整った。
竜族 vs ブラムー――
準決勝、その幕が、ついに切って落とされる。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!
よろしくお願いします。




