第34話「最強ヴァンパイア、DJセリウス、完璧な戦術を繰り出す!」
ステージの光が赤く染まり、次のターンを告げるように観客がざわついた。
司会が高らかに叫ぶ。
「さあ! 二曲目はDJセリウスのターンだ!!!」
会場全体に張り詰めた緊張感が走った。
先ほどのブラムーの演奏が、確かに観客を揺さぶり、審査員の胸を打った。しかし——。
「いくぜ……。これで終わりだ」
セリウスの手がターンテーブルにかかる。
その瞬間、腹の底を揺さぶるような超低音が轟いた。
ブオォォォォン……と空気が唸り、床が震え、会場にいる誰もが思わず息を呑む。
観客の心臓を直接掴むような太いベース音。
ドン、ドン、ドン、と重く響くハーフタイムの四つ打ちが、まるで頭を縦に振らせるためだけに存在しているかのように強制する。
観客は抗えず、自然とヘドバンを始めた。
「おいおい……このビート、やばすぎだろ!」
「体が勝手に動く……!」
ざわつきが歓声に変わり、次第にフロアは狂乱へと飲み込まれていく。
そこに追い打ちをかけるように、脳を突き刺す甲高いシンセ音が差し込まれた。
ギュワン、ギュワン、と歪みきった電子の咆哮が観客の耳をつんざき、視界すら歪ませる。
まるで電撃が頭蓋に直接流し込まれているような錯覚。
観客の瞳がぎらつき、理性が削がれていく。
——これは音楽ではない。
リーラの胸の内で、鋭い直感が走る。
「……魔法か……」
すると、ステージ中央のセリウスがマイクを掲げ、高らかに叫んだ。
「ハッハッハ! これがオレの魔法だ……《エンディング・デスマジック》! EDMセリウスの真骨頂だ!!!」
フロアは爆発的な熱狂に包まれる。
観客は今や、セリウスの音の奴隷だった。
「ウォォォォォ!!!」
「セリウス!!! セリウス!!!」
その中心で、セリウスはマイクを握り、狂気じみた笑みを浮かべた。
「見ろよ! これがオレの音だ!!!」
「お前らがオレに勝てるわけねぇだろ、そんな細い音でな!!!」
「オレは魔界でも、この世界でもナンバーワンだ! オレに勝てるやつなんていねぇんだよォ!!!」
言葉の端々から、セリウスのプライドと傲慢が溢れ出す。
その自信は虚勢ではなく、圧倒的な力に裏打ちされたものだった。
バックヤードで控えていたスタッフも、思わず顔を引きつらせる。
審査員席でも、誰もが「勝敗は決まったかもしれない」と頭を抱えていた。
そして——ブラムーのメンバーも。
「……あれ、反則だろ……」
アカネが、思わず歯噛みする。
強気な彼女ですら、観客の熱狂と暴走を前に自信を揺さぶられていた。
「くっ……完全に飲まれてる……」
マナブの声が震える。
冷静な分析屋ですら、打ち破る手立てを見失いかけていた。
リーラの隣で、メンバーは不安げに視線を交わす。
「……万事休すか」
誰もが、そう呟きかけていた。
だが——ただ一人。
リーラは、鋭く前を見据えたまま動かなかった。
瞳の奥に、かすかな哀しみを浮かべながら。
「……セリウス……」
小さく名前を呼ぶ声は、歓声と低音に掻き消された。
それでも、彼女は微笑むように呟く。
「誰よりも努力家……お主は、昔と変わらぬな……」
その声は、仲間たちに届くことなく、ステージの轟音に溶けていった。
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