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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
40/69

第40話「最強ヴァンパイア、ユウトの重みを咀嚼す!」

ついに40話です!

いつも読んでいただき、ありがとうございます!

完結に向けて走り切りますので、引き続きよろしくお願いします!

 勝利を手にしたはずなのに、ブラムーの面々の胸中は決して晴れやかではなかった。

 あまりに多くの真実が明かされたからだ。大臣の裏切り、セリウスがその息子だったこと、そしてリーラとの幼馴染の因縁……。戦い以上に心を揺さぶられる出来事ばかりだった。


 その夜、彼らはいつものファミレスに集まっていた。

 ドリンクバーの氷がカランと鳴る。だが、テーブルに漂う空気はいつもより重い。


「……しかし、すごいバトルだった」

 最初に口を開いたのはマナブだった。眼鏡を指先で持ち上げながら、冷静に振り返る。

「セリウス氏のエンディング・デス・マジックス……あれは楽曲の構造、そして音色そのものが洗脳的だった。正直、勝てる気がしなかった……」


「いや、マナブのアドリブすげーよ。あれがなきゃ姐さんの歌も成立しなかった」

 アカネが乱暴にコーラをすすりながら言う。

「でもよ、マジでギリギリだったな。あんなん、二度はごめんだぜ」


 リーラは腕を組んで、どこか誇らしげに頷いた。

「うむ。皆の力があって勝てたのじゃ。セリウスは一人だった、こちらは三人。セリウスがバンドだったら負けてたかもしれん。勝ててよかった」


 安堵の空気が漂う。

 次の瞬間――次の相手の名前が話題に上がり、テーブルに重苦しい沈黙が落ちた。


「準決勝の相手は……《ドラグ・バースト・フォール》だ」

 マナブが淡々と告げる。


「うっ……マジかよ」

 アカネの顔が引きつった。

「超絶テクニックのメタルバンドじゃねぇか。こっちみたいなハイブリッドとは違って、クラシカルなメロディにヘビーなサウンド。アイツらの音は真っ直ぐで凶器だぞ」


 リーラも険しい表情で頷く。

「確かに。あやつらは力で押し切る正統派。更に、リードギターが素晴らしかったぞ……」


 そして――誰もが視線を落とす。


「……ユウトが、いない」


 静寂が落ちた。

 連絡を入れても返答はなく、練習にも姿を見せない。

 ブラムーのリードギター。存在感のある音と、繊細なメロディを兼ね備えた天才。彼のギターなしに、準決勝を勝ち抜くのは――不可能に近い。


 ここに来て、リードギターの不在はあまりにも大きすぎた。


「どんな連絡したんだ?」

 アカネが尋ねる。


 マナブは苦い顔をした。

「私は端的に『次の試合に必要だから、一緒に戦ってほしい』と送った。だが、既読もつかない」


「オレは『早く帰ってこい、バカヤロー』だ。……未読のまんま」

 アカネはストローを噛みながら吐き捨てる。


 リーラは胸を張って言った。

「我はSNSに投稿したぞ。『モドレ』とな!」


 一瞬の沈黙――次いで、マナブとアカネが同時にテーブルを叩いた。

「短すぎる!」

「いや、それじゃトレンド入りして終わりだぜ!」


「ふむ、良い手応えであったが」


「良くない!」

「良くない!」


 場がわずかに和んだものの、すぐに現実が押し寄せる。


「……どのみち、ユウト氏がいないと絶対に勝てない相手だ」

 マナブの冷静な声が、刃のように刺さる。

「準決勝まで、あと三日しかない」


「……そうだぜ」

 アカネの声も震えていた。

「ドラグバーストフォールの音は本物だ。ユウトのギターなしじゃ、絶対に跳ね返せねぇ」


 リーラは真っ直ぐ二人を見つめた。

「……我がユウトの家に行き、説得する」


「姐さん、一人で?」

「うむ。一緒にバンドをスタートさせた、音で分かり合った友だ。必ず連れ戻す」


 その言葉に、マナブもアカネも口を閉ざした。

 残された道は、それしかなかった。


「……了解。私とアカネ氏は残り三日で曲を詰める。ユウト氏が戻ることを前提に」

「姐さん、頼んだぞ。……絶対連れて来てくれよ」


 リーラは力強く頷いた。

「任せておけ。我が必ず連れ戻す――」


 準決勝は三日後。

 相手は最強のメタルバンド。

 そして――ユウトはいまだ戻らない。


 夜空を見上げながら、リーラは強く心に誓った。


「……ユウト。必ず迎えに行く。共に戦わねば、未来は掴めぬのだ」


―――


 その頃、ユウトの部屋は静まり返っていた。

 机の上にはギターが置かれている。

 通知で光るスマホを、彼は見ようともしなかった。


 胸の奥に渦巻く迷い――。


 ――なぜ戦う?

 ――なぜ弾く?


 彼の答えは、まだ闇の中にあった。

 準決勝まで、残された時間はわずか三日。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!

よろしくお願いします。

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