第40話「最強ヴァンパイア、ユウトの重みを咀嚼す!」
ついに40話です!
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
完結に向けて走り切りますので、引き続きよろしくお願いします!
勝利を手にしたはずなのに、ブラムーの面々の胸中は決して晴れやかではなかった。
あまりに多くの真実が明かされたからだ。大臣の裏切り、セリウスがその息子だったこと、そしてリーラとの幼馴染の因縁……。戦い以上に心を揺さぶられる出来事ばかりだった。
その夜、彼らはいつものファミレスに集まっていた。
ドリンクバーの氷がカランと鳴る。だが、テーブルに漂う空気はいつもより重い。
「……しかし、すごいバトルだった」
最初に口を開いたのはマナブだった。眼鏡を指先で持ち上げながら、冷静に振り返る。
「セリウス氏のエンディング・デス・マジックス……あれは楽曲の構造、そして音色そのものが洗脳的だった。正直、勝てる気がしなかった……」
「いや、マナブのアドリブすげーよ。あれがなきゃ姐さんの歌も成立しなかった」
アカネが乱暴にコーラをすすりながら言う。
「でもよ、マジでギリギリだったな。あんなん、二度はごめんだぜ」
リーラは腕を組んで、どこか誇らしげに頷いた。
「うむ。皆の力があって勝てたのじゃ。セリウスは一人だった、こちらは三人。セリウスがバンドだったら負けてたかもしれん。勝ててよかった」
安堵の空気が漂う。
次の瞬間――次の相手の名前が話題に上がり、テーブルに重苦しい沈黙が落ちた。
「準決勝の相手は……《ドラグ・バースト・フォール》だ」
マナブが淡々と告げる。
「うっ……マジかよ」
アカネの顔が引きつった。
「超絶テクニックのメタルバンドじゃねぇか。こっちみたいなハイブリッドとは違って、クラシカルなメロディにヘビーなサウンド。アイツらの音は真っ直ぐで凶器だぞ」
リーラも険しい表情で頷く。
「確かに。あやつらは力で押し切る正統派。更に、リードギターが素晴らしかったぞ……」
そして――誰もが視線を落とす。
「……ユウトが、いない」
静寂が落ちた。
連絡を入れても返答はなく、練習にも姿を見せない。
ブラムーのリードギター。存在感のある音と、繊細なメロディを兼ね備えた天才。彼のギターなしに、準決勝を勝ち抜くのは――不可能に近い。
ここに来て、リードギターの不在はあまりにも大きすぎた。
「どんな連絡したんだ?」
アカネが尋ねる。
マナブは苦い顔をした。
「私は端的に『次の試合に必要だから、一緒に戦ってほしい』と送った。だが、既読もつかない」
「オレは『早く帰ってこい、バカヤロー』だ。……未読のまんま」
アカネはストローを噛みながら吐き捨てる。
リーラは胸を張って言った。
「我はSNSに投稿したぞ。『モドレ』とな!」
一瞬の沈黙――次いで、マナブとアカネが同時にテーブルを叩いた。
「短すぎる!」
「いや、それじゃトレンド入りして終わりだぜ!」
「ふむ、良い手応えであったが」
「良くない!」
「良くない!」
場がわずかに和んだものの、すぐに現実が押し寄せる。
「……どのみち、ユウト氏がいないと絶対に勝てない相手だ」
マナブの冷静な声が、刃のように刺さる。
「準決勝まで、あと三日しかない」
「……そうだぜ」
アカネの声も震えていた。
「ドラグバーストフォールの音は本物だ。ユウトのギターなしじゃ、絶対に跳ね返せねぇ」
リーラは真っ直ぐ二人を見つめた。
「……我がユウトの家に行き、説得する」
「姐さん、一人で?」
「うむ。一緒にバンドをスタートさせた、音で分かり合った友だ。必ず連れ戻す」
その言葉に、マナブもアカネも口を閉ざした。
残された道は、それしかなかった。
「……了解。私とアカネ氏は残り三日で曲を詰める。ユウト氏が戻ることを前提に」
「姐さん、頼んだぞ。……絶対連れて来てくれよ」
リーラは力強く頷いた。
「任せておけ。我が必ず連れ戻す――」
準決勝は三日後。
相手は最強のメタルバンド。
そして――ユウトはいまだ戻らない。
夜空を見上げながら、リーラは強く心に誓った。
「……ユウト。必ず迎えに行く。共に戦わねば、未来は掴めぬのだ」
―――
その頃、ユウトの部屋は静まり返っていた。
机の上にはギターが置かれている。
通知で光るスマホを、彼は見ようともしなかった。
胸の奥に渦巻く迷い――。
――なぜ戦う?
――なぜ弾く?
彼の答えは、まだ闇の中にあった。
準決勝まで、残された時間はわずか三日。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!
よろしくお願いします。




