第42話「最強ヴァンパイア、ついに準決勝に進出す!」
「さぁ! ついに来ました準決勝のステージへようこそ!!」
会場を震わせるほどの大声が、マイクを通して響き渡った。司会者の熱気は観客席のボルテージに火をつける。スタジアムは、まるで巨大な炎の渦に包まれたかのようだ。
「本日の対戦は――ドラグバーストフォール vs ブラムー!!!
ドラグバーストフォールはこれまで圧倒的な楽曲と演奏力で、他をまったく寄せ付けず勝ち上がってきました! 一方、ブラムー! 幾度となく苦戦を強いられながらも、大逆転を繰り返してきた、勢いと底力を持つバンドです!!」
拍手と歓声。観客たちの眼差しは、これから始まる激突に期待を込めて揺れている。
「ですが……! 本日は大きな懸念がひとつ! ブラムー、メインギターのユウトが抜けたとの噂が流れております! 彼らは三人でこのステージに挑むのか!? 果たして勝機はあるのか!?」
司会の言葉が観客席をざわめかせた。
「まずは――ブラムーの入場です!!」
観客の大歓声が爆発した。スタジアム全体が揺れるほどの熱狂。
「ブラムーッ!!!」
「リーラ様ぁーーーッ!!!」
「ユウトくんー! マナブ先輩ー! アカネ総長ー!!」
無数の声援が飛び交い、巨大スクリーンには三人の姿が映し出される。
レーザーライトが走り、照明が観客席を照らし出す。リーラ、マナブ、アカネがステージに姿を現すと、一層の大歓声が巻き起こった。
「えっ……!」
「ユウトがいない……?」
「本当に三人だけなのか!?」
司会が畳みかけるように叫ぶ。
「ユウトさんが……いません!! 噂は本当なのでしょうか!?準決勝のこの大舞台に、果たして現れるのでしょうか!?」
リーラは唇を強く噛んでいた。3日前、彼の部屋を訪ねた。扉の前で必死に言葉を投げかけた。だが、応答はなかった。
――思いは伝えた。だが、彼が受け取ったのかどうかはわからない。
くやしさが胸を焼く。
マナブは拳を固く握り、心を必死に落ち着かせていた。冷静に見えても、内心は不安でいっぱいだ。ユウト不在の練習を繰り返してきたとはいえ、本番で乗り越えられるのか。科学的に分析しても、勝率はゼロに近い。だが、それでも戦わねばならない。
アカネは舌打ちをし、ドラムスティックを叩くように肩を鳴らした。悔しい。腹立たしい。ユウトのことを責めたい気持ちは山ほどある。だが、今はそんな感情を飲み込むしかなかった。
「続いて――対するドラグバーストフォールの入場です!!!」
会場が爆発したかのような大絶叫に包まれる。
「DBF! DBF! DBF! DBF!!!」
轟音とともに炎が天を突き上げ、ステージの両脇から火柱が吹き上がった。黒煙が渦巻き、観客席を赤々と染める。
鋼鉄の仮面を被り、五人が姿を現した。仮面の隙間からは煙がゆらゆらと立ち上り、目の部分は赤く光を放っている。
全員が2メートル近い巨躯。圧倒的な体格差があり、ただ立っているだけで観客を圧倒する。
漆黒の革ジャンとブーツに身を包み、身体のラインまでも黒い鉄壁のように見える。まるで人ではなく、鋼鉄の巨人。
「うおおおお!!!」
「これがDBFだ!!」
「最強のメタルバンドだああ!!」
メタルファンたちが狂ったように拳を突き上げる。
彼らは一切の言葉を発しない。だが、その沈黙こそが恐ろしい。仮面の奥の瞳が赤く燃え、煙が口元から漏れる様子は、巨大なドラゴンが息を吐いているかのようだった。
「本決戦の勝敗は、至ってシンプル!!!」
司会の声が再び観客席に火をつける。
「ステージ! 演奏! 楽曲!
この三点から、観客の皆さんと審査員の採点によって勝敗を決定します!!」
会場全体が大きくうねった。観客たちの歓声と拍手が、嵐のようにステージへと押し寄せる
ブラムーの三人と、ドラグバーストフォールの五人が中央で向かい合った。
……沈黙。
だが、その沈黙こそが緊張を極限まで高める。
竜を前にした人間のようだ――その差をまざまざと感じさせる、圧倒的な威圧感がそこにあった。
その時、ドラグバーストフォールのボーカルが仮面の奥から低く響く声で言った。
「……リーラ、許さぬ」
「なにっ……?」
リーラの表情が一瞬にして強張る。
――なぜ、我の名を知っている? なぜ、我を恨む?
胸の奥に不審と不安が渦巻いた。
「それでは――準決勝バトル、スタートですッッッ!!!」
司会の絶叫と同時に、再び炎が吹き上がり、轟音が鳴り響いた。
会場は、戦場と化した。
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