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最強ヴァンパイア、人間界でバンドデビューを決意す  作者: Rockston.
バンドバトル 決勝トーナメント編
33/69

第33話「最強ヴァンパイア、シンセベースvsリアルベース!」

 ステージ上。

 DJセリウスが放つ轟音のような低音が、会場全体を丸ごと揺さぶっていた。


 フィルターを回して空間を開き、ブレイクで一度引かせたかと思えば、ビルドアップから一気に落とされたキックとベースが、観客の心を直撃する。


 観客は狂ったように飛び跳ね、汗を飛ばし、絶叫していた。


「すげえ……」

 審査員席で、桐島翔が思わず息を呑んだ。

「ここまで完璧なフロアコントロール……言葉を失う」


 もう一人の審査員、ロックストンも腕を組み、目を細めた。

「ただのトラック再生じゃない。スクラッチ、EQ、ループのカットイン、エフェクト――あらゆるテクニックを一瞬で組み合わせている。ビートの切り方、繋ぎ……芸術の域に達してる」


 絶句。

 観客を完全に支配するその光景は、もはや暴力的なほどだった。


「……やばいな」

 ブラムーの陣地に戻ったマナブが低くつぶやく。

「やつのDJプレイは、あらかじめ作り込まれたトラックを鳴らしてる。しかもテンポを完全に合わせ、無限に繋げることで、観客のノリを切らさない」

「つまり……」リーラが問う。

「隙がないってことだ」


 アカネが舌打ちする。

「クソッ、どこに入る余地があるんだよ!」


 マナブは腕を組み、考え込む。

「だが……これは“バトル”。交互に順番が回る仕組みだ。完全にやつのターンを止めることはできなくても、俺たちの順番で“リアル”を叩き込める」


「リアル?」

 リーラが小首を傾げる。


 マナブの瞳が光る。

「やつの音楽は、完璧に作り込まれた分、“生感”がない。俺たちは目の前で演奏する。リアルタイムで変化し続ける音を叩きつけられる。それが武器だ」


 アカネがニヤッと笑った。

「おお、いいじゃん。オレらの生き様、見せつけてやろうぜ!」


「ただし、テンポはセリウスのビートを切らないように同じ128で行く。……あの曲でいきたい」

 マナブが頷き、合図を送るように手を握る。

「合図を出すから、ついてきてくれ」


「うむ……良い案じゃ」リーラが頷き、口元に笑みを浮かべる。


「やるじゃん、マナブ!」


 その時、セリウスのターンが一気に終盤を迎えた。

 ビルドアップが重なり、SAWシンセが雷鳴のように突き刺さり――最後のドロップが炸裂!


「どうだぁあああ! かかってこいオラァ!!!」


 セリウスが両手を広げ、観客の狂気をさらに煽り立てる。

 観客は絶叫し、床が揺れるほどにジャンプする。


 その瞬間。


 ――ブンッ!パチンッ!


 マナブのスラップベースが、鋭い切り込みのように響き渡った。

 ファンキーでありながら重みを持つサウンドが、会場の熱狂に楔を打ち込む。


「おっ……!」

 審査員席で桐島翔が思わず身を乗り出した。

「これは……リアルタイムのアドリブだ! イントロを本来より長めにとって、観客を引き込むつもりだな!」


 ロックストンも大きく頷いた。

「さすがマナブ。生演奏ならではの戦略。DJにはできぬ即興性よ!」


 観客のざわめきが、少しずつ方向を変えていく。

 セリウスの完璧な支配の隙間に、新しいグルーヴが生まれ始めていた。


 セリウスは腕を組み、不敵に笑う。

「フン……こざかしい。やってみろよ」


 マナブはスラップを続けながら、リーラと共にアカネのドラムの前に歩み寄る。

 目配せを交わし、合図を送った。


 次の瞬間――


 ジャーン!

 リーラのギターのカッティングが刻まれ、アカネのドラムが炸裂する!

 ファンキーで軽快、それでいて力強いリズムが一斉に重なった。


 そして――リーラの美しい歌声が会場に響き渡る。

 透き通るハイトーン。伸びやかでありながら、リズムに寄り添う柔軟さ。


 審査員たちは思わず目を見開いた。


「ファンキーなリズムに、あの伸びやかな声……! 乗れるはずなのに、何故か胸を揺さぶられる。涙が出そうになる……」

「そうだ。リズムと旋律が“感情”を呼び起こす……説明できぬが、心が動かされる」


 観客の中にも、跳ねながら思わず涙をこぼす者が現れる。

 それはセリウスの支配にはなかった現象だった。


 だが。


 セリウスが口角を吊り上げた。

「それでオレに勝てると思うのかよ? 圧倒的に音域が狭い。ノリも軽い。観客はすでにオレのビートに浸透してるんだ。先に演奏できればよかったな」


 確かに、観客の大半はまだセリウスの低音を忘れられずにいた。

 生演奏は素晴らしい――しかし、それだけでは“超低音と完璧なビート”を凌駕するほどのグルーヴを生み出せていない。


 ステージに漂う緊張。


「くっ……ユウト氏のリフがあれば、太いロックサウンドで攻められた」

 マナブが歯を食いしばった。


 力を振り絞り、スラップベースを繰り出すが、一部の観客しか引き込めていない。ユウトがおらず楽曲の完成度も完璧ではない。


 その時、


 リーラがマナブの足元にある、エフェクターのスイッチを踏んだ。禁断のディストーションスイッチだ!

 クリーンでファンキーなスラップベースが、一瞬にして轟音スラップへと変化した。まさにロックサウンドだ。


「ウォォォォォ!」

 ようやく観客に届いた!


「リーラ氏!ナイスアイデアだ!」

 マナブが叫ぶ!


「勝つぞ!」

 リーラの一声がマナブ、アカネ、そしてブラムーのファンを勇気づける。


「はっ。こざかしい真似を。次でトドメを刺してやる」セリウスは笑顔を崩さず、余裕の表情で出番を待つ。


 ブラムーの戦い方に答えはまだ出ない。

 だが次の一手で、勝敗の天秤が大きく傾くことだけは、全員が理解していた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、率直な評価や、感想をいただければ励みになります!より良い作品が創れるよう、頑張ります!

よろしくお願いします。

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